| 「ねえ、一くん」 「ん?どうした、」 「『I love you』を訳しなさい」 突然、隣を歩くに先生みたいなことを言われた。 一は少し驚いたが「それくらい、オレにだって訳せるぜ」と胸を張り 「『オレはお前を愛している』だろう?」 と自信満々に答えた。 高校時代、成績が超低空飛行だった一だが、今は大学生となっており、学校の勉強だって多少難しいものもあるが、それでもちゃんと単位を落とさずに進級している。 「はずれー」 「なんだよ!」 間違っていないはずだ。これくらいなら高校時代もきっと訳せていたはずなのだ。 むくれる一を宥めたは、夏目漱石の話を始めた。 「夏目漱石って、頑固者だったんだよな?」 「あら、物知りじゃない」 目を丸くしていうを見て一は得意になる。 「そうだ。それでさっきの『I love you』とどう関係があるんだ?」 「そうそう」は話の続きを始めた。 夏目漱石は昔その言葉を「月が綺麗ですね」と訳したそうだ。 よって、は一の訳を聞きたかったとの事。 「何だよ、最初からそう言ってくれたら良いのに」 「ごめんなさい」とは深く頭を下げた。 「んー、そうだな...」 期待されているようだ。よーし、頑張るぞ。 そう思ったが、言葉とは本当に難しいものだ。 特に、自分は口がうまいわけではない。 期待しているは裏切りたくない。 しかし、出てこない。彼女に伝えたい自分の言葉が。 「あのさ、」と一が言うと「なに?」と目を輝かせてが言葉を待つ。 「ごめん、オレの『I love you』はこれ」 そう言ってを抱きしめた。 「答えになっていないよ?」 ふふふ、と少し嬉しそうに笑いながらが指摘する。 「行動が一番だろ?犬っころもにゃんこも言葉が話せないけど、あいつらが何を考えているのかわかるし。 あ、オレはアニマル語が分かるからあいつらが何を言ってるのかちゃんと聞いてやれるけど、オレ以外の殆どの人はそう言うのできないんだろう?」 いや、まあ...そうなのだが... 「ということは、わたしは犬とか猫とかと同レベル?」 抱きしめている一は、の不機嫌に気付けた。 やっぱり行動って重要... 「そうじゃなくて、行動が一番。好きならちゃんと好きって行動を示さないと。今みたいに言葉は誤解を生むけど、行動はそうじゃないだろう?」 どうだろう、まだ怒ってるかな... 少しドキドキしながら体を離す。 「一くんは、ずるいよね」 肩を竦めて言うの表情を見れば、もう怒っていないようで安心した。 「愛してる」 「あら、言葉は誤解を生むんじゃないの?」 「これなら大丈夫だろう?誤解のしようがない」 そう言った一に「そうね」とは微笑んだ。 |
桜風
11.5.1