運命の出会い






僕は幼いときに能力に目覚めてしまった。

僕の家の家系に能力者は居なかったから、喜ばれた反面、どう接していいのか分からない家族たちに距離を置かれるようになった。

幼いときは特にそれを寂しいと感じ、そして僕のこの力を呪ったことすらあった。

友人も出来ないし、いい事なんてひとつも無い。


ある日、家族で王都に出て来た。

家族揃ってどこかへ出かけるときも僕は大抵除け者になっていた。

しかしそのときは珍しく僕も一緒に連れて行ってもらえた。

そんなときに不幸なことに、事件に巻き込まれてしまった。

この国の治安はいい方だけど、どうしたって反発は起きている。

そして、僕が始めて王都に来たその日、小さい規模だけどテロが起きた。

僕が居る広場に武装した集団がやってきて、子供たちを人質にとったのだ。

相手にも能力者が居たらしく、自信満々で。

僕はその時僕が何とかしないと、と思って今までまともに使ったことの無い力を使ってしまった。

そして、僕の風の力は、僕の能力以上の威力だった。

そう、制御できなかった。

僕が起こした風は竜巻になって、そして、広場を破壊しつくすところだった。

その寸前に、僕の起こした風がすぅ、と止まった。

空色の髪の人と焔色の髪の人が並んで立っている。

武装した集団がその2人に向かって発砲したけど、風でその銃弾の勢いは殺されてポタポタと地面に落ちていく。

そして、焔色の髪をした人が手を掲げるとその武装集団の周囲は炎で囲まれた。

慌てふためく彼らを放っておいて2人が僕に向き直った。

僕もあんなことをされるんだと思った。

空色の人が手を伸ばす。

叩かれる、そう思って体が強張った。

けど、違った。

優しく頭に手を置いて、優しく諭してくれた。

力を恐れるな、と。

僕はただ自分のチカラを忌み嫌い、そして、残酷なものだと思って恐れていた。


その後、母があの人が軍の最高責任者の末の息子さんだと聞いて僕を無理矢理軍の訓練校に入れた。

僕は体が小さいからそれに向かないと思っていたけど、家族と一緒に居たら息が詰まりそうだったし、何よりあの空色の人、飛翔様と一緒にいたかった。

だけど、理想と現実はどうしても違う。

僕は軍での筆記試験は得意だけど、実践が苦手だった。さっきも言ったとおり体が小さいから。

1人で射撃練習に残ったこともあった。

その時、飛翔様が何故が射撃練習場にやってきた。

僕の射撃を少し見ていた。緊張していたし、いいトコロを見てもらいたくて一生懸命やったけど、引き金を引いて銃弾が飛ん出いく反動で体も動いてしまう。だから、的に当たらない。

飛翔様が背後に立った。

「私が支えているから撃ってみてくれるか?」

そう言われた。

狙いを定めて的に向かって銃を放つ。

飛翔様が支えてくれていたお陰で体が動くことなくまっすぐ的の真ん中に命中した。

「ふぅん」と飛翔様が呟く。何を考えていらっしゃるのか全く分からない表情で。

「飛翔!」

白の大尉、空人さんが飛翔様を探して呼びに来た。

ああ、と軽く返事をして飛翔様は何も言わずにこの場を去っていった。

そして、それ以降飛翔様に会うことなかった。

実際最前線で指揮を執っている方だから軍の訓練校に来ていたこと自体が珍しいことなのだ。


配属が発表されたとき、僕は自分の耳を疑った。

飛翔様の、青の中佐の隊。

変な人が多いと聞くけど、その変な人は飛翔様がスカウトしていると聞く。

着任の挨拶をしに、大佐の執務室へと向かった。

緊張して頭の中が真っ白になりそうだった。

ノックをすると、凄く落ち着いた声で「どうぞ」と声が返ってくる。

「失礼します」

「よく来てくれたね、ありがとう」

突然そう言われた。お礼を言わなきゃいけないのは僕の方なのに、飛翔様がそう仰ったのだ。

慌てた僕は、

「僕の方こそ、あの...あ、失礼しました。私の方こそ」

自分のことを『僕』と言ってしまった。慌てて言い直すと飛翔様が手を挙げて苦笑しながらそれを制した。

「自分のことくらい好きに言えばいい。まあ、他の上司の前では『私』の方が好ましいけど、私の前ではどちらでもいいよ。実際、ウチの隊は意外と言葉遣いが雑な者が多いからね」

そう言って静かに微笑まれた。

「あの、では。...僕の方こそ、飛翔様の部隊に編入されるなんて光栄です」

そう伝える。

飛翔様は「飛翔様?」と奇妙な顔をされたけど、そんなに気にせずにもう一度「ありがとう」と仰った。

「さて。颯希、と呼んでもいいかな?」

「はい!」

光栄極まりない。

「颯希に渡しておきたいものがある」

そう言って、机の引き出しを開けられた。そこから取り出されたのは、拳銃だ。

けど、少し小さく見える。

「威力は他と変わらないように設計されているし、銃弾も既存のもので大丈夫だから。これを使うといい。慣れるまで少し難しく感じるかもしれないけど...」

そう言われて僕の手におさめる。

やはり、今まで僕の使っていたそれよりも一回りくらい小さくて軽い。

ふと、思い出す。飛翔様は僕の射撃をご覧になってくださったことがある。

「颯希には今まで使っていたのは大きいだろ?そっちの方が颯希の体にあってると思う。狙う腕はあるんだ。後は道具を揃えればちゃんとしたスナイパーになれる」

そんなことを仰る。

僕は本当に光栄すぎて泣きそうになる。

飛翔様はあの時の、ただ一度の射撃のことを気に掛けてくださっていたということだ。


それから、毎日射撃の練習をした。

その少し小さな銃になれるために。

僕に付き合って東風さん、空人さんも一緒に練習をしてくれた。

いつの間にか僕の射撃の腕は上がっていて、皆が認める、飛翔様に次ぐスナイパーだと称してくれるようになった。


気がついたら、この王都の無機質な建物が僕の居場所となった。

あの日、あの時飛翔様にお会い出来ていなかったら、僕はあの広場で自分の力に飲み込まれてこの世から消えていかたもしれない...

飛翔様はもうお忘れになっているかもしれないけど、僕にとってあの出来事こそが生まれてきた意味を知ることが出来た最初の瞬間だったのだ。

僕が誰かのために役に立つと教えてくださった飛翔様。僕はこの人の力になりたい。


過去、忌み嫌った残酷なチカラであの人を助けられるというなら、それは至宝のチカラだと思う。









桜風
11.10.9


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