風の章 第2話
| 東風の後方のドアが開き、偉そうな態度をとった男が入ってくる。 『これは、これは。青の大佐、帰ってこられたんですか。私はてっきりこの国を裏切り、炎に属したかと思っておりました。 大総統閣下もそうではないのですかねぇ?炎の血は野蛮ですから、繊細な風の空気がお合いにならないのではありませんか? 炎の国は次の後継者も大したことがないですからね。 ...おや、いらしたのですか、炎狼様。これは失礼しました。』 モニタの向こうでネチネチと言う。 「...赤の少将。何の御用でこちらにいらしたのでしょう。」 飛翔は、一応敬礼をしながら口を開く。赤の少将と呼ばれた男はそれを無視して、炎狼に 『炎狼様、これからそのままお帰りになってお父上とご相談なさったらどうです、貴国の明け渡し方を。』 などと言う。 「白の少尉。赤の少将はご自分の執務室への帰り道が分からないと仰っている。執務室までお送りして差し上げろ。」 飛翔は控えていた部下に命じる。 『はっ!』 敬礼をしたその人は赤の少将の腕を掴み、出口に向かう。 赤の少将は引きずられながらも 『父親の後ろ盾のない今の貴様に味方をする愚か者はそういないぞ!』 と叫んでいた。 「...炎狼、すまない。」 「いや、お前は悪くねぇよ。しかし、まだウチの国狙ってる奴居るんだな。ご苦労なこった。」 「炎狼ってあんなことよく言われているの?」 「まあな。おれだけで済むときもあれば、オヤジとか、そういうのも言われるな。もちろん友好的な奴、さっきの東風とか、少将連れて行った空人(たかと)とか他にも居るけど、どっちかっつうと、結構嫌われているかな。」 「飛翔も...」 「私は混血だし、兄たちに甘やかされているから余計に煙たいんだろ。」 『おーい、いいかぁ?』 モニタの向こうに東風が出てきた。 「すまない。どこに入ればいい。...壱番は空いたままか?」 『あぁ、まだだな。壱番に入れよ。その船でかいし、丁度いいだろ。』 一度モニタを切り、飛翔は自動操縦を切り替え、国を目指す。 その後ろで炎狼は「壱番?」呟いた。 港に入り、船から下りる。 「飛翔、『飛炎(ひえん)』は?」 周りを見渡した炎狼が飛翔に聞く。いつもある船がない。 「...今出ている。」 そう答えた飛翔は、皆にここで待つように言ってどこかへ行った。 「炎狼、『飛炎』って?」 沙羅が聞くと、 「この国で一番大きな船だ。装備とか、性能も一番揃ってる。最終兵器かと思っていたんだけどな。いつも『壱番』にある船だ。」 と言う答えが返ってきた。 皆は、壱番に入っている自分たちの船を見上げた。 少しして飛翔が戻ってきた。 「技師長に話はつけてきた。船には触らないでいてくれる。じゃあ、移動しよう。」 廊下を歩いていると前方から壮年の人が歩いて来た。 それを見た大地たちは、また厭味が出てくると思って構える。 「大丈夫だ。あの人はウチに友好的な人だ。」 炎狼が振り向かずに皆に聞こえる程度に声を出す。 「お久し振りです、白の大将。」 炎狼が挨拶をする。 「これは、炎狼様。お久し振りです。ごゆっくりなさってください。と、言っても軍の中は居心地悪いでしょうが。先ほどは、赤の少将が失礼なことを申し上げたようで、幾重にもお詫びを申しあげます。...青の大佐。白の将軍、黒の中将、そして大総統閣下はまだだ。それはともかく、青の将軍がご心配されていたぞ。皆様を執務室までご案内したら、報告に行きなさい。」 「はい。」 白の大将は、飛翔の肩に手を置いて、そしてまた歩き出した。飛翔がその背中を見送るのに振り返って焦る。 「沙羅?!」 飛翔の声で皆も振り返る。 沙羅の姿がない。 後ろに付いてきているのだとばかり思っていた五人はさっき通った道を走って戻った。 |
桜風
06.11.26
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