Diamond ring 11





 生徒会室でアンニュイな溜息。

月子と颯斗は心配そうにをチラチラと見ていた。

「ぬー?なあ、はどうしてあんなに溜息ばかり吐いてるんだ?」

心底不思議そうに翼が言う。

「僕も分らないんですけど、月子さんはご存知ですか?」

颯斗に聞かれて月子は首を横に振る。

この間の一樹とのデートだってどうやら成功だったらしく、楽しそうに話してくれた。

何より、琥太郎の実家にまで行ったと聞いた。

何という前進!

しかし、はあまり元気がなかった。

ちゃん、どうかしたの?」

月子が気合を入れて代表で声をかけてみた。

「なに?」

頬杖をついて溜息を吐いていたが慌てたように月子を見上げる。

「んー...元気、ない?」

「そんなことないよ。元気だよ」

が返す。

「けど、さっきから溜息吐いてるよ?」

月子に指摘されてきょとんとした。

そして、「あはは」と笑う。

「溜息なんて吐いてないよー」

「いいえ、さん。先ほどから何度も溜息を吐いていましたよ。お疲れですか?」

颯斗にまで指摘されてこれは本当だと気付く。

「溜息、そんなに?」

「ええ...」

「ぬー、。相談ならのるぞ。そうだ!の悩みをパパッと解決するマシーンを発明「しないでくださいね」

翼の言葉を遮るように颯斗が笑顔で言う。

「ぬぬぬ...は作ってもらいたいよな?悩みをパパッと解決するんだぞ?」

「あー...えーと......」

が答えあぐねていると月子が

「ねえ、翼君。悩みを聞くのは友達の役目なの。だから、ちゃんの悩みは私が聞きたいな」

という。

「ぬぬぬ。だったら、仕方ないのだ。書記に譲る」

翼が諦めた。

颯斗は月子に視線で礼を言い、彼女は苦笑している。

それにしても、とに視線を向ければまた溜息。

どうしたのだろうか、心配だ。喧嘩でもしたのだろうか...

彼はの元気がないことを知っているのだろうかと思いながら月子に任せてみることにした。


夜になると月子がやってきた。

そういえば、帰りながら後で来るとか言っていたなと思い出す。

彼女を招き入れてコーヒーを出す。

「これ、錫也が焼いてくれたクッキー」

そう言って袋を出してきたので皿も出した。

「ねえ、ちゃん。この間の、一樹会長とのデート、楽しくなかったの?」

はきょとんとした。

「ううん、楽しかったよ?」

帰って来たときもそう話したと思う。

「けど、ちゃんが何処となく元気がないのって帰ってきてからだよ?」

「そう..なの?」

「うん、そうなの。親友の私が言うんだから間違いないよ」

「...ねえ、つっこちゃん」

「なに?」

やっと話してくれる気になったのかと心持ち声が弾んでいる。

「一樹会長。もうハタチなんだよ」

「あー、そっか」

1年留年しているし、4月生まれだからあっという間のハタチだ。

「大人なんだよ」

何となくの言わんとしていることが分ってきたような気がしてきた。

は置いていかれるような錯覚に陥っているのだろう。

「大丈夫よ、ちゃん」

「なにが?」

「一樹会長、ちゃんと分ってると思うよ」

何を分っているんだろう。益々遠くなる。

けど、月子は自分を安心させようと思ってこんな風に言ってくれているのだ。

それくらいはちゃんとわかる。

だから、「ありがとう」とは微笑んだ。

安心したように月子が微笑む。

の胸には何か言い表せない澱のようなものが静かに沈んでいる。おそらく不安だとかそういった感情なのだろうが、それに気付ける人は中々いない。

が元気になって安心した月子は自室に戻っていった。課題が沢山出ていると言っていた。

「そか、わたしも課題...」

通学鞄に手を伸ばすと携帯が鳴った。

姉からの電話で大型連休に姉の職場に遊びに来るようにとのことだった。

気分転換に良いかな、と思って頷く。

「じゃ、チケット送るから。泊まる場所はウチの宿舎で大丈夫よね」

「泊まれるの?」

「一応ね」

だったら、そこが楽かもしれない。

「わかった。何か買っていったほうが良い?」

「いいよー。こっちもそれなりに星空綺麗だから、きっとも楽しめるよ」

そういわれてちょっとだけ元気になった。

「うん、ありがとう。お姉ちゃん」

「どういたしましてー」

そう返した姉は上機嫌で、いつもの上機嫌とちょっと違う気もした。









桜風
13.8.23


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