風の章 第9話





時間は遡って、飛翔と別れた炎狼たちは、帝に挨拶をした後、軍庁舎に帰っていた。

「炎狼、やっと分かったよ。飛翔は王族だけどそうじゃないって言う意味。周りは知らないのか?」

雷の疑問には風花が答える。

「そうよ。面倒くさいから、内緒。」

「ところで、これからどうするんだ?」

「帰ろうぜ。おれ此処好きじゃないし。」

そんな話をしていると、

「よう、炎狼。飛翔はどうしたよ。」

と東風が声を掛けてきた。

「用事があるんだよ。お前仕事は?って言うか、今出勤か?」

「まあな。あ、これ飛翔に内緒な?茶でも飲んで行けよ。風花さんも凪さんもお久し振りです。」

「こんにちは。相変わらずのようね。」

東風の勧めで、皆はお茶を飲んで帰ることにした。

職場に着くと、皆暇そうにしていた。

「炎狼様、飛翔様はご一緒じゃないのですか?」

「あー、そう。悪いけど、一緒じゃないの。」

勧められるままにお茶とお菓子を食べて寛いでいたが、空人が突然何かに気付き、外を見る。

「奴らが来やがった。半数は此処に残れ、能力者は外で応戦しろ。」

空人の言葉にそこは騒然とし、炎狼たちも出て行く。

「伯母上たちは此処に残ってください。」


外に出ると、市民は混乱していた。

「今回は、また豪勢な。」

雷が呟く。

自分たちのエンブレムは返ってきていない。飛翔の試練はまだ終わっていないらしい。

それでも、怯むことなく応戦する。

能力を隠して戦える相手ではなく、自分たちの属性を使う。

敵の数が多く、キリが無いと思っていたらエンブレムが返ってきた。

氷を除く皆はそれを解放する。


炎狼と雷はそれぞれホムラとヒカリを召喚して空の敵に応じる。

ふと、目を向けた先に、知っている人の姿を見て、炎狼は焦る。

(残ってくれって言ったのに!)

風花と凪だった。

その二人に魔物が迫る。

「伯母上ぇ!!ホムラ、あそこだ。」

炎狼はホムラに指示を出すが、間に合いそうもない。

そのとき、鋭い風が吹いてきた。

風花たちに迫っていた魔物の背に矢が刺さり、倒れる。

皆が振り返ったその先には、

「飛翔!」

「遅くなったな。」

「お前、オイシイとこ取るなぁ。」

「ここは私の国だ、これくらいいいだろ?空は私に任せろ。」

「了解。雷、降りるぞ。」

そう言って炎狼たちは降りていった。

「風竜・ハヤテ!」

飛翔は、天に向かって弓を引いた。

空が割れ、竜が降りてきた。

そのまま飛翔は風に乗ったまま応戦し、ハヤテは自由に動きながら魔物を落としていく。


「飛翔!」

炎狼に呼ばれ下を見てみると、庁舎の門が閉まっていく。

避難をしにきた民が閉め出される形になる。

飛翔は庁舎に目を向けると、赤の少将が立っていた。門の管轄は、赤の少将だ。

「一体どういうことです?!」

「この中に逆賊がいないとも限らない。帝をお守りするためだ。」

と言う返事が返ってきた。

飛翔は奥歯をかみ締めた後、下で警護に回っている嵐たちに命令をする。

「嵐、抉じ開けろ!私が許可する!空人、嵐の警護を。東風、頼んだぞ!!」

「「「了解!!」」」

「越権行為だ、青の大佐!!」

赤の少将が非難するが、飛翔はそれを睨みつけ、

「『民なくば国は無し。国無くば、王は無し。』だ!」

と言った。

それを聞いた風花は弾かれたように走り出し、嵐の元に向かう。

「小母(おば)様?!氷。私、小母様に付いて行くから、凪さん頼んだわよ。」

風花と凪の護衛という形で付いていた沙羅は同じく護衛に回っていた氷に声を掛けて走っていった。


「どっちが防御?」

二つ並べてパソコンを操作している嵐に風花が声を掛けた。

「え...右の方だけど。」

「じゃあ、こちらは私がやるから貴方はそれに徹しなさい。」

風花は返事を聞かずに作業に取り掛かった。

(うわぁ、速い。何か、別の生き物みたい。)

沙羅は、風花のタイピング速度を見て感嘆の溜息を吐いた。

嵐も驚いていたが、自分の任務に集中する。


「逃げろ!」

突然そんな声が聞こえた。

悲鳴が上がる。

皆がそれを見たとき、アスファルトが、赤黒く変わっていく。

「怪我は、ないな...?」

「う...ん。でも、兄ちゃんが...」

「私はあなたたちを守りたくて軍に入ったんだ。」

空にいたはずの飛翔が子供を庇い、魔物の腕が肩に突き刺さっている。

「飛翔さん!」

「任務を続けなさい!」

飛翔に駆け寄ろうとした嵐を風花が叱咤する。

「あなたの隊長は、こんなことでどうにかなるような人なの?!」

飛翔は肩に刺さった魔物の腕を抜き、振り向きざまに切りつける。

「私はあの子をそんなヤワに育てたつもりはありません。もし、あなたがその任務を放棄するというのなら、それは私が引き継ぎます。ここの妨害は当分出来なくしてありますから。」

「嵐、お前がやらないでどうする。飛翔が必要だと言ったのはお前のその力が民を守るのに欠かせないと思ったからだ。そして、今その力が必要なんだ。」

護衛についている空人が声を掛ける。

歯を食いしばって、嵐は只管ハッキングに集中した。











桜風
07.3.11


ブラウザバックでお戻りください