Beautiful days ‐ランチパーティ 2‐





「あ、おかあさんとおとうさんラブラブ」

リビングに手を繋いだまま姿を見せると目ざとく綺羅がそれを見てからかう。

「ダメ!」

そう言って椅子から飛び降りた恒が俺とが繋いでいる手を離した。

「ダメだそうです」

「いや、何でもかんでも子供の要望にただ応えるのは良くないと俺は思う」

真顔で返すとは噴出した。

「ほら、恒。ご飯の途中に椅子から立ち上がったらお行儀が悪いでしょ」

そう言って恒を抱えていつもの、アイツの席に座らせた。の隣だ。

「一樹さんは、まずは顔を洗ってきてください」

「へいへい」

そう返事をして洗面所に向かった。

髭は..後でいいか。

腹の虫も鳴っていることだし、先に食事を済ませて落ち着いて身だしなみを整えよう。

顔を洗ってリビングに戻ると、俺の席の前には朝食が並んでいた。

「今日も美味そうだ」

「美味しかったよ。ご馳走様」

俺の言葉に綺羅がそう返して食器を片付ける。

「ちゃんとよく噛んで食べたか?」

「一口30回噛んで食べたよ」

そう言って少しバランスを崩しながら何とか食器を流しに持っていった。

「いただきます」と手を合わせて箸を持つと、綺羅が戻ってきて、俺の隣に座った。

「今日のお味噌汁凄く美味しかったよ」

「綺羅、お前どうしてそんなに行儀が良いんだ?」

「琥雪おばちゃんと、夏凛お姉ちゃんが厳しいから」

そう言って綺羅が笑う。

この年で、一体どれだけの子供が自分が食べ終わった食器を流しに持って行くというのだろうか。

綺羅は本当に凄い子供だと思う。

ただ、この話をにしたら、「親ばかですね」と笑われた。

親ばかで何が悪い。

恒を見ると、零さないように食事をしている。結果、随分零れているが、頑張っているのがわかるから、だって何も言わない。

「今日、月子の家に何時だっけ?」

「11時ごろにお邪魔するって連絡はしてますよ」

「翼は?」

「今回は颯斗くんだけですって。ああ、ても『だけ』じゃないかもしれないらしいですけど」

『だけじゃない』?

「誰か連れてくるのか?」

「みたいです。あ、外国語苦手なので、そっちは一樹さんに任せますね」

が言う。

「つっても、俺だって留学してからもう10年か...それくらい経つから言葉なんてとっくに忘れてるぞ?」

「お父さん、りゅうがくしてたの?外国で暮らしてたの??」

綺羅が弾んだ声を出した。

「ああ、1年未満だけどな。大学1・2年のときに」

「すごーい!おとうさんすごーい!!」

目を輝かせて綺羅が言う。

「お母さんは?」

水を向けられては苦笑した。

「留学はしてないよ。初めての海外旅行は、留学中の一樹さんに会いに行ったなぁ...高校卒業してすぐにね」

懐かしいな、と当時を思い出す。

突然やってきたに俺は心底慌てたもんだ。

を見ると同じように当時を思い出していたのか、俺と目が合うとクスリと笑う。

「ごちそうさまでした」

の隣で黙々と食事をしていた恒が先割れスプーンをテーブルにおいて手を合わせていた。

零れた味噌汁やご飯、色々と散らしたらしいおかずの数々で汚れたテーブル。

けど、お椀の中は綺麗になっていて、残さず食べたらしい。

「お、恒。残さず食べたのか。偉いな」

そう褒めると嬉しそうに恒は頷いて「おいしかった」と言う。

が恒の口元や手を拭いてやり、「はい、いいよ」と言うと恒は椅子から降りた。

11時に月子の家だと、10時半には家を出なくてはならない。

綺羅が起こしに来た時間が確かにリミットだったな...


食事を済ませて出かける用意をする。

「それ、何だ?」

が持っている保冷バッグを見て聞いてみると

「ゼリーです。食後のデザートに作っておいたんですよ」

と笑う。

月子の家で用意されているかもしれないが、ゼリーならそんなに重いものじゃないからいいか。

月子も、ウチで食事をするときには何かしら持って来ているし、問題ないんだろうな。

子供が小さいから大抵車で移動するけど、今日は電車だ。

「夜久さん、今日は居るのか?」

「居るって聞いてますよ」

月子は結婚した後も『夜久月子』だ。嫁に行ったのではなく、婿を貰ったのだ。

元々、あいつは一人っ子だったし、旦那は三男だから、あちらの親が全く頓着しなかったらしい。

「菜月ちゃん、元気かな」

声を弾ませて綺羅が見上げてきた。

「どうだろうな」

『菜月ちゃん』とは、月子の娘の名前で綺羅ととても仲が良い。ウチは2人姉弟だが、あっちは一人っ子だから綺羅は妹のように思えているのかもしれない。

俺も一人っ子だからそういう感覚は分からなくもない。

月子の家の最寄り駅で電車を降りて子供達の歩調に合わせてゆっくり歩く。

月子の家が見えた途端、綺羅が駆け出した。

「周りをよく見て!!」

が慌ててそう声を掛けた。

住宅街とはいえ、休みの日は車の往来はそれなりにある。

「はーい!」

綺羅は元気よくそう返事をして月子の家に向かって一直線に向かっていった。









桜風
12/03/25

15.2.13(再掲)


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