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「開いた!」
回線を乗っ取ることに成功した嵐が声を出す。それと同時に庁舎の重々しい門が開いていく。
飛翔の部下たちの指示に従い人々はその中に入っていく。
「...いた。」
東風は呟き、人の波を掻き分け、一人の少年を担いでそれから外れた。
「何すんだよ、俺も避難させてくれよ。」
「...お前、この国の人間じゃないだろ。そして、この国に敵意を持ってる。」
東風の言葉にその子供は目を見開き、にやりと笑う。
「そうだよ。あと一息だったのにな。この国を落とせばお褒めの言葉を頂けるのに。」
そういうと、天に手を突き上げた。
「風の勇者をやっつけても結構な功績だよね。」
そう言って飛翔に向かって手を下ろす。
「飛翔、逃げろ!!」
言うよりも早く、雷鎚が飛翔に迫った。
誰もが回避不可能と思った。しかし、飛翔の周りには水の壁が作られていた。
「...近くに噴水があって助かった。」
氷が呟く。それに驚いている隙に雷が飛翔を襲った子供に迫ったが、それにも水の壁が邪魔をする。
「ここは引いたほうがいいな。」
「なんで?!もう少しじゃないか。」
「お前の正体がばれた時点でこれは失敗だったんだよ。僕たちが連れて来た魔物も殆どやられた。これ以上は無駄だ。先に帰るよ。君が続けたいって言うなら止めないけど。」
先ほどまで魔物に指示を出していた者はそう言って、消えた。
チッと舌打ちして、その少年も消えた。
「大丈夫ですか、飛翔様。」
颯希が一番に駆け寄った。
「ああ、大丈夫だ。一時間経って赤、黒共に動かない場合は非番のものを増やすから、自主的に市中の見回りについてくれ。必ず、複数人で行動するように。とりあえずけが人の手当てを。」
「お前が一番のけが人だろうが。」
東風が飛翔を小突く。
「東風も、ありがとう。」
「いや、ここで見逃したら、俺の価値無いし。」
「そんなことないけどな。さて、庁舎に戻ろう。仕事がたくさん出来た。皆は家に戻ってくれ。今日は...帰れないかもしれないから、夕飯も要らないって風真に伝えて下さい。」
母にそういった。
風花は静かに頷いて皆を促し、帰って行った。
「ねえ、さっき飛翔が言った言葉、何か重いね。」
帰りながら、沙羅が口を開く。
「そうだね。えっと何だっけ、『民なくば...』」
「『民無くば国は無し。国無くば、王は無し。』よ。」
「そういえば、小母様あの言葉を聞いて走り出されましたよね。」
「...ええ。あの言葉は、炎勇さんが軍に入った子供3人にきつく言い聞かせていた言葉なの。」
「ウチの家訓。ガキの頃一日一回は口にさせられていた言葉だよ。ついでにあの続きがあるんだぜ。『ゆえに王は民のことを第一に考えるべし。』あいつが言わなかったのは、まあ、あん時は関係ない言葉だったからだと思うけど。」
炎狼が口を開く。
「ちゃんとあの人の志が残っているのよ。私もいつまでもくよくよ出来ないでしょ?お母さんなんだから、子供たちを守らないと。」
その日の夜遅く飛翔は帰ってきた。
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