Beautiful days ‐ランチパーティ 6‐





颯斗くんが耳コピでプラネットマンのオープニングを弾きはじめると、恒は颯斗くんの傍でその曲を聞きながら大声で歌い始める。

「あー、やっぱの子だなぁ」

「何言ってるんですか、一樹さんもそんなに上手じゃないでしょ?」

やはり音を外しているわが子の歌声を聞きながらお互いにそういった。

「ね、お母さん」

「んー?」

恒のワンマンステージをソファに座って見ていると、綺羅がポンポンとわたしの腿を叩く。

「あのね、綺羅も菜月ちゃんみたいな机買ってもらえるんだよね。ランドセルも」

「来年1年生だからね。あ、でも、買ってもらえるかどうかは一樹さんに聞いてみないとわかんないなー」

わざとらしくそう言うと、綺羅は隣に座っている一樹さんをみた。

「よしよし、買ってやる。とーちゃんが買ってやるぞ」

うんうんと頷きながら一樹さんが言う。

「ホント?あのね、菜月ちゃんとお揃いがいい」

「学習机は大きくなっても使えるから、できればシンプルなのが良いと思うんだけど...」

思わず本音を呟く。

「その点は、バッチリよ」

こそっとつっこちゃんが声をかけてきた。

やはり考えることは同じようで、顔を見合わせてクスクスと笑う。


夕方になり、つっこちゃんの家をお暇する。

「また遊びに来てね」

菜月ちゃんがそういい、

「うん」

と綺羅が頷く。

つっこちゃん曰く、菜月ちゃんは一人っ子だから綺羅と一緒に遊ぶと妹が出来たようで嬉しいらしい。

「私も一人っ子だったけど、錫也と哉太がいたからね」

とつっこちゃんは笑う。

一人っ子だが、兄弟がいたような感じだったらしい。

たしかに、東月くんに至っては大学まで一緒だったのだから、ずっと兄弟が一緒にいたような感覚で寂しくなかったのだろう。

大はしゃぎだった恒は帰りの電車の中で舟をこいでいた。

電車を降りて一樹さんが恒を抱える。

「重くなったなー」

しみじみと一樹さんが呟いた。

「大きくなったもの」

「綺羅も大きいよ!」

対抗心を燃やして綺羅が言う。

「おー、そうだな。をあっという間に追い越しそうだな」

「まだまだ負けません!」

一樹さんの言葉に思わずムキになって返すと、綺羅と一樹さんが声を上げて笑う。

その笑い声に釣られたように、寝ているはずの恒も笑いはじめた。

それには一樹さんも驚いたようで「おい、恒?」と思わず声をかけている。

「寝たまま笑ったぞ」

「よく笑ってますよ、恒は」

昼寝をしていても笑っているときがある。

何の夢を見ているのだろうか、といつも思っていた。

「恒、いつも楽しい夢見てるんだろうね」

綺羅が目を細めて言う。

『お姉ちゃん』の貌だ。

「綺羅も時々笑いながら寝てるのよ」

そう声をかけると

「え、ホント?!恥ずかしいよー」

と笑う。


「月子も言ってたけど、確かに兄弟がいないと寂しいもんだな」

夜、子供達が寝た後、少しだけ一樹さんの晩酌に付き合う。

と、いってもわたしは飲めないので、同席するだけなのだが...

「そうなんですか?」

「ああ。のところが、きょうだいの仲が良いと言うこともあるんだろうし、星月先生のところだって」

「あれ、琥太にぃは随分と辟易してるみたいですけどね」

わたしが言うと、「かもな」と一樹さんが笑う。

琥太にぃは春お姉ちゃんに構われるのが好きじゃないみたい。お兄ちゃんもお姉ちゃんに構われるのは好きじゃないようだけど、それはお姉ちゃんの諸々の表現が激しいからであって、普通の、攻撃的ではないお姉ちゃんなら気にしそうにないと思う。

一樹さんに言うと笑われた。

「けど、あれが夏凛さんの愛情表現だからなー」

「そういえば、一樹さんは従兄妹もいないんですよね」

「そう。だから、綺羅や恒が羨ましいぞ」

お姉ちゃんとお兄ちゃんにも子供がいて、綺羅たちのいとこは凄く面倒見がいい。

「そういえば、晴秋さんのところの。星詠みの力があるかもしれないそうだな」

「子供は単に勘が良かったりしますからね。お姉ちゃんが笑い飛ばしてましたよ?」

「相変わらずだなぁ」と一樹さんは笑う。そして、ふと真顔になった。

「綺羅や、恒にその力がでたらどうする?ウチは、家系だぞ?」

「一樹さんがいます」

わたしが返す。

一樹さんは少し驚いたような表情を浮かべて、苦笑した。

「知らないから怖いんですよ。知っていると、怖い気持ちは減っちゃうんじゃないんですか?」

「そう、かもな...そうか。俺がいるか」

一樹さんはそう呟いてグラスを空けた。

「さ、そろそろ俺達も寝るか」

「一樹さんは最近忙しそうなので、ぐっすり寝てください」

「んじゃ、今夜はを抱き枕だ」

そう言って一樹さんはニッと笑う。

一瞬言葉に詰まってしまったけど、

「いいですよ。一樹さんの疲れが取れるなら、わたしは大人しく一樹さんの抱き枕になります」

と返す。

「ははは。まだ夜は寒いし、を抱きしめてたらいい夢が見られそうだ」

「笑いながら眠れちゃうかもしれませんよ?」

「そりゃ、幸せなことだ」

そういった一樹さんにキスをされた。少しお酒の匂いがした。









桜風
12/05/03
15.3.13(再掲)


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