| 食事を終えてデッキへと向かう。 日はとっくに沈んで空には星が瞬いていた。 「わぁ」と嬉しそうに声を漏らしたは空を見上げながら歩く。 「おい、上ばっか見てると...!」 注意をしようとしたその矢先、がつんのめった。 慌てて手を伸ばした一樹は何とか彼女を支えることが出来た。 「船の上って案外段差もあるんだから、歩くときは前を見て歩けって」 そういわれてはしょんぼりと「はい」と返事をした。 「ほら、行こうぜ」 の手を握ったまま一樹が促す。 これなら、自分も安心だし。 デッキには数組のカップルなどの先客がいた。 改めて空を見上げる。 「空が広いですね」 「海の上だからなぁ...」 ただ、街が近いから空自体は少し明るいので見える星が少なく感じる。 「やっぱ、星月学園の方が星の観測に向いていますね」 も同じような感想を抱いたらしい。ポツリとそう呟いた。 「そうだな...ああ、スピカだ」 「あ、本当ですね。けど、見る場所が違うと同じ星空でも違って見えますね」 「そうだなー...なあ、。ちょっと寒いだろう」 やはり、4月の夜はまだ冷える。 「大丈夫です」 「良いからこれ着てろ。俺が心配だ」 遠慮するに、半ば無理やり自分のジャケットを掛ける。 「一樹さんは寒くないんですか?」 「俺は、こうする。ははっ、正月のときみたいだな」 後ろから抱きすくめる一樹に言われて思い出す。 両親が亡くなった夢を見たと言うのに、一樹の傍だと安心して眠ることが出来た。 がそのときの話をすると一樹は困ったように笑った。 「ダメですか?」 「んー、ダメじゃないけどな。安心してもらえるのは凄く嬉しいけど、やっぱり、多少は危機感を持ってもらいたいと言うか...」 どういうことだろう... 首を傾げるに一樹はそっと溜息を吐く。 「」 名前を呼ばれて振り仰ぐとキスされた。今日のいちばん長いキスだ。 ようやく唇が離れ、が少し睨むように一樹を見上げた。その視線は人前でなんと言うことを、という抗議の意味を孕んでいる。 「危機感ってこういうことだよ」 「どういうことですか」 公衆の面前でキスをするということだろうか。 「俺も男だから、あまりが可愛いとうっかり襲っちまうこともあるかもしれないってことだよ。今日は、ホント大変なんだぞ」 そこまで言われては固まった。 「ああ、これ以上しないから。約束する」 覗うようにが見上げると一樹は心底困ったような表情を浮かべている。 「けど、。お前があんまり可愛いと俺も我慢するのが大変だから、自重してくれ」 『自重してくれ』と言われても自分は何もしていない。 「えーと、はい」 とりあえず頷いた。 船が着岸してクルージングが終わった。 船を降り、駐車場へと向かう。 「先に乗っておいてください。星月のおばさんに電話しなきゃ」 車が見えたところでが言う。 「が乗ってろ。電話が終わったら声をかけてくれ」 そう言いながら一樹は助手席のドアを開けた。 「あの、でも。一樹さん寒くないですか?」 「大丈夫だ。を外に一人置いて置けるほど俺は豪胆じゃない」 どういう意味だろう... 「あんまり可愛いから他の誰かに攫われないか心配なんだよ」 「一樹さん、久しぶりに会ったら凄く..恥ずかしいことばかり言いますね」 「仕方ないだろう。が可愛いのが悪い」 しれっと返されては居た堪れなくなり、「じゃあ、お言葉に甘えます」と言って車に乗った。 その時間を利用して一樹はから受け取った晴秋からの手紙を読んだ。 今回のプレゼントの発起人はどうやら夏凛だったらしい。 あと、夏凛の連絡先が書かれていた。 『姉ちゃんの許可取って書いてるから。ちゃんと連絡して、倒せよー』 要約すればそんな感じだ。 一樹は盛大に溜息を吐いた。 「あの、一樹さん」 車のドアを少し開けたが声をかけてきた。 「どうした、電話は終わったか?」 「はい」というの返事を聞いて一樹は車に乗り込んだ。 |
桜風
13.7.5
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