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少ししてノックの音の後に人が入ってきた。
今度は、白の少尉と呼ばれた空人だ。
「炎狼様。大佐は?」
「将軍に報告だとさ。なあ、今回は正式訪問じゃないから東風みたいに呼び捨てでいいんだぜ?」
「いえ、正式訪問でいらしたときに呼び捨ててしまうかもしれませんので。」
「...だから、東風は正式訪問の公式行事の時は外されてるのか。」
「はい。あれは、公式には向かないものですから。先ほどは、赤の少将が失礼致しました。最近は特に気が大きくなっておられて。」
そう言いながら空人が深く頭を下げる。
「そうだ、聞きたかったんだけど、伯父上はいねぇの?兄さんや兄貴も。」
「...はい。飛炎で出ております。」
「どこに?うちに来てなかったろ。隣か?」
「いえ。隣の、隣です。」
「...ってことは、『時』にか!?何で?いつから?飛翔は知ってんだよな。」
「はい、大佐はお止めしたのですが。時の国に停戦交渉してくるとおっしゃって。もうそろそろ、二ヶ月ですかね。」
「...そうか。」
炎狼が溜息を吐いた。何となく、飛翔が焦っていた理由が分かった気がした。
「あの、さっきから気になっていたのですが、赤とか、白とか、何が基準で色分けされているんですか?あと、制服も違うし。」
「...やはり、炎の方ではないのですね?」
「馬鹿、沙羅!」
慌てて雷が沙羅を諌めるが、
「―――そうだ。」
炎狼があっさり肯定してしまった。
「炎狼?!」
「だってバレたんだから隠したって仕方ないだろ?おれ誤魔化すの苦手だし。」
「ちょっとは努力しようぜ?」
「んな努力要らね。それに、こいつも味方だし、な?」
「そうですね。飛翔が通した方たちですし、東風も大丈夫だと言っていましたから。」
苦笑しながら空人が答える。
「色分けについては、陰陽五行説から来ているのです。東が青、南が赤、西が白、北が黒、そして中央が黄色。黄色は帝の色ですから、それを守る我々がそういう色になったのです。制服は、飛翔や私、つまり、青と白は文官。赤と黒が武官ですから、それに応じて制服が違うのです。私達は裾の長い上着を着ておりますが、武官は動き易いようにそもそも上着なんて物は無く、裾が短いのです。」
「へえ、飛翔って強いのに文官だったんだ。らしいと言えばらしいけど。」
雷が感心して声を出す。
「そういえば、今年も入ったんだろ、一芸さん。」
「『一芸さん』?」
「そ、飛翔が自ら自分の隊にスカウトするんだ。何か特技を持っているやつ。大抵の奴は社会不適応者なところがあって煙たがられているんだけど、そういう奴に限って飛翔が必要とするんだよ。自分の隊を持ち始めた年に、東風、次が颯希、で、今年は?」
「嵐(あらし)という者です。」
「特技は?」
「炎狼、日記はパソコンなんてデジタルな物に入れるなよ。」
突然飛翔の声が聞こえて炎狼は驚く。
「うお!?飛翔。...なんで?」
「得意なのは、ハッキングだ。彼の趣味だから、時々他国の情報覗いて遊んでいるよ。」
「...いやな趣味だな。」
大地が呟く。
「私がこの国を出る数日前に嬉々として、地の国のデータベースにハッキングしてたな。」
「本当に、いやな趣味だな。」
「すまないな。ところで、空人。何の用だ?」
「お前がいなっかた間の書類だ。俺が出来る物は何とかやっていたが、権限がお前より小さいからな。出来ない物が多い。」
「...それは困ったな。私は一週間もしないうちにここからまた出て行くんだ。」
「へえ、そりゃ何で?」
帰ってきた東風が部屋に入りながら声を掛ける。
「東風。すまなかったな、ありがとう。」
東風の持って来た返事を読んで飛翔は顔を上げ、
「まずは、明日帝にご報告申し上げなければならない。その後になら話そう。特に、空人にはまた苦労を掛けることになるからな。すまないが、ここに滞在している間も仕事が出来ない。」
と答えた。
「赤と黒がうるさいぞぉ?」
「帝の許可が降りている。」
そう言って書類を見せて渡した。
「これで私の代わりの権限が付く。持っていてくれ。」
嫌々受け取った空人はそれに目を通し、溜息を吐く。
「んじゃ、帰るか?」
炎狼の言葉で皆は部屋から出て行く。
飛翔を見送る空人は再び深い溜息を吐き、
「東風の苦情処理も俺かよ。」
と呟いた。
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