| 「ちわー!」 はテントの外から声を掛けた。 数秒待ってみるが、反応がない。 「ん?」と首を傾げて「おーい、ちいちゃーん」とかける言葉を変えてリトライしてみる。 返事がない。 んー...と悩んだが、「ま、いっか」と言ってテントの入り口を開けた。 「おりょ?お留守ですか??」 意外と中は広い。 まあ、あの長身の千聖が生活しているのだから、そこそこの広さは必要だろう。 しかし、とテントの中で正座をしたは腕組みをした。 「どこ行ったのかな?」 いつもなら、テントの前の池で釣りをしているはずだ。 池の鯉が減って仕方ない、とぼやいている職員の言葉をちらりと耳にしたが、そうなったら千聖が実家から持って来ればいいだろうとは考える。 誰かさんが聞いたら「そういう問題ではない!」と指示棒をこちらに向けて言うのだろう... がさ、と音がしての背後にあるテント入り口が開いた。 「なんだ、か」 低い、その声には振り返った。 「ちいちゃん!」 回れ右をしてテントから出る。 「どこ行ってたの?」 「食材の調達だ」 そう言ってガサゴソと調達してきたという食料をまとめている。 「どこ行くの?」 「アホサイユだ」 「...そーなんだ」 あそこはある意味トクベツな場所だと聞いている。 だから、そこに籠もられたらは足を踏み入れることが出来ない。いつもおやつはアホサイユで作ったものを千聖がのために取り置いてくれているのだ。 「お前も来るか?」 千聖の言葉には驚いて顔を上げた。 「いいの?」 「ああ、たぶんな」 「あそこって、トクベツな場所だって聞いたよ。許可がないと入っちゃいけないって」 「許可、か...」 そう言って千聖は空を見上げた。 つられても空を見上げる。 見上げた空は雲ひとつない青空だった。と言っても、そろそろ日が傾いて空の色が変わり始めてきているが。 随分、高くなったなぁ... もう秋真っ只中なんだな、と何となく寂しさを感じた。 「ま、大丈夫だろう。天は意外とそういうの気にしないからな。ここで考えていても仕方ない。面倒だしな」 「また『面倒』って言った」 くすくすと笑いながらが指摘すると 「仕方ないだろう。面倒なものは面倒だ」 と千聖は困ったような、呆れたような表情でそう返してきた。 「今日のおやつは何?」 千聖の持っている食材に手を伸ばしたが、それは持たせてもらえず、代わりに自分の伸ばした手は彼の手の中に納まってしまった。 「アップルパイだ」 「今から作れるの?」 「ああ、簡単だ」 さらりとなんでもないことのように千聖が言う。 「ちいちゃんのこの手は魔法の手だね」 笑いながら言うに千聖は目を細めた。 「そうか?」 「うん」 「...しかし、お前はいいのか?」 千聖が心から心配そうに見下ろして突然話を変えてきた。 「何が?」 しかも、真剣な瞳だ。 「毎日毎日天と同じだけおやつを食べているだろう。そろそろ体重が増えているんじゃないか?あいつは普段から運動量が半端ないから..?」 足を止めてが俯く。 突然だったことに困惑しつつも、もしかしてどこか体の調子が悪いのかとか心配して千聖は彼女の名前を呼んだ。 「ちいちゃん」 「どうした?どこか具合が悪いのか??」 心配そうに言うその声はとても優しくて好きだが... 「余計なお世話よーーーー!!」 そう言っては千聖の手を振りほどいて駆け出した。 「な?!??!!」 意外にも彼女は足が速かった。 呆然と見送った千聖は仕方なくアホサイユへと足を向けた。 自覚はないものの、落ち込んでいたのか様子がいつもと違うと察した仲間に理由を聞かれて先ほどのとの会話を話すとアラタと八雲は盛大な溜息をついた。 「チィちゃん、女の子にそれってマジありえない」 「ふ〜みん。もうちょっとそっち方面もおベンキョした方がいいと思うナリよ?」 2人の意見に天十郎と千聖は同じように同じ角度で首を傾げた。 |
桜風
09.10.1