Diamond ring 6






 コーヒーを和やかに飲んでいると「ところで、」と琥雪が言う。

「一樹君も泊まっていっちゃいなさい」

思わず咽る一樹の隣でも咽た。

「あらあら。大丈夫?」

首を傾げて言う琥雪に「だ、大丈夫です」とかろうじて答えたのは一樹で、はそれどころではない。

「おばさん?!」

やっと声を出せが聞き返した。

「良いじゃない。男の子って結構そういうの煩く言われないのよ。ねえ?」

確かに言われないが、何だ、この展開。

「おばさん、一樹さんに迷惑です」

「あら、ご迷惑?」

ここで「はい」といえる勇者ではない。

「いいえ...」

「おばさん!」

が声を上げて非難するが、琥雪はどこ吹く風だ。

「ちょっと、家に電話してきます」

そう言って席を外した一樹を心配そうにが見送る。


一樹はすぐに戻ってきて「ご厄介になります」と言う。

「そこなくっちゃ!」と琥雪が嬉しそうに頷き、

「とりあえず。ちゃん、お風呂入ってきちゃいなさい」

に声をかける。

「けど、お客様...」

そう言って一樹を見上げる。

「だって、一樹君の着替えとか色々と準備しなきゃ」

そう言って琥雪はパタパタとリビングを出て行った。

「あの、一樹さん」

「ん?」

「ご迷惑..でしたよね」

覗うようにが見上げると一樹は苦笑した。

「厄介になるのは、俺だぞ?琥雪さんにご迷惑をかけないようにしなきゃな」

そう言っての頭にぽんぽんと手を載せ、

「琥雪さんが言ったように風呂に入って来い。今晩はちょっと冷えたからな」

と言う。

一樹に言われては素直に頷き、「すぐに出てきます」と言ってリビングを後にした。

「一樹君のほうが体格は良いけど、琥太郎君と同じくらいの背の高さだからスウェットならきつくないと思うんだけど。あの子の着てるもの大抵ゆとりのあるものだし」

そう言いながら琥雪がスウェットをもって戻ってきた。

ちゃんはちゃんとお風呂に行ってくれた?」

「と、思います」

「下着はちゃんと新しいのだから」

そう言いながら琥雪は持っているものを一樹に渡す。

「ありがとうございます」

「ねえ、一樹君」

来た、と一樹は思った。

「あなた、ちゃんと覚悟はある?」

「覚悟、ですか?」

「ええ。『覚悟』よ」

に関する覚悟なら」

まっすぐ琥雪を見て言う。

「夏凛ちゃんと晴秋君を相手にしてもそれは言い切れる?」

「誰が相手でも」

間髪入れずに返した一樹に琥雪はにこりと微笑んだ。

ちゃんの歴史は知ってるってことよね?」

頷く一樹に「じゃあ、琥雪さんは応援するわ」と言った。

「はい?」

「あら、大反対してほしかった?」

「あ、いえ。それは夏凛さんで充分です」

そう返す一樹に琥雪はきょとんとした。

「そういえば、何で2人のこと知ってるの?」

「去年、一昨年との誕生日に学園に突撃してきましたから」

苦笑交じりに言うと「なるほどねー」と琥雪はあっさり納得した。

「けど、あの子達も色々とあったのよ」

琥雪の言葉に「はい」と一樹は頷く。

晴秋から断片的に聞いている。

頷いた一樹の頭を琥雪は少しだけ乱暴に撫でた。

「そうそう、ちゃんのアルバム見る?」

「はい」

悩むことなく頷いた一樹ににやっと笑って琥雪がまたリビングを後にした。









桜風
13.7.19


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