第31話
さて、どうするか... 飛翔はゆっくりと歩きながら考える。 今技術部が行っている事業というのは、各国に取り付けられる受信用のチューナーを作成しているのだ。 国ごとに技術力が違うので、まずは、それを平坦化して同じだけの出力ができるように間に何か装置を噛ませるといっていた。 その開発に日夜追われているとか。 母親がここ最近帰ってきていないのだ。父は心配している様子を見せていないつもりのようだが、いつもよりも注意力散漫だし、家の中の物音に敏感になっている。 人の気配が近づき、飛翔はその廊下の角を曲がるのを数歩待った。 するとやってきたのはこれまた懐かしい顔で苦笑する。 (同窓会か?) 「あ、飛翔さん」 「久しぶりだな。馬車馬だろう?」 そう言って飛翔が笑うと目の前の嵐は半眼になって飛翔を見上げた。 気の毒なくらいくっきりと目の下に隈がある。 「すごい顔だな」 「風香さんのほうがもっとひどいよ」 「家に帰ってきたら、父が慌てるな」 苦笑していう飛翔に「大総統って慌てるの?」と興味津々に嵐が問う。 「もちろん。あの人も人の子だからね」 飛翔が頷くと嵐は愉快そうに笑った。テンションがやはりおかしい。 「大丈夫か?」 不意に問われて困ったように嵐が笑う。 「大丈夫じゃないってボクは言えないよ」 「そうなのか?」 「風香さんのが大変だから。ボクたちはそれでも今みたいに仕事場から逃げたりしてるけど、あの人はずっと籠ってる。すごい人だよな」 飛翔は苦笑した。 「でも、技術主任はおそらく今の状況が楽しくて仕方ないんだと思う。ずっと手を出せなかったからな」 「防御システム、あの人開発なのにね。ボク、軍に入って一番驚いたことだもんな」 「私とハッキングゲームしていて負けていたお前では足元に及ばないだろう?」 「わー、ひどい」 棒読みでそう言いながらも嵐は「そうだな」と納得していた。 「ボク、風香さんの技術盗めるだけ盗むつもりなんだ」 「そうか。技術主任も喜ばれるぞ。盗めるもんなら盗んでみなさいって笑いながら言うと思うぞ」 「...あの人は、どうやって技術を身に着けたの?」 「それは本人から聞いたらいい。苦労されたと思う。いや、ちがうな。あの人は気になるもの全部手を出していたんだと聞いたことがあるな。自分で学んだはずだよ。女性に技術を教えてくれる人がいるとは思えないだろう?だから、技術を与えることはしないと思う。盗もうと思えば盗めたのを自分がよく知っているのだから」 ため息を吐いた嵐に飛翔がニヤッと笑う。 「目標が高いと燃えるだろう?」 「ああ、そうだよね。飛翔さん、ボクの元上司だ。ボクの性格なんてお見通しなんだよね」 苦笑して嵐が言う。 「今日はみんなに会ったよ」 飛翔の言葉に嵐が目を細めた。 「元気だった?」 「そうだな。私が一番暇人だ」 「今まで激務だったから帳尻あうんじゃない?」 と嵐は苦笑した。 「忙しい方が性には合うんだが」 「苦労性だね」 嵐はそう返して回れ右をした。 「サボらないのか?」 「サボれない。じゃあね、飛翔さん」 軽く手を上げて嵐は去って行った。 彼の背が見えなくなるまで見送った飛翔は苦笑した。 「少し、背が伸びていたな」 この分だとすぐに追い越される。 以前東風や空人と話をしたことがある。あのちびっこ組は骨格から行って飛翔の背は軽く越すだろうと。 「そうか」 取り敢えず、今寝ずに作業をしている母や元部下のためにも、話をまとめるようにことを運ばなければならない。 「炎は問題ないか。雷から行ってみるか」 そう呟きながら歩く。 故意ではないにしても、各国の政治の中心部も見てきている。 時間がかかりそうなところから押さえておきたい。こちらの提案を受けて説得するのは彼らなのだ。 |
桜風
13.6.9
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