| 都内の有名進学校私立聖帝学園高等部。 その有名進学校に超問題児が6人おり、彼らはB6と呼ばれている。 その6人はべら棒に顔がよく、多くのものが美形と認める容貌だが、頭の方がなんと言うか『残念』だったりもする。その上、性格はそれぞれ一癖も二癖もあるため、惜しいことこの上ない。 そんな聖帝学園の3年は成績のいいほうからA組から始まり、E組まで存在する。そのE組は通称クラスXと呼ばれ、B6はそのクラスに所属している。 仙道清春。 B6のひとりで悪戯好きであるがために、超問題児の中の問題児と教師たちに目されている。まあ、大抵のどの教師も彼らB6は同じレベルで超問題児と目しているのだが... 清春の悪戯はかなりたちが悪い。彼はたちが悪いものを選んで態々仕掛けているのだ。 時々、B6のお母さんこと草薙一が説教しているようだが、清春は聞く気はなく、彼の唯一の苦手人物は同校の数学担当教師の衣笠正二郎だけだった。 が、衣笠も勿論清春につきっきりで見張ることは出来ないため、今日も今日とて清春の仕掛けた悪戯に引っかかる生徒が出ていた。 「んで、何やってンだ?」 木の下でぴょんぴょん跳ねている少女が居た。 清春は自分の張った罠という名の悪戯の成果を確認しに来たのだ。 この木の下には縄を埋めておいた。人がその縄で作った輪の中に足を踏み入れるとその縄が上がって作っていた輪も小さくなり、人の足を捕まえてそのままその人を逆さ吊にする、そう言った類のものだ。 普通は動物を罠にかける猟師が作ったりするものだろうに。 そして、最近清春の罠に惜しい感じで引っかかる子が出てきた。 『』というらしい。 ひと月くらい前に引っ越してきたとか。物凄く珍しい時期に引っ越してきた子だとクラスの女子が言っていたと悟郎が数日前に話していたと思う。 「えーと、あれがね?」 そう言って彼女が指差した先を見た。 清春は絶句する。 本当に微妙な引っかかり方だ。 木にぶら下がっているのは箒だった。 「っンで、箒だけぶら下がってんだよ」 「...さあ?」 何度か自分が悪戯を仕掛けた成果を見に行ったその先で彼女と話すようになったが、どうにも苦手だと思った。 こう..つかみどころがないと言うか... 今年赴任してきた担任の悠里は本当に分かりやすくて素直で、何より、反応が面白い。しかし、このはどうにも反応が微妙だ。 困っているようだけど、そこまで困っていない。 実際、慌てふためくような事態には陥っていないからそれも仕方ないかもしれないが... 清春は溜息をついて罠の仕掛けの元に向かった。 仕掛けの元は巧妙に隠している。 「あ、そこにあったんだ」 ついてきたが言う。 「そォだよ。つか、オメーは何でこうハンパなんだよ」 「...そんなコト言われても」 拗ねるようには呟く。 「おら、もう箒取れンだろう?」 「あ、ホントだ。ありがとう」 全く... 彼女のようにハンパに引っかかれると何となく自分のプライドが傷つく。緻密に計算しつくして悪戯を仕掛けているのに、その計算が狂っているかのごとく『惜しい』成果しかえられない。 彼女以外のものがかかった悪戯は自分の計算どおりだから計算が間違っているわけではないのだと思う。 「ふふふ」と不意に笑い声が聞こえて清春は慌てて振り返った。 「げ!オバケ!!」 清春の天敵、衣笠が立っている。 「仙道君にとってさんは、イレギュラーな子ですね」 見透かされた感じがして清春は顔を顰めた。 元々苦手な人物にそんなことを指摘されたのだ。あまり楽しいことではない。 「もしかしたら彼女は仙道君の天敵なのかもしれませんね。天敵とは少し穏やかではないですね..ライバル、でしょうか?」 「ウッセェ」 苦い顔をしたまま清春はその場を去った。 「あー、南先生が探していましたよ〜」 背後で衣笠がそう言う。 ああ、そういえば補習までには戻る予定だったんだよな... サボったら明日うるさいだろうな、と思って取り敢えず教室に足を向けた。 その日は、職員会議があるから補習の時間をずらしてほしいと悠里が言ったので仕方なく、物凄く恩着せがましく清春は承諾した。 お陰で放課後の時間が少し空き、気が向いて図書室へと足を向けた。図書館に何か仕掛けるのも悪くない。 そんなことを思いながら室内を観察する。 「...と、またかよ」 図書館の自習コーナーにの姿があった。 まあ、まじめそうだからこういうところによく来るんだろうなと清春はなんとなく納得する。今回はどう考えても自分の方がイレギュラーだ。 ふと、興味を覚えての方に足を向けた。 物凄く難しい顔をして何かを見ている。 何だろう、と覗き込んでみた。数学のようだ。 たしか、クラスはCだったか...可もなく不可もなく。学力はど真ん中と言ったところなのだろう。 「ンだよ、こんなのもわかんねぇのか?」 不意に声をかけられて危うく声を上げそうになった。 「仙道君!?」 仙道は彼女の参考書を指差した。その公式を使えと言うことだ。 人に教えられるくらいにはなってたんだな、と毎日放課後の悠里の補習を思い出して何だか可笑しかった。 まあ、元々自分は天才だけど... B6に教えられるなんて屈辱極まりない、と殆どの生徒は思うかもしれない。少なくともクラスメイト以外のものならそう思うと思っている。 しかし、は違った。転入してきてひと月くらいしか経っていないためB6への偏見と言うか噂に触れる機会が少なかったと言うのもその原因のひとつなのかもしれないが、彼女は素直に清春に教えてもらっている。 ふと顔を上げると悠里が言っていた時刻になる。 「オレ様はもう行くぞォ」 椅子に座っていた仙道はそう言って立ち上がった。人に教えることができると言うのは意外と面白いものだ。 相手が物凄く飲み込みが悪かったら自分の性格から言って辛抱強く教えられないだろうが、は飲み込みは悪くなかった。要領はあまりよくないほうだが... その要領の良くない感じが何となく悠里に似ていると思った。 「ありがとう、仙道君」 笑顔で言うの言葉に清春は虚をつかれたらしく目を丸くして暫く固まっていたが、ニッと笑う。 「へっ、どーいたしまして。つか、オレ様に教えてもらえるなんて光栄に思え」 清春の言葉には笑い、「肝に銘じておきます」とおどけたように返した。 |
桜風
09.5.1
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