第32話
| 雷に連絡を入れておいた。 時差の関係や彼の執務の状況によっては連絡が取れないと考えたのだ。 一応、連絡を入れたい時間を知らせておくと、その時間で大丈夫だという返信がある。 「悪いな、忙しいのに」 「構わないよ。何?ウチに来たくなった?」 飛翔が政治に戻ってきたことを知っていながらの発言だ。 飛翔は笑い、 「元部下諸々がうるさいから大人しくするよ」 と返す。 「そう。それで、何かな?難しい話?」 「探りを入れてみたいなと思って」 飛翔の言葉に雷は笑う。 「いいのかな、そんなにはっきり言っても」 「友人に対する話だからな。さすがに、私だって、公式に意見を求めるなら別のルートを通す」 「なるほどね」と頷いた雷が飛翔に話の続きを促した。 飛翔は現在の事業の状況を説明した。 その事業については、雷も耳にしており、進んでいるという話だと思っていた。 「そんなに難航しているの?」 「らしいな。私自身がその交渉に赴いているわけではないから、状況が人づてという少し心許ないものなのだが...雷は何か聞いていないか?」 「順調です、という話しか」 「何をしたら状況を打開できると思う?ウチにもできることできないことはあるが、選択肢が浮かばない。今まですんなり話が進む炎としか調整をしたことがなかったからな」 「そうねぇ...探りを入れてみるよ。ところで、難航しているのは、ウチだけ?」 「暗礁に乗り上げているのが貴国と聞いている。沙羅のところも少し難しそうだが、これは物理的に施設の建造場所の問題ということらしい」 飛翔が言うと雷は笑う。 「そうかー。ウチは利権が絡むとものすごく目の色変えてくるのが多いから」 「大抵、そうなるんだが...まあ...」 早速飛翔の経験が役に立ったという状況だ。 どこをまず攻略する必要があるか、その判断を下すことができる。 「そうだな。あと、できれば飛翔も一緒に交渉に来た方がいいと思うな」 雷が言う。 「私か?しかし、私が赴いては武力をちらつかせるようにならないか?さすがにそれはうちも本意じゃない」 「ワタシが出ていきやすいんだよ。今、飛翔が言った武力をちらつかせるじゃないけど、その場のパワーバランス的に。さすがにワタシの目の前で意味もなく頑なに反対はしないと思う。理由を添えて、「だから、ダメです」って話になると思うな。 今回のは、そうだね...そっちは技術部の人も絡むよね」 「絡む。というか、あそこの関係だ」 飛翔が頷くと「風香さん、どう?」と雷が問う。 「出てこられるか、ということか?」 「そう。技術部の中でも結構重い立場の人でしょ?その場で質問が出た時に答えられて、かつ判断できる人がいたほうがいい。そして、一応、立ち居振る舞い的にも風香さんが適任ね。ウチはそっちと違って、昔から女性も中央にいたから性別で軽んじることはまずない。何より、高貴な血筋に弱いのがこっちの貴族の特徴よ」 肩を竦める雷は呆れた表情だ。 「風香さんが帝のお姉様というのは、そっちでは周知の事実でしょ?」 「あまり言いふらすな、という話になっているが...」 「そうなんだ?」 「ウチは『裏』の存在自体が、ほとんどの者に知られていないんだ」 雷は首を傾げて不思議そうにする。 「あの文化の違いはそういうことだ。ずっと昔、あのような生活をしていたらしいが、便利な道具を知った者たちが色々と改変しようとした。便利な道具を使うことで自然を破壊していく者たちが出てきたんだ。 帝の一族ではあったが、臣下に下った方たちで、だから、国を二分しようということになった。 ただし、帝は神の血を引く方ということで、風の加護はさすがに手放せなかったから、帝が両方の地域を統べる方ということでこっち側を整備していったらしい」 「複雑なんだね」 「そう。だから、こちら側の者たちは、あちらの世界は基本的に知らないし、あちら側もまた然り、だ」 「だから、突如現れた帝のお姉様という存在に色々と破たんのない設定を作るのが大変って事かぁ...」 飛翔は苦笑して頷く。 「そこら辺はぼやかしながら、尚且つそちらから来てもらう人は、知っていてもおかしくない人ということはできる?」 「人選については、流石に即答できない。上司に相談してみよう」 「...飛翔が『上司』っていう単語を使うと違和感あるね」 雷がきょとんとしていう。 「前にもいたぞ。部署的には私がトップだったが、階級的にはまだ上は居た」 「あ、そっか。大佐だったものね。将官がいたか」 「そういうこと」と飛翔は頷き、「少し今の話を念頭に置いて上司に相談してみる」ともう一度言う。 「訪問のスケジュールは前もって教えて。ワタシも空けておくから」 「すまないな」 「ううん。だって、ウチがゴネて事業がおじゃんになったら、他国から嫌味言われるの、目に見えてるしね」 肩を竦めて雷が言った。 |
桜風
14.12.27
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