第25話





合否について検討会議が開かれる。これは、毎年のことだ。

しかし、今年は紛糾した。

勿論、飛翔のことについて赤と黒が反対したのだ。

「あんなのインチキです!」

「『インチキ』って...」

呆れたように空也が呟く。

「黒の中将はご存知だったのでは?!」

「何を?」

「あの受験生が炎の能力を持っていることです」

「知ってたよ?」

椅子を斜めに傾けながら面倒くさそうに彼は返す。

「だったら!なぜ我々に...!!」

「何で?俺、受験生であるあの子にこっち側の事情を漏らしてない。何でこっち側にあの子の情報を漏らさなきゃいけないの??」

真顔で問うた。

「そ、それは...!」

「公正な判断できないっしょ。まあ、するつもりもなかったみたいだけど?」

そう言ってつうと目を眇めた。

「不遜ですぞ」

赤の少将が苛立たしげに黒の中将に言った。

「何処のどなたの話だ?」

睨まれて彼は息を飲む。

「あんたら、いい加減にしろや」

立ち上がって空也が椅子に腰を下ろしている彼らを見渡した。

「第一、言っとくが人事は白だ。この受験による採用についても、最終判断は白がする。白は最初から欲しがっていた人物がいた。そして、あんたらが色々やらかしたのをものともせずにその受験生はここまで来たんだよ」

そう言ってドアに向かう。

「黒の中将」

白の将軍が咎めるように彼を呼んだ。

ぱちんと彼が指を鳴らすと、ポッと部屋の中に置いてあったろうそくに火がつく。

「良かったな。炎の国がこの国に敵対しないことを選んでくれていて。一瞬で灰だぞ」

そう言って彼は部屋を後にした。

面倒ごとをおいて部屋を出て行くな...!

白の全員が心の中で突っ込んだ。

「さて」

声を発したのは大総統だった。

「そろそろもういいか?」

部屋の中にいる尉官以上の者達を見渡した。

「こちらは大体固まっております」

白の将軍が頷いた。

「ま、待て...!こんな公正に欠ける」

「そろそろ黙れ」

低く大総統が言う。

空気が一気に冷えた。

そして白の将軍を見た。彼は頷き、立ち上がる。

「さて。今回の受験に合わせて皆さんの勤務評定も改めて行いました」

ざわりと空気が騒ぐ。

「聞いておりません!」

「言ったらいい子でいるだろう?」

面倒くさそうに白の大将が言う。

「貴様...!」

「今回の中継の件は、目を瞑ることにしましたがね。あのバカなことも多少は役に立ちました。いち早くあの受験生がこの国の中心に戻ってくるということを他国に知らしめることが出来たのですから」

白の大将が言う。

「それ以外は..まあ...今回の試験合格者の発表に合わせて大幅な人事異動を行います。組織の改変も含めて」

「待て!」

異議が上がる。

「何でしょう?」

「組織の改変は白だけでは出来ない。我々の、尉官以上の過半数の賛同が必要なはずだ」

「ええ。ですから」

そう言って見せたのは合意書。

「あと1つで過半数です」

白と青が全員賛成しており、さらに黒の中将がサインしていた。これでイーブンだ。現在、青の大佐が空位になっている。

「さて、これにサインされる方はいますか?」

じりじりと室内で牽制しあう空気が流れる。

「さ、サインします!」

黒の少尉が声を上げた。

「裏切り者!」

口々に罵声を浴びせる黒と赤を背に、彼はサインをしてしまった。

なおも罵声が続いていたが、それを途切れさせたのは赤の中尉だった。

「いきなりサインをしろといわれましても、中身の説明がなければサインのしようがありません」

「鳳貴?!」

赤の少将が声を上げた。

(なるほど...)

白の将軍は心の中で呟く。飛翔の隊に出入りをするようになっただけはある。

とりあえず、保身に走って何も聞かずにサインをしてくる者がいたら、即行マイナス査定を掛ける予定だった。勿論、理由も口にせずに反対を声高に叫ぶだけでも。

これが、彼らにとって最後のテストだったのだが...

黒の少尉にはもうマイナスの棒がついている。もう少し泳がせて他の者の様子を見たかったが、彼に簡単に読まれてしまったらしい。

「道理だ」

頷いた白の大将は白の少将に視線を向けた。彼は頷き説明する。

今は軍が政治も全て行っていたが、それをやめるというのが大前提だ。

政治の組織の中に軍があると言う形にする。つまり、軍備の縮小となる。

ただし、今でも半分は文官で、武官と言っても文官とさほど変わらないことをしている部署もある。

それらを整理して、部署をいくつかに分ける。内務と外務。外務は外交と国防を担い、内務は法律、財政、政策調整、福祉、国土整備、それらの調整を行う部署など、仕事の対象によってわけ、部署の目的と責任を明確化する。

「今回の女性受験者のことは、これに関係するのでしょうか」

赤の中尉が問う。

「そうだな。女性も政治に関わっている国もあるし、次期代表が女性という国もある。女性の視点があった方がこちらの視界も広がると考えている。もう、この国の中だけの話ではないからな」

白の少将が答えた。

「ペンを」

そう言ってずっとペンを握りっぱなしだった黒の少尉に手を伸ばした。

「え、ああ」

慌てて彼は赤の中尉にペンを渡した。

彼はサインをする。

「女性の合格者があるということですね」

「それは、1週間後に分かる。ああ、いや。赤と黒のお陰でひとり確実に合格できたか」

白の大将が赤と黒に対してかなり痛烈な嫌味を口にした。









桜風
12.11.11


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