第18話





各国を回ってそのたびに国の主賓扱いされそうになって断り続けて何とか自国に戻った。

約ひと月ぶりの帰還だ。

家の前に降り立つと「飛翔!」と東風が駆けてきた。

「久しぶりだな」

と挨拶をすると

「馬鹿!早く庁舎行け!!」

筆記用具と写真が付いている掌サイズの硬質紙を押し付けられて飛翔は少し困惑する。

「何が...」

「南庁舎の第七会議室だ。いいから、早く行ってくれ!!」

そういわれた飛翔は何が何か分からないが、東風の勢いに押されて翔けた。

「何があるんだ?」

飛翔と共に国に帰ってきたハヤテが問う。

「入隊試験」

「...は?」

返ってきた間抜けな声に東風は満足げに笑い、「飛翔行ったぞー」とどこかに通信していた。


飛翔は東風に言われたとおり、南庁舎の第七会議室に辿り着き、その場の雰囲気が身に覚えがあったため、余計に混乱した。

自分に受験資格はない。

しかし、先ほど東風に押し付けられた掌サイズの硬質紙を見ると、それは受験票で、受験番号もちゃんと振ってある。

まさか、自分だけ特例か?

飛翔は首を傾げた。

別室に行って確認してみようと思ったが、試験監督官が入室してきた。

受験資格がなければここで追い出されるだろうと思い、自分の受験番号が貼ってある席に着く。

周囲から向けられる視線には敵意しかない。それが少し可笑しかった。

昨日まで各国を回り、皆が自国に、と声を掛けてくれた。

だが、全く心は動かず、自分が帰ってきた場所では敵意を向けられる。それでも、この国がいいのだ。

「今回の受験の確認をする」

試験監督官が今年の受験資格について説明しはじめる。

これは、事情を知らない飛翔のためのものであるが、念のために他の部屋でも同じように説明してある。

白と青で考えた受験資格と合格基準。

女性に受験資格を与える。

しかし、年齢について条件がある。下限は男女同じだが、女性には上限を設けた。

そして、女性の合格基準を明確にした。そのため、女性受験者のみ、結果を一般に公開される。論文にいたっては、その原文を公にされる。

それは、今後不正の嫌疑を掛けられないようにするための措置だ。

そして、今回試験に不合格となった女性は、二度とこの試験を受けることが出来ない。

その話を聞いた飛翔は、自分以外に女性受験者はいないと思った。

試験が開始された。

まずはマークシートによる一般教養だ。

制限時間の半分も経たない内に飛翔は筆記用具を置いた。

窓際の席で良かった。空を眺めていると時間はあっという間に経つ。


解答用紙の回収が終わり、昼休憩に入る。

論文は午後からだ。

とりあえず、食堂に向かおうと席を立つと「飛翔ちゃん!」と聞きなれた声が入ってきた。

「姉様?!」

「良かったー、間に合ったのね」

ぎゅっと抱きしめられた。

「どうしたんですか?」

「わたしも受験生」

そう言って受験票を見せる。

「へ?」

間抜けな声が漏れた飛翔に「あら、聞いてなかったの?」と首を傾げられる。

「先ほど戻ったばかりで。家の前に東風がいて。受験票と筆記用具を渡してきたので何も聞かずに翔けて来たら受験だったんです」

飛翔の言葉に「あら、忙しない」と凪が笑う。

「飛翔さん!」

塾で教えていた資産家の娘が会議室を覗き込んでいる。

「あ..え?!」

まさか、と凪を見た。

「お仲間。あと3人と鈴風ちゃんとお母さんもいるよ」

「はい?!」

「まあまあ、いいからご飯食べに行こうよ。飛翔ちゃん、おススメ何??」

そういいながら凪は飛翔の背を押し、そのまま会議室を後にした。









桜風
12.7.22


ブラウザバックでお戻りください