Diamond ring 3





 駐車場に着いて車を停める。

「すまない、ちょっと歩くことになる」

「はい」

頷いては車を降りた。

随分と空が赤い。

「今日はよく星が見えますよ」

空を見上げてが言った。

「ああ、本当だな。雲が少ない」

そう言って一樹は一度咳払いをした。

「さあ、。行こうか」

「何処に行くんですか?」

首を傾げてが言う。

「あそこに船が見えるだろう?あそこに行く」

驚いたは一樹を見上げた。

の誕生日を祝うんだ。せっかくだから、って思ってさ。ディナークルーズってやつだ」

「一樹さんのお誕生日のお祝い...」

「だから、丁度良いだろう?誕生日が近くてよかったな」

「でも、わたしは何もしてません」

訴えるに一樹は苦笑を漏らす。

「こうやって、俺のためにたくさんお洒落してくれた。充分だ。それとも、俺のためじゃなかったのか?」

「一樹さんのためです!けど、変じゃないですか?」

不安そうに見上げるに一樹は腰を屈めてキスをした。

「さっき言っただろう?綺麗だよ」

恥ずかしくて俯いたに「けど、失敗したなとも思う」と一樹が零す。

見上げたの目にはとても困った表情の一樹が映る。

「こんなに、可愛くて綺麗なを他の男にも見せなくちゃいけない。俺のためのお洒落なのに、な?」

「一樹さんも、カッコイイです...」

ポツリと呟くに一樹は心の底から困った。

どこかに閉じ込めてしまいたい。誰の目にも触れないところに。

「さ、行こうか。お手をどうぞ?」

少しだけおどけて一樹が手を差し出す。

そっと重ねたの手を握ってゆっくりと歩き出す。


船に乗ってまずはディナーを、と一樹が言うので食堂に向かった。

煌びやかな船内の様子には少し怯んでしまう。

しかし、「大丈夫だ」と一樹が言うと本当に大丈夫な気がして背筋を伸ばした。

席に案内されて食事を楽しむ。

「なあ、。それ、パールか?」

ネックレスを目にしたときに品があるな、と思っていたのだ。

「はい。昔姉が母から貰ったものらしいのですが、進級祝いにってわたしにくれたんです」

「へえ、お袋さんが...」

そういえば、と昨年のクリスマスに聞いた事を思い出した。

彼女は両親との思い出の品は親戚にガラクタ然として捨てられたと言っていた。

だから、彼女は両親の思い出の品を持っていないとか。

「良かったな」

「はい」

満面の笑みのに一樹も笑みを零す。

それと同時に、敵わないな、と。

そういえば、あの人を倒さなきゃいけないんだったっけか?

困ったな、と一樹は悩む。

とりあえず、と付き合っていることを報告した方が良いんだろうなとか思っていると「一樹さん?」とに声をかけられて思考の世界から引き戻された。

「ああ、なんだ?」

「今日の車、どうしたんですか?」

「家のを借りた。さすがに自分のを持つには早いだろう?」

働いてもいないのに、と一樹が言う。

「そっか。あの、大学生の生活ってどんなのですか?」

に聞かれるままに一樹は此処最近の生活を話す。

実家から大学に通うには少し遠いのだが、後々留学することを考えたら部屋を借りるのは勿体無く、そのため、車の免許を取ったのだと言う。

「車だったら結構便利が良いからな」

「そうなんですか。留学の準備はどうですか?」

「向こうの学校が9月からだから、夏以降になるな。一応、1年から行けるって言われてる。ただし、試験があるんだけどな」

そうか、じゃあ。邪魔をしないようにしなくては...

が心の中でそう決心していると

「けど、。電話とかメールとか。勿論デートとか大歓迎だからな」

「え?」

「邪魔しちゃいけない、とか思ったんじゃないのか?あのなぁ、お前が我慢できても、俺がもたない。今回だってひと月全く声が聞けてなかったから本当に辛かったんだぞ」

「あの、でも。大学生になったら忙しいかなって...」

「まあ、確かにちょっと生活に慣れるのに戸惑ってはいたけど。俺はどんなに忙しくてもに触れたいし、勿論キスをしたい。せめて、声は聞きたい」

「ごめんなさい...」

「いや、俺も連絡を入れなかったんだからお相子だ。だから、この先は遠慮だけはしないでくれ。俺の声が聞きたかったら何時でも良い。夜中でも電話して良いからな。さすがに、授業中は出れないけど、そのときは折り返して電話する。勿論、俺もお前に電話させてくれ」

「はい」と頷いたは幸せそうで、蕩けそうな笑顔だ。

あー。ホント、失敗した...何ではこんなに可愛いんだ?

心の底から後悔しつつ一樹は彼女に笑顔を向けた。









桜風
13.6.28


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