Beautiful days ‐ランチパーティ 1‐





ドアがそっと開く。

布団の隙間から見える壁掛け時計を見れば、9時過ぎ。

休日の朝、9時過ぎはまだ寝ていても罪にはならない。

トタトタと軽い足音をさせて近付いてくる獲物。

「おとうさーん!」

ドン、どダイブしてきた娘の綺羅を捕獲した。

「捕まえたぞー!」

「きゃー!」と綺羅はジタバタと喜んで暴れる。

「おかあさーん!綺羅捕まっちゃったー!!」

キッチンに居るであろうに訴える。

「あら、綺羅。大変じゃない!...おはようございます、一樹さん」

少ししてエプロンを着けて寝室に顔を覗かせたは苦笑してそういった。

の足元には恒が居て、彼女のエプロンをキュッと掴んでいる。

、恒。ちょっとこっち来い」

名前を呼びながら手招きをする。

「何ですか?」

がベッドの傍にやってきて恒も俺のベッドによじ登ってきた。

「ははー!全員捕獲!!」

と恒も俺の腕の中に閉じ込めた。

「ちょ!一樹さん!!」

「おとうさん、いたいよ」

「あははははー!」

三者三様の反応。

あー、幸せだなぁ...

「そういや、恒。どうした、泣いてたのか?」

鼻の頭が赤い。

「そうなの。おかあさんがね、今日のプラネットマンのあらすじ先に言っちゃうんだもん」

綺羅が笑いながらそう言う。

「おい、...」

「だってぇ...」

『プラネットマン』というのは、日曜朝の特撮番組で、恒が毎週楽しみにしている。

ただ、このプラネットマンの毎回のストーリーは曰く、星座にまつわる神話の流れをパクっているため、星月学園神話科卒業生としては、黙っていられないそうだ。

しかし、うっかり神話のあらすじを言ってしまうと、その日の番組のネタバレをしてしまうようなものだとか。

だから、なるべく番組を見ないようにしているのだが、今日はうっかり見てしまったのだろう。

「よし、恒。2人で不貞寝しよう!」

そう言って恒を抱え込むと「やだー」と逃げられた。

「一樹さん、振られちゃいましたね」

が笑いながら言う。

「いいんだよ。俺はに振られなきゃ」

そう言うとは言葉に詰まって少し赤くなる。いまだにこういう反応を見せてくれるは本当に可愛い。

「ラブラブー!」と綺羅がからかうものだから、調子に乗っての頬にキスをしたら恒が俺の体を押す。

「ははーっ!は俺のもんだ」

「ちがうもん!!」

「...一樹さん、大人気ないです。相変わらず」

が半眼になってそう言い、ベッドを降りた。

「着替えて10分以内にリビングに集合!」

中学の国語教師をしているは、生徒に言い聞かせるように俺にそう言って綺羅と恒を連れて寝室を出て行った。


ひとりになった部屋には時計の秒針の音がして、少し離れたところから家族の声が聞こえる。

二度寝したい衝動を抑えて起きることにした。

今日は、月子の家で昼食をご馳走になる。

颯斗や翼が帰国する連絡を入れてくると、ウチか月子のところで食事をすることになっている。

特に決めたわけではなく、何となくそうなった。

月子も結婚し、先日新居を構えた。子供は娘がひとり。ウチの綺羅よりひとつ上のお姉さんで、今年小学校に入学する。

月子の旦那はおっとりした人で、ただ、心配性なのか、今から娘が嫁に行くことを心配している。

あと10年以上はあるだろうに...

颯斗と翼はまだ結婚していないが、そう遠くない未来に結婚するだろう。これは星詠みの力とかそう言うのではなく、純粋な勘だ。

けど、不思議だな、と思う。

高校時代、こんな未来は想像していなかった。

理想としては描いていた。そして、今それが現実になっている。

それは間違いなく、物凄い奇跡だ。

「一樹さん?」

ノックをして顔を覗かせてきたのは

「何だ、。俺が恋しくなって戻ってきたのか?」

「二度寝してないか監視をしに」

イタズラっぽく笑ってが言う。

「子供達は?」

「先にご飯食べさせてます」

「あ、待っててくれたのか...」

急いで着替える。

寝巻きを脱いでいる間にが服を出してくれた。

「お父さんと一緒に食べたいって我慢してたんですけどね」

「悪いことしたな...」

着替え終わって、眼鏡をかけようとサイドボードの上のそれに手を伸ばした。

「一樹さん、忘れ物ですよ」

の声に振り返ると頬に柔らかな唇を当てられた。

「おはようございます」

「お前...」

脱力して膝を折り、を見上げた。

「たまに大胆だよな...」

「刺激的でしょ?」

にこりと微笑んでが言い、

「おはよう」

と俺もキスを返した。

「けど、子供達の前でキスとか禁止ですからね」

「ほっぺもか?」

「ほっぺもです。恒が泣きます。さっき、泣きそうだったでしょ?」

の言葉に苦笑した。

「あいつはが大好きだからなー」

「お父さん似ですね」

が笑う。

「じゃあ綺羅は..俺を好きなのか?」

「好きでしょう。わたしの娘ですから、一樹さんを好きに決まってます」

真顔で返された。

「なあ、

「はい?」

「今更俺を口説いてどうするつもりだ?」

俺の問いには少し考えて「秘密です」と可愛らしく笑った。

と一緒に二度寝したい」

「つっこちゃんの家に行くからだめです」

「じゃあ、今晩寝かせない」

「ダメです。明日出勤です。というか、一樹さんは此処最近忙しそうなので、夜くらいしっかり寝てください。心配ですよ」

本当に心配してくれているのが伝わってくる。

「一樹さん?」

「なあ、。俺、幸せなんだ」

俺の言葉には驚いたように眉を上げる。

「あら、残念。わたしの方がもっと幸せです」

そう言って猫のように笑った。

「おかあさーん!」

綺羅の声に「はーい」とが返事をする。

「行きましょう」

俺の手を取ってが歩き始める。

「子供の前で手を繋ぐのはいいのか?」

「んー、反応を見てから考えます」

笑ってはそう返し、俺の手を引きながらリビングに向かった。







桜風
12/03/17
15.2.6(再掲)


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