第27話
| その年の合格者が発表された。 当初の規定どおり、女性受験者の合格者の答案は1週間掲示され、誰でも見ることができるようになっている。 今回掲示されているのは、全員分。 つまり、女性受験者全員合格となった。 ただし、ひとりだけ辞退者が出た。 彼女の家は、この国でも有数の資産家であったが、家督を持っていた父親が急逝したのだ。そして、彼女はその家のただ一人の子供であり、基本的にこの国は事業なども世襲制であるため、彼女が継ぐことになった。 少し前なら、慌てて適当に縁組をして夫となる男に任せなくてはならない状況だっただろう。 だが、彼女は国の機関を受験し合格できる実力を示した。その上での辞退だ。 「私は、経済の世界で男達と戦います」 彼女は胸を張って宣言し、共に受験した友人達の顔を見渡した。 「あなた方は、政治の世界で男達と戦ってもう少し私たちが住みよい社会を作ってください」 彼女の言葉に、皆は思いつめたように頷いた。 「そんな気を張ることもないでしょう」 飛翔が苦笑する。 「協力だってしていかなくてはならない。戦う気満々で臨めば向こうだって攻撃的になる。そうなると、人数的な問題もありますが、こちらは不利ですよ」 そして、彼女に言った。 「外に目を向けるなら、まずは時が良いかもしれない。私は商売には疎いが、あそこは女系社会だから、入りやすいだろう。というか、ウチみたいにガチガチに男尊女卑の国はないから、あとはあなたがどのような方向を向いているかによると思う」 「貴重な情報、ありがとうございます。皆様に風の加護があらんことを...飛翔さんは、既にあるみたいですけど」 そう言って飛翔の隣に立つハヤテを見て彼女は苦笑した。 ハヤテは肩眉をあげ、そして僅かに口角を上げた。 「わー、この大異動。どうまとめんの?」 本日、人事異動の日でもある。 今回の受験資格の改正に関連して在籍者の査定も行ったのだ。 白の、この奇襲のような人事に関して黒と赤は反発を示していたが、元々人事権があるのは白であるため、強くはいえなかったし、組織の変革にかかる人事は尉官以上の半数の賛成が必要だったのだが、この条件も満たされているので何もいえない状態となったのだ。 「つか、やっぱここも解体だなー」 執務室の中を見渡して東風が言う。 権力的なものはさておき、実力的にはかなり高い者が揃っていたのが、飛翔の部下達だった。 おそらく、実力だけだったら飛翔の部下としてスカウトされてきた彼らがどのジャンルでもトップだ。 人格的に問題があるだけで。 そして、それをまとめ、指揮することが出来る指揮官がいればこの隊は小さな軍という組織として成立する。 今回の試験で、指揮官となれる者が帰ってくるのだ。よって、解体しておかなくては危険だと判断されたようだ。 「まあ、そうなるだろうなー...」 「っつっても、俺たちって社会不適合者的な存在だから飛翔が拾い集めたんだぜ」 「自分で言うな」 東風の言葉に空人が溜息を吐く。 「ただ、組織が変わるのにあわせて上の体制も変わるしな。とりあえず置いてみようというのがあるんだ。人事については、毎年見直しを行うらしい」 「異動願とか出せるってことか?」 「聞いてもらえるかどうかは別だがな。特に、お前はもう飛翔の下は無理だ」 きっぱりと言われて「なんで!」と東風が抗議の声を上げた。 「飛翔はおそらく外交だぞ?お前、今の状況でもあまり表に出してもらえていなかっただろうが」 「うへぇ...」 言われてみれば、白と青が飛翔を戻したがっていた理由は主に外交だ。 つまり、自分はどうにもそういった方面に信用がないため、その部署に行くことは二度とないだろう。 実際、今回の辞令は外との接触のない部署だ。 「今、外交のトップは嵌ってるじゃん?」 「ん?ああ、そうだな」 「じゃあ、飛翔はトップじゃねーの?」 東風が問い、空人は「そうなるんだろうな」と答えた。 |
桜風
13.2.10
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