| 一樹に手を引かれて連れて行かれたのはアクセサリーショップだった。 「一樹さん?」 「これなんかどうだ?可愛いぞ」 「あの、一樹さん!」 が少しだけ語気を強めて名を呼ぶ。 「何だ?」 「どうして突然アクセサリーショップで、どうやらわたしの指輪を選んでいるんですか?」 「いや、さすがの俺でもやっぱり心配なんだよ。虫除けって言うか...」 「わたし、こう見えてしっかりしてますから大丈夫です」 グッと両拳を握ってが力強く言う。 しかし、一樹は脱力した。 さっき!さっきナンパされてた!! 心の中で盛大に突っ込む。 しかし、の方が冷静だった。 「それに、学校にはアクセサリーはつけて行けないと思います。少なくとも、指輪は」 「へ?」 そんな校則あったかな、と思ったが確かにあのアクセサリーを付けている七海でさえ指輪はつけていない。 つまり、学校にいる間は少なくともそれをつけられないということか。 「目的、達成できますか?」 の言葉に一樹はうな垂れた。 「一樹さん、大丈夫です」 が見上げて言う。 一樹は彼女を見た。 「わたしが好きなのは一樹さんだけです。何か変なのに巻き込まれることはあるかもしれませんけど、そこは絶対です」 ちょっと待て。今のこのタイミングで言うのはずるいぞ。反則だ。 そんな気持ちを押し込めて一樹は溜息を吐き「はずるいな」と呟いた。 「ずるいですか?」 「ああ、ずるい。けど、仕方ない。今回は諦めるか」 肩を竦めて一樹が言う。 店内には他にもカップルで溢れていたので冷やかしで終わっても店側はあまり頓着しなかったのが幸いだった。 そろそろ買い物を済ませようと話し、スーパーのエリアに向かった。 琥雪に頼まれたものを籠に入れてレジで精算を済ませる。 「けど、あれだな」 なんだろう、とは一樹を見上げた。 「こうやって一緒に日用品の買い物をしていると新婚夫婦みたいだな」 イタズラっぽく笑って一樹が言う。 はちょっと怯んだかと思うと俯いた。首が真っ赤だ。 「ははっ、。赤くなってるぞ」 「突然一樹さんがそんなことを言うからです」 拗ねて言うに苦笑して「悪かった」と言い、手を差し出す。 手を繋いで駐車場の車に戻り、荷物を後部座席に載せてそれぞれ運転席と助手席に納まった。 「そうだ、一樹さん」 「何だ?」 エンジンをかけながら一樹が返す。 「一樹さんの誕生日プレゼント、何がいいですか?」 「昨日言ったじゃないか。あれだけ俺のためにお洒落して来てくれたんだ、充分だって」 「でも...」 が納得していないように呟く。 「そうだな...」 そう呟いた一樹がにやりと笑った。 「物じゃなくても良いか?」 「物じゃない、ですか?はい」 何だろう、と覗うようにが一樹を見上げた。 「からキスしてくれ」 「はい?!」 「今回、久しぶりに会って何回かキスしたけどな。1回くらいからキスしてくれても良いだろう?あ、口な。ほっぺとかはノーカウントだからな」 えーーーー!!!?? は心の中で声を上げた。 「あの、それ以外...」 「なら、要らない」 「ま、を学園に送り届けるまでの間で良いから。不意打ちでも良いぞー」 心から楽しんでいる一樹は鼻歌交じりに運転をしている。 マンションに帰ってエレベーターに乗ったところでは一樹の腕を引いてキスをした。 触れるだけのそれだったが、離れる寸前に一樹がの後頭部を抑え、離れられないようにして思いの外、長いものとなった。 途中、他の階に停まることがなくエレベーターの扉が開いたときにはは酸欠でちょっとフラフラだった。 「しかし、も大胆だな。途中で誰かが乗ってきたらどうするつもりだったんだ?」 「あんなに長くするつもりはありませんでした!」 拗ねたがズンズンと進んで行き、一樹は苦笑して「悪かったって」と全く反省していないものの彼女に謝りながらついていった。 |
桜風
13.8.9
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