第23話





実技試験当日。

控え室で説明を受けていた飛翔は思わず説明者に対して目を眇めた。

中継とか、バカだろう...

これまでのようにそれぞれの国の情報が入りにくい状況とは違う。

今は、まだゴタゴタしているから制度として難しいが、お互いの国で情報を収集する者が駐留している。

勿論、お互い様なので黙認という形だ。

もしかしたら、把握しきれていない者もいるかもしれない。こんなもんを中継などしたら、簡単にこちらの戦力を測られてしまう。

そんなに高くもないというのに...指揮官の能力が。

説明者は飛翔に睨みつけられて腰を抜かしそうになっていた。


試験は1対1の試合となっている。トーナメントなどではなく、取り敢えず、その試合の中の身のこなしと、判断能力を見られる。

これは、飛翔が士官学校に通っていたときの成績のつけ方と同じである。

そして、飛翔が試験を受ける番が回ってきた。

会場に入ると、目の前には複数の受験者がいる。

飛翔は試験官たちを見上げた。

説明を求めたのだ。

「飛翔、お前と1対1の試合をさせるのはヒヨッコたちには気の毒だからな。ルールを変える」

試験官の一人、赤の少将がいう。

だったら、そもそもそんなのを合格にしなければ良いだけの話しだろう...

そう思って飛翔は自分の前に並んでいる人物達を見た。

...なるほど?

苦笑した。どいつもこいつも、後ろ盾がある。赤と黒の。

「と言うわけで飛翔」

「ひとつ、よろしいでしょうか」

赤の少将の言葉を遮って飛翔は手を挙げて発言をする。

「何だ」

不機嫌に返した。

「私も、一受験生です。他の受験生と同じく名前ではなく、受験番号で呼ばれたほうがいいのではないでしょうか。変に、贔屓されたなどと囁かれては不本意です」

飛翔が指摘した。

彼は、私怨にとらわれて飛翔を客観的な見れていない。

指摘を受けて彼はグッとつまり、飛翔のことを番号で呼ぶ。

「ここでルールの変更だ」

これ以上?

飛翔は笑いそうになって何とか堪えた。本当に、能無しだ。

ルールを変更、つまり、飛翔に不利にするつもりなのだろう。それで飛翔がクリアしたら非の打ち所がなくなると言うのに。

「貴様は、能力者だな?」

茶番...

「ええ」

飛翔は頷いた。

「では、能力をここで使用することを禁ずる」

ザワリと、飛翔と対峙していた受験生達もざわめく。

「能力、風の力と言うことですか?武器は?」

「武器は大目に見てやろう」

尊大に言う。

「では、確認をします。私は風の力の使用は認められないが、武器の使用は認められる」

「そうだ。そして、そちらは」

と飛翔と対峙している受験生を見た。

「そいつに、傷を負わせればその場で合格だ。かすり傷でも構わない」

それを聞いて彼らは俄然やる気を出した。

いずれライバルとなる同期だが、今は、飛翔に傷をつければ合格をすると言う、ある種の運命共同体で、協力した方が良いに決まっている。

彼らは視線を交わして頷いた。


「あー、バカバカ」

中継を見ながら空人は呟いた。結果が見えた。

「や、風の能力を使わせないってなら...」

鳳貴が言う。

「飛翔の父親は誰だ」

「大総統」

「何処のご出身だ」

「炎の国...」

「炎の国の頭領の家の仕来りを知っているか?」

空人の言葉に鳳貴は首を横に振った。

「炎の力を持っている子の名には『炎』という字をつける。では、問題が。大総統の名前は?」

空人が言うと鳳貴は首を傾げた。

「すまない、知らない」

「え、そうなんですか?!」

颯希が声を上げた。

「なら、こんなバカなことを思いついてもおかしくないんじゃない?」

嵐も言う。

「何て名前なんだ?」

「炎勇。炎の勇者みたいに強くあるようにって名付けられたらしいってご本人から伺ったことがある」

「...は?」

「飛翔が言うには、炎狼様がお生まれになるまでは、この世界で最強の炎の能力者だったらしいぞ」

「え...」

「あいつの血筋、舐めてたら痛い目に遭う」

苦笑して、空人が呟いた。









桜風
12.10.14


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