Diamond ring 2





 一樹から再び電話があったときには、はやはり興奮気味だった。

どうしたのだろう、と一樹は首を傾げる。

「一樹さん!」

『どうした?俺、電話するって言ってから切ったよな?』

また電話が嬉しくて声が弾んでいるのかと思ったが、そうではないと彼女が言う。

「さっきの、琥太にぃだったんですけど。お姉ちゃんとお兄ちゃんからの荷物が届いたって」

『ああ、誕生日か?』

自分もその用事で電話をしているのだが...

「はい!あの、ドレスあります!」

『さっき、ないって言ってなかったか?』

「お姉ちゃんからドレス風のワンピースが贈られてきたんです。お兄ちゃんからは、靴とバッグ。揃いました!」

...怖い。

本気であの姉兄の勘と言うか、読みが怖くなってくる。

しかし、問題をひとつクリアした。

「あの、ドレス風ワンピースで大丈夫ですか?」

『ああ、大丈夫だ。じゃあ、今度の土曜、それを着て出てこれるな?』

「はい!...で、あの。何処に行けば良いんですか?」

の疑問は尤もだ。

『街まで出て、バス停を降りたところで待っていてくれ。時間は...』

一樹の口にした時間は少し遅い。これは外泊届けの方が良いとは思った。

そのことを一樹に話をし「星月の家に連絡しておきます」と言うと『そうだな、そのほうが良いかもな』と言われた。



そして、約束のデートの日。

髪をどうしようかと悩んだ挙句に月子に相談すると彼女は楽しげにアレンジしてくれた。

「やっぱり上げた方が可愛いよ」

「ごめんね、手間かけちゃって」

が謝ると「いいよ」と月子が微笑む。

「こんなに可愛くおめかししたちゃんを見た一樹会長、ビックリするだろうなー」

ふふふ、と笑いながら月子が言う。

「いつものほうが良いのかな?」

「ダメダメ。久しぶりに会うんだし、相手は大学生で大人だからね。ちょっと背伸びしたくらいが丁度いいよ、きっと」

そうかな、と思いながらも鏡の中の自分がいつもの自分と違って見えて落ち着かない。

「これ、本当に大丈夫かな?」

「大丈夫!私を信じてよ!!」

自信満々にそういわれると信じるしかない。

しかし、慣れていないには不安がまだ胸に残る。

「琥太にぃに見てもらおうか...」

「ダメ!」

珍しく強く言われた。

「な、何で?」

「だって、ちゃんは一樹会長のために可愛くなってるのに、態々別の男の人に見せるなんて...!絶対に大丈夫!!」

両手で拳をグッと握って月子が太鼓判を押してくれたものだからは頷いた。

よし、可笑しかったら笑われてしまおう。


外泊届けは前日に出しているし、星月のおばさんに連絡も入れているので全く問題はないはず。

「じゃ、行ってきます!」

月子に敬礼を向けては寮を後にした。

「いいなぁ、ちゃん」

幸せいっぱいな彼女を見ていて月子は知らず呟いていた。

「私も素敵な恋がしたいなぁ...」

幼馴染達が聞いたら泣いてしまいそうな一言である。



バスに揺られて街まで出た。

そのままバス停で待ち合わせだからじっと立っているとクラクションが聞こえた。

顔を向けると「!」と名前を呼ばれた。

「一樹さん?!」

車を運転しているのは一樹だった。

「ど、どうしたんですか?!」

「良いから、早く乗ってくれ」

そう言って助手席のドアを開ける。

「お邪魔します」

確かに、バス停とはいえ車を止めたまま悠長に話をするのは拙いだろうと思っては素直に一樹の運転する車に乗った。

滑るように車が走り出す。

間違いなく、一樹が運転している。

「一樹さん、免許とってたんですか?」

「春休みを利用してな。超特急だぞ」

笑いながら一樹が言う。

凄い、どんどん一樹が大人になってしまう。置いてけぼりになってしまう。

「どうした、

「いいえ!」

慌てては首を横に振る。

「...綺麗だぞ」

ぽつりと一樹が呟く。

「あ、ワンピース」

「じゃなくて。が、だ。服も可愛いけど、あっての服だろう?」

不意にそんなことを言われてはあたふたと慌てた。

さすがだ、と一樹は心の中で呟いた。のことを知り尽くした夏凛が選んだだけあって、のために作られたのではないかというほど似合っている。

それにあわせるべき靴とバッグまで完璧だ。

「あ、そうだ。あの、お兄ちゃんのプレゼントの中に一樹さんへの手紙が入ってたんです」

「手紙?」

やな予感だ...

「あとで読ませてもらうよ」

「はい」

差し出された一樹の手に兄からの手紙を置く。

「ところで、何処に行くんですか?」

「もうちょっと、秘密だ」

一樹のこの表情はしばしば見たことがある。

何か企んでいるときの表情。

はワクワクしながら流れる風景を眺めていた。









桜風
13.6.21


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