第33話
| 現在、進行が止まっている事業の協議のため、光の国へと赴く風の国の外務一行の中に、飛翔と風香の姿があった。 飛翔は雷と話をした翌日に上司に相談してみた。 彼は、飛翔に動いてもらうよう、別の方面から話があったことは知っており、そのため、さほど不快な表情はなかったが、担当者がかなり反発した。 当然そうなるだろうと思っていたが、時間的猶予がない。 式典の日取りは決まっており、これはすべての国の代表が集まる日になる。 その日をずらすことはすでに不可能であり、技術なら、と買って出たこの国の信用にかかわる話になるのだ。 幸いにも、というべきか。長官と呼ばれるこの部署のトップがそのことを理解していたため、飛翔の提案を受けてそれを了承した。 飛翔は、光の国の事務方と日程調整を行い、その日程を雷に伝える。 彼はそれとなく自国の外務官に同席を申し出てその席に着いた。 案内された部屋のドアを開けると、すでに光の国の外務官及び次期国王殿下の姿があった。 時間丁度であったとはいえ、一国の王族を待たせたことを詫びる。 飛翔の姿を見て、光の国の外務官に緊張が走った。彼女の事を知っているのだ。 そして、ちらと雷を見る。視線が何かをうかがっているように思えたが雷は安心させるように頷いた。 「さて、このたびの議題なのですが」 話を切り出したのは飛翔ではなく、その上官である長官だった。 前回の協議で問題となった箇所を確認する。 「他国の状況は、どのようになっていますか?」 雷が問うと 「おおむね了解が得られております」 と風の国の長官が言う。 「概ね...わが国では、何が問題となっているのだ?」 雷が隣に控える外務長官に問う。 「恐れながら...現在話があるのは、通信部分です。受信施設のみの整備という話ではありますが、それを任せるというのは、些か問題が...」 歯切れ悪く答えた。 「些か問題。何が問題だ?」 「現在、停戦条約により、我々は戦争を行っていません。しかし、これは飽くまで停戦条約なのです。いわば、まだ戦争中と言っても過言ではありません。 そんな中、通信部分の整備を他国に任せるというのは危険すぎます」 目の前でそこまで踏み込んでいわれると思っていなかった飛翔は雷を見た。雷も気まずそうに視線をそらす。 「あの、少しよろしいでしょうか」 軽く手を挙げて言ったのは、風香だった。 「まず、そちらの問題点としては、受信装置の装着が問題なのですか?」 「ええ。こちらが見ていないところで他国に触られるのが、問題です」 光の国の外務官が頷く。 「これは、多少政治的な話になるので、一技術部職員が口にするのは出過ぎたマネかもしれませんが」と言って飛翔の上司を見る。 上司はちらと飛翔を見た。彼女は小さくうなずき、それを受けて風の国の長官が頷いた。 「まず、大臣クラスでは、今回の事業。式典については了解を得られていると聞いております。 また、我が国が受信施設の装置を開発し、各国に配布することについてもすべての国の了解が得られていると聞いています」 「それについては、私にも報告がありました」 雷が頷く。 「ですが、殿下」 光の国の長官が雷に何かを言いつのろうとしたが、「しかし、そちらの長官の仰ることは私にも理解できます」とそれを制すように風香が続ける。 「私どもとしましても、こそこそ何かをしようというわけではありません。むしろ、貴国の技術者に立ち会っていただきたいのです。これは、当方の外務官からそちらに申し出ていると思いますが...」 「そ、それは...」 口ごもる長官に雷はついと目を眇め、「技術部は何と?」という。 「いえ、まだ..その...」 「今すぐ、技術部の責任者を連れて来なさい」 雷の言葉に「それは」と長官が反駁しようとしたが「連れて来なさい」と雷が少し語気を強めていう。 「はい」とうなだれるように返事をした外務長官が部下に声をかけて命じた。 「申し訳ありません。こちらも技術的な現場の話が分かる者に同席させましょう。どうやらその方が、話が早そうだ」 雷がいうと「いいえ」と風の国の長官が首を横に振る。 |
桜風
14.12.28
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