第2話
| 空人と共に執務室に入る。 飛翔が引き連れてきた人物、ハヤテのことを知らない者たちは興味津々に眺めていた。 「飛翔様!」 すぐに駆け寄ってきたのは颯希だった。 「お帰りなさい!」 「颯希、時の国まで来てくれたのに礼もろくに言えていなかったな。ありがとう」 飛翔の言葉に颯希は首を横に振る。 「もうお体のほうは大丈夫なのですか?」 「動けるようになったからな。人の家でただ飯を食らうのは心苦しいから無理を言って帰らせてもらったんだ。こっちも、早くカタを付けたかったしな」 飛翔の言葉に部屋の空気は重くなる。 「あの、本当に...」 「ああ、私がここを出て行くときに付けた条件を向こうは守っている。こちらが反故にするわけにはいかないだろう。下手に隙を見せるわけにはいかない」 誰も何もいえなかった。 「着替えてくる」 そう言って飛翔が着替えるために隊長室へ向かおうとし、飛翔と共にやってきた知らない人物もそれに続こうとしていたが、 「おいおいー」 と東風が苦笑する。 「ああ、そうそう。紹介していなかったな」 飛翔が足を止めて振り返った。 「風竜のハヤテだ。今は人の形を取っている。粗相があると恐ろしい目に遭うぞ」 からかうように飛翔がいい「ハヤテ、此処にいろ」と言って執務室を後にする。 「本当に、風竜なの?」 東風が問う。 飛翔が竜と共に戦闘を行ったのは見たことがある。あの時はとても大きな竜だった。 それが、今はこうやって少し背が高いが人と同じサイズなのだ。やっぱり気になる。 「ああ」と短く答える。 「前に、広場で飛んでた..よな?」 嵐がハヤテを見上げて言う。 「主のために我らはあるからな」 「じゃあ、何で人間みたいにしてるんだ?」 凄いな、と周囲は感心している。 得体の知れない、下手をすれば何かありそうな風竜に自分の疑問をぶつけているのは嵐だ。 以前飛翔が笑いながら「嵐の知識欲は行き過ぎなところがあるな」と言っていた。 今、まさにそれだと思う。 ハラハラしている周囲を他所に色々と自分の疑問をぶつける。 疑問をぶつけられているハヤテはそんなことが気にならないのか、淡々と答えていた。 凄く、不思議な光景だった。 暫くして、礼服に身を包んだ飛翔が戻ってきた。 謁見だから、とそちらに着替えたらしい。 「白の少尉」 空人に声をかけて「では、いってくる」と部下達に声をかけて部屋を出て行く。 ふと、一緒に出てきたハヤテに気がついた。 「お前は此処に居ろ」 「従えません」 「あのな、さすがに彼らでも帝を前に馬鹿なことはしないだろう」 「一度ありました。そんな馬鹿なことが」 否定できない... 「それに、飛翔様に害をなすものを全て排除するのが俺の役目です」 「人間を傷つけるな。銃弾は私に届かない」 飛翔が睨んで釘を刺す。 「では、抑止力としてお供します。先ほどの件は既に噂として流れているでしょうから」 ハヤテの言葉に飛翔が溜息をつく。 つまり、先ほどの竜の形をとったこと、それから人に変じたことは全てそれを目的として行ったパフォーマンスと言うことだ。 「わかった。ただし、あちらでは帝の指示に従えよ」 「俺に命令できるのは風の勇者だけです」 「さっき、命令したつもりだが?」 飛翔が指摘するが、それは汲む気がないらしい。 「飛翔、そろそろ」 空人が促す。 「ああ」と返事をし、歩き始める。 謁見の間の前には白の将軍が立っていた。 「ハヤテも一緒か」 「ええ、不都合がありますよね」 飛翔の言葉に苦笑して「残念ながら、ないんだ」と言われて飛翔は肩をすくめた。 「お前が最後だ」 「裁かれる者が最後でいいではありませんか」 そんなことを言う飛翔を軽く小突き、「いつもすまない」と翼が呟く。 飛翔は苦笑して「では、参りましょう」と促し、重い扉が開かれた。 |
桜風
11.11.27
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