風の章 第6話
| 皆が風呂に入ってリビングで過ごしていたが、沙羅が立ち上がり、 「わたし、もう一回お風呂入ってくる。」 と言って出て行った。 「飛翔、大丈夫か?」 雷が心配そうに炎狼に聞く。 「さあな。でも、あいつにしっかりしてもらわないといけないんだ。キツイだろうけどな。」 皆が沈んでいると、 「きゃー!」 という悲鳴が聞こえた。 「今度は沙羅か?」 「今日は、よく悲鳴を聞くな。」 走っていくと、沙羅が脱衣所の前で呆然としていた。 「どうしたんだ?何か、虫でもいたのか?」 「ちがっ...。飛翔が...」 「飛翔が入ってたのか?お前、ノックぐらいしろよ。飛翔の裸見て悲鳴を上げたのか?何でこんな時、女が悪くても、男が悪者にされるんだろうな?」 大地が溜息混じりに言う。 「そう、いや、でも...。」 「なんなの。」 沙羅が言い淀んでいるのに少しイライラした雷が続きを促す。 「飛翔に、ムネがあった。」 「「「は?」」」 大地、雷、氷は聞き返すが、炎狼は爆笑を始めた。 「飛翔、お前ここに来て何バレてんだよ。気ぃ緩んでたか?」 『...私は風呂に入る。皆に事情を話しておいてくれ。』 ドア越しにそう飛翔の声が聞こえたかと思うと風呂のドアが開く音がした。 「おいおーい。事情を話しておけって...」 炎狼は抗議をするが飛翔が答えるはずもなく、とりあえず皆と共にリビングに向かった。 「えーと。何から話せばいいんだ?」 「まずは、何故飛翔が男として生活していたか、だな。」 大地がきいた。 「あー、何か、あいつが生まれる前に風の神、『セルス』が伯母上達の夢枕に立ったらしい。 この国、今日見ただけでも結構分かったと思うけど、女性に対してなんと言うか、まあ、冷たいというか、評価されないだろ?教育も、高等なものは受けられないんだ。飛翔は、風の勇者になることが生まれる前から決まっていたんだと思う。性別は、変えられないけど、まあ、それも『運命』ってやつなんだろ。 だから、小さい頃から、あいつは『男』でないといけなっかた。高等教育を受けて、闘うための知識と技術が必要だったんじゃないか?戸籍も、他のものも全て嘘っぱちだ。帝、この国の王はそれを知っている。その人の夢枕にも立ってその生き方を認めるように命じられたって話だ。」 「じゃあ、飛翔は17年も?」 驚きながら、雷が聞くと、 「そうだ。ずっと騙し続けなきゃいけなかった。本当に心を開ける相手がいなかったんだよ。自分の出自を教えたら、そいつもある意味共犯だ。だから、仲がよくても、信頼している奴でも、距離を置くようにしていたんだ。」 「飛翔が、この国に来て外で笑わないのもそれと何か関係してるのか?口元だけうっすら笑って答えることはあったが。」 「お前、良く見てたな、氷。あいつは家以外で笑うことないんだ。一回ジジィと伯父上があいつの笑顔見て口走ったから。」 「何て?」 「『可愛い』。これ、どう考えても男に対する褒め言葉じゃないだろ?それでなくても、こういう表現おかしいのは分かっているんだが、女顔だろ、あいつ。少しでも疑われたら、飛翔の場合違うって証拠見せらんねぇからな。」 「確かに、何度かわたしも思ったことあるわ。飛翔を可愛いって。」 沙羅が呟く。 「沙羅、お先。」 風呂から上がった飛翔がリビングに顔を出す。 「おう、一応一通り話しておいたぞ。」 「ああ、ありがとう。...ついでだな。風真、来てくれ。」 奥に向かって声を掛けると、昼間見た大きな鳥が飛んできた。 「いつもの姿になってくれ。」 「...はい。」 そう返事して、16歳くらい女性の姿になった。 炎狼を除く4人は目を瞠る。 「この子は、『風真』。魔族だ。私が5歳のときに拾った。何らかの影響でこっちに来てしまったらしくて、それ以来ウチにいる。家事全般はこの子にやってもらっているんだ。母や姉の料理は食べられなくもないが、何と言うかある意味才能的な味のものになるからな。」 「えっと、はじめまして。風真です。」 皆は、「はあ」と曖昧に返事をした。 「と、言うわけで、私が留守にする間この子に家事をしてもらってくれ。今日はもう遅い、寝たほうがいいだろ。」 |
桜風
07.1.28
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