| が風呂から出るとリビングがなんだか楽しげだった。 「お風呂お先です」と声をかけると琥雪と一樹が何かを挟んで座っている。 2人とも楽しそうなので、何だろうと近付いたは「ぎゃ!」と声を上げた。 「ちょっと、おばさん!」 「良いじゃない。減るもんじゃないし」 「、可愛いなぁ」 褒められるのは嬉しいが、あまり見られて嬉しいものではない。 ふと視界に入った生前の両親。 殆ど記憶に残っていないが、アルバムを捲るたびに両親の視線の暖かさを懐かしいと思う。 しかし、アルバムを捲るのは自分だから良いのであって、他人に見られると恥ずかしい写真が沢山あるのだ。 「ほら、ちゃんの描いた地図」 「やーめーてーーーー!!」 保育園時代なのだから、そんなに気にしなくて良いのに、と思うが恋する乙女はそんなことを頷けるはずがない。 それを見て一樹は「ははは」と声を上げて笑う。 「おばさん!!」 「んー、ちゃんに叱られちゃったから今回はここまでね。一樹君、お風呂入っちゃいなさい」 「はい」と頷いて一樹は立ち上がる。 涙目で自分を見上げているを見て苦笑を漏らし、「泣くことはないだろう」と頭を撫でてバスルームに向かった。 翌朝、一樹は休日の一樹にしては早起きをした。 一樹は客室で休ませてもらえた。 最初は琥太郎の部屋で、と琥雪に言われたがそれはちょっと...と思っていたらが「客室があるんだから」と説得してくれてそこで寝ることが出来た。 部屋を出てリビングに向かう。 「あら、おはよう」 「おはようございます、一樹さん」 「ちゃん、動かないで」 「...おはようございます。すみません、寝坊しました」 「ううん、いいのよ」 そう言いながら琥雪は目の前に座らせたの髪を弄っている。 「ちゃんの髪は癖がないから弄り甲斐があるわー」と嬉しそうに呟いているのだ。 「一樹さん、ちょっと待ってくださいね。コーヒー淹れます」 「ああ、そうか。じゃあ、今はここまでにしましょう」 そう言って琥雪がを解放した。 「コーヒーは琥雪さんが淹れるから、ちゃんは一樹君に琥太郎君の私服を見繕ってあげて」 「はい」 言われては頷き、「こっちですよ」と一樹を案内する。 「琥太にぃ、お邪魔しまーす」 一瞬琥太郎がいるのかと一樹は構えたがやはり誰も居ない。 に言うと「誰も居なくてもなんか声をかけないと落ち着かないんです」と言う。 なるほど、と納得した。 クローゼットを開け放ち、箪笥も漁り始める。 「琥太にぃはゆとりのある服が多いから一樹さんでも着れますね」 が呟く。 「その言い方だと、俺のほうが星月先生よりも太ってるってことになるんだが...」 背の高さはあまり変わらない。 「一樹さんのほうががっちりしているイメージありますよ。琥太にぃは寝てばっかだし、体を動かさないから」 その割には、スレンダーだよな、と思う。 「上は、これで...」 そう言ってニットを取り出した。 「下は...」 「ズボンは良いぞ。昨日着て来たのがあるだろう」 上はシャツとジャケットだったから部屋で過ごすには少し堅苦しいところがあるかもしれないが、パンツの生地は柔らかいし過ごしやすい。 「わかりました。じゃあ、これを着てください」 「しかし、良いのか?星月先生の服だろう?」 「良いんですよ。琥太にぃはそういうの気にしないし」 の言葉に「そうか」と呟いた一樹は実のところちょっと面白くない。 付き合いの長さを考えればが琥太郎のことを良く分っているのは当たり前で、こうやって勝手に部屋を漁ることも多少は許されているだけの信頼はお互いにあるのだ。 「なあ、」 名前を呼ばれて見上げるの目の前には一樹の顔があり、キスをされた。 「一樹さん?!」 「おはようのキス、まだだったろう?」 真っ赤になったに目を細め、もう一度一樹は彼女にキスをする。 「こうやって、朝からお前に会えるのなんて久しぶりだな」 「はい」と頷いたがまた可愛いからキスをした。 此処でやっと気付いた。 キリがないな... 目の前にが居ればいくらでも触れたくなる。 「あー、着替えるから...」 何とか自制して一樹が言うと 「あ、そか。はい!」 とは慌てて部屋を後にした。 |
桜風
13.7.26
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