| 少しして夜久さんが戻ってきた。 一樹さんに早速捕まって色々話をしている。 「ちゃん、家を建てるの?」 「一樹さんが一国一城の主になりたいって。綺羅が小学校に上がるまでに建てたいなって。引っ越すにしても小学校に上がるときがキリがいいでしょ?ごめんね、休みの日に仕事関係の話を聞いて」 つっこちゃんはなるほど、と呟く。 つっこちゃんの旦那さんは、建築士で設計ができる。その関係の会社も経営されていて、だから一樹さんは色々と今の建築事情を聞きたいようだ。 「けど、ウチも一樹会長にお世話になってるからそれこそお互い様よ」 夜久さんも法律の解釈を時々一樹さんに聞いているのだ。 弁護士としての仕事ならお金を貰わなくてはならないけど、友達として雑談の一種で話をしているので、根拠とかしっかりしていないけど、ということを念押しして話をしているらしい。 颯斗くんのフィアンセは料理が苦手だと言っていた。 つっこちゃんは親近感を覚えたらしくて、彼女の手伝いが楽しいようだ。 「さんは、お上手ですね」 「いい子でいなきゃいけなかったからね」 そう言って笑うに彼女は反応に困っていた。 そろそろ食事の支度が終わると言う頃に、火が点いたような泣き声が家の中に響いた。 恒だ。 今、つっこちゃんが録画していてくれたテレビを颯斗くんと見ていたはずなのに... 「これまた賑やかな...」 思わず呟くとつっこちゃんが慌てる。 「ど、どうしたのかな?」 「颯斗くんが居るから大丈夫でしょう」 わたしがそう答えている間に恒が駆けてきた。大べそをかきながら足元にしがみつく。 「あ、あの。さん...」 心底困ったような表情で恒を追いかけてきた颯斗くんが声を駆けてきた。 「どうしたの?」 「さっきまで一緒に、今シーズンの特撮戦隊をみていたんですけど...アルタイルって敵が出てきて」 「あ、もしかしてうっかり神話を語っちゃった?」 そう聞くと颯斗くんはコクリと頷いた。 「そうだよね!やっぱり星月学園神話科卒業生としてはうっかり神話を口にしちゃうよね。それがこの先の展開のネタバレになることでも」 嬉しくてそう言うと「えー、と...」と颯斗くんが困っている。 「何だ、颯斗も恒を泣かしたのか。今日は、神話科卒業生に泣かされてばっかりだな」 様子を見に来た一樹さんが笑いながら言う。 「さん?」 「今日の放送分で、わたしがやっちゃったの」 肩を竦めて言うと颯斗くんは気の毒そうに恒を見る。 「恒君、ごめんなさい」 「や!」 そう言って首をブンブンと横に振る。 「よっし、恒。とーちゃんと一緒に続きを見るぞ。プラネットマンは大活躍かな?それとも、やられちゃうのかな??」 そう言ってわたしにしがみついている恒をひょいと抱えてキッチンを後にした。 「はぁ...」 沈んだ様子で溜息を吐く颯斗くんに思わず苦笑。 「驚いた?」 「ええ、驚いたのは勿論なのですが、恒君に『や!』って言われたのが結構堪えました」 「一樹さん、しょっちゅう言われてるよ」 笑うと颯斗くんは驚いたように目を丸くする。 「本当ですか?」 「うん。でも、まあ。一樹さんはそれが楽しいみたいだから」 そう言うと颯斗くんは「そうですか」と相槌を打つ。 「菜月、綺羅ちゃん。そろそろご飯だからお手伝いしてー!」 子供部屋に引き籠もった綺羅たちにつっこちゃんが階段下から声を掛ける。 「はーい」という返事が聞こえた。 「ねえ、颯斗くんは聴いた音楽をすぐにピアノ演奏できる?」 「簡単な曲なら」 お皿を出しながら颯斗くんが言う。 「だったら、プラネットマンのオープニングは?」 「そのつもりで聞いていないので今はサビの部分しか思い出せないのですが、おそらく聞けば弾けますよ」 「なら、弾いてごらん。恒はそれだけですぐにご機嫌になると思うよ」 「それだけで、良いんですか?」 きょとんと颯斗くんが言う。 「それって、相当凄いことだよ」 つっこちゃんが呆れながら言った。 「だよね」とわたしも頷く。 「わかりました。ありがとうございます、さん」 賑やかに階段を下りる足音が2つ近付いてきた。 |
桜風
12/04/11
15.2.27(再掲)
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