Sweet × Sweet





大学生って楽なんだな...

はそんなことを思いながら冬空を見上げた。

何せ、2月の前半から『春休み』である。まだ冬だろう、と思いつつも暦の上では春だからもう春休みでいいのかと心の中で訂正をしたりする。

昼間は刺すような寒さがいくらか和らぐものだ。

ショーウィンドウに映る自分の顔をみると鼻の頭が赤い。

「へへ」と少しだけ可笑しくて笑った。

今日は大学のサッカー部が試合をするとのことで応援に行くことにしていたのだ。


大学に入って親しくなった男の子がサッカー部に所属している。

彼との出会いは本当は試験の日の教室だが彼自身それを覚えていないので、であったと認識があるのは入学して数日後で、裏庭が出会った日となる..と思う。

受験日当日に周囲の女の子が囁きあって彼を見ていた。

うん、まあ。背も高いし顔もいいと思う。

この学校にチャレンジするならそこそこの脳みそもお持ちのはず。

自分がそんなことを思っていたのは覚えている。

そして、縁があって試験はお隣さん。

二言三言言葉は交わした。

凄く気さくな人だな、とは思った。



そして、入学して数日後の夕方。

は木に登っていた。

子猫が木に登ってから降りられなくなったらしい。

周囲をキョロキョロと見渡した。

よし、人影は無い。

履き慣れないパンプスを脱いで木にするすると登った。

こう見えて、木登りは得意だ。

「あれ?何やってんだ?」

不意に下から声を掛けられて危うく足を滑らせそうになる。

試験のときお隣の席だった彼、草薙一だった。

今も同じ学部でさらに取っている授業も同じであるが、どうも彼は覚えていないようで、こちらから「試験のとき隣だったね」とか態々声を掛けるのもどうかと思ってそのまま放置していた。

放置していたら、こんなときに声を掛けられた。

「あ、にゃんこかー...」

『にゃんこ』とな?!

見下ろすと思い切り緩んだ表情で見上げる先には、が救出をしようと試みている子猫がいた。

猫好きか...

そのまま気にするのをやめては木登りを続け、彼の表情を緩めている子猫の救出を行った。

さて、どうやって降りようか...

「先、にゃんこ渡してみ」

と草薙が手を伸ばす。

「よろしく」とが手を伸ばして彼にその子猫を渡した。

そして、自分が降りようとしたら、「ほら」と手を伸ばされた。

何だ...?

「ちゃんと受け止めるから飛び降りろよ」

何ですと?!

「だ、大丈夫だから!」

「そうかぁ?」

首を傾げて彼が言う。

全くの親切心のようであるが、非常に恐ろしい。

何とか木を降りてパンプスを履く。

「腕、擦りむいてるぞ」

言われて腕を見る。

さっき危うく足を滑らせそうになったときに手で堪えたからそれが原因だろう。

「ああ、うん。こんなの舐めときゃ治るって」

笑いながら返すと「だな」とこともあろうに草薙が舐めた。

「はいぃぃ〜〜〜〜?!」

「え?だって、舐めときゃ..って!悪い!!」

何だこの天然さん...

「大丈夫、見なかったってことにする!」

そう宣言をすると彼は申し訳なさそうに「ホントごめんな」と重ねて謝ってきた。

悪い人ではないようだ。

そのときのインパクトも手伝ってやっと草薙に自分を認識されたのだ。

ただ、名前はそれから半年は覚えてもらえなかったが...


彼からは高校生活の話を何度か聞いた。

高校生活と言っても全部昨年の、3年のときの話ばかりで、当時の草薙を知らないが彼にとってとても充実した時間だったのだなと思えるほど大切そうな表情をしていた。



試合会場は相手チームのグラウンドだ

!」と手を上げてを見つけた草薙が声を掛けてきた。

も手を振って答える。

「こんにちは」と声を掛けられた。

誰だろう、とおもいつつも「こんにちは」と挨拶を返す。

「私、高校で一君の担任をしていた南と言います」と自己紹介をされて「あ、南先生」と思わずが納得してしまった。

彼女はおや、と不思議そうな表情を浮かべた。

「いえ、あの。草薙君から高校のときの話を聞いたりしてて。そのときの登場人物に高確率で南先生の名前があったので」

と慌てて理由を口にする。

「そう」と嬉しそうに彼女は笑った。


試合が終了すると草薙が駆けてきた。

「おめでとう、一君」と南が声をかける。試合は勝利し、草薙はハットトリックを決めた。

「ありがとう、先生。も、寒いのにありがとな」

と草薙は笑った。

「あと、これ」

そう言って差し出してきたのは、ポッキーだ。2箱持ってきている。

「差し入れでもらったんだ」と嬉しそうに言う草薙だが「それってバレンタインのプレゼントじゃ...」と遠慮がちにが言う。

本日は2月14日だ。

「ん?けど、みんなにあったし。大丈夫だって!」

ホントかなぁ...

『みんな』ってのはカモフラージュのような気がしないでもない。

南を見ると彼女も同じように思っているみたいだが、草薙の表情に負けたようで「ありがとう」と受け取ることにしたようだ。

ならば、とも受け取った。

「一君、ホワイトデーには期待してね!」と南が言うと「え、あ..うん。いや、先生!忙しいだろうしいいって。これ、もらい物だし」と必死に何かを回避しようとしている。

「えーと。じゃあ、わたしは年度明けってことになるけど。何かお礼を持ってくるよ」

が言うと「おう!」と良いお返事をしてしまい、何故彼女が良くて自分はダメなのかと南に詰め寄られて草薙は心底困った表情を見せ、それを見てはクスクスと笑った。









桜風
11.2.14
11.4.24再掲


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