風の章 第3話
| 「離してください。」 「こんなところを独りでうろついていたお前が悪いんだろ。」 「わたしは炎狼...様の連れですよ!?」 「へえ、あの無能の?まあ、そんなこと関係ないさ。大人しくしろって。」 沙羅は何人かの軍人に囲まれて逃げられないようになっていた。召喚術を使おうにも呪文を唱えなければならないし、エンブレムの力の解放をしようものなら、殺しかねない。 自分に迫ってくる手に怯え、目を瞑る。 「何をしている、黒の大佐!!」 飛翔の鋭い声が聞こえてきた。 飛翔が沙羅と、軍人の間に立つ。 炎狼も追いつき沙羅を自分の元に引き寄せ、背に隠す。 「何って、女が独りでここに居たんだ。何したって文句は言えないだろ?」 「この方は、炎狼様の付き人だ。こんなことが許されると思っているのか!?」 「ふうん?」 飛翔に問い詰められている黒の大佐は、嫌な笑を浮かべ、 「なら、貴方が俺たちの相手をして下さるのですか、青の大佐?」 と言って飛翔を壁に押し付け、迫った。 飛翔は顔色ひとつ変えず、そいつを思いっきり蹴り上げた。 それを見ていた男性陣は、青ざめる。容赦なく蹴られたそこの痛さは、男ならよく分かる。 「あまり調子に乗るな、黒の大佐。今後は気をつけろ。」 飛翔は炎狼に視線を遣り、「行きましょう」と言って歩いて行った。 「大丈夫か、沙羅。」 「...何とか。」 「だから、はぐれるなっつったんだよ。事前に言っといてやったのに、何してんだよ。」 「まあ、そう言ってやるなよ、無事だったんだからさ。」 沙羅は飛翔にしがみついて離れなくなった。 そのまま歩いて行き、ひとつの部屋の前で立ち止まる。 飛翔がパスワードを入れ、指紋、声紋、網膜検査をクリアし、ドアが開く。 「すごぉい。なんか物語りみたいだね。」 沙羅が感嘆の声を漏らす。 「そこで待っていてくれ。」 そう言って飛翔は、もうひとつ奥の部屋に入っていった。 着替えて出てきた飛翔は机に着き、筆を執る。 「...なあ、何で手書きなんてアナログな事やってんだ?」 雷が炎狼に聞くと、 「たぶん、帝に謁見の申請をするんだろ?」 と言う答えが返ってきた。 「どういう事だ?」 「明日になれば、分かるって。」 それもそうかと思い、皆はこのことについて何も言わなくなった。 「炎狼、ドアを開けてくれ。」 手紙を包み、文箱に入れた飛翔がドアの傍にいた炎狼に声を掛ける。 言われたとおりドアを開けると、そこにはモニタ越しで見た東風が居た。 「東風、暇そうだな、暇だろ。これを持って行ってくれ。火急の用件だから御返事もすぐにくださるはずだ。そこで待機して返事を持って戻ってきてくれ。」 「へいへい、了解。飛翔は何すんだよ。」 「青の将軍のところに報告に行かないと。頼んだぞ。あ、そういえば私が炎狼を迎えに行ったとか言ってたよな。」 「ああ、頭領から青の将軍に連絡入ったんて。お前のとこの家族が心配するといけないから、連絡してやれって。 俺もその連絡が来たって話聞いてたからコッチから通信開いたんだよ。あからさまに怪しくて、認識番号が分からない大型船は飛翔が乗っているって話だったから。 そうじゃなかったら、何が悲しくてむっさいヤローが乗ってるかもしれねぇ船にコッチからコンタクトとらないといけないんだよ。」 「お前相変わらずだな。」 東風の言い様に、炎狼が苦笑する。 「当たり前だろ?女性は人類の宝だ。女性の居ない世の中に暮らすくらいなら、俺は消えたほうがマシだ。」 「その割には、浮気癖があるよな。」 飛翔が溜息混じりに言う。 「だって、皆魅力的なんだから仕方ないだろ?誰か一人に絞るなんて、俺には出来ねぇ。」 「そういうのを、『女の敵』って言うんだ。まあ、身を滅ぼす前に何とかしろよ。じゃあ、頼んだぞ。皆も、ここにいてくれよ。」 そう言って飛翔が出て行った。 東風も肩を竦めて「またな」と言って部屋を出て行く。 「...なんか、凄い人だったね。」 沙羅が呆然として口を開く。 「まあな。いい奴ではあるんだけどな、あれがあるからトラブルメーカーなんだよ。あいつに女取られたって奴が飛翔に抗議するんだ。」 「それもどうかと思うな。」 呆れた顔をして大地が言った。 |
桜風
06.12.10
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