| 翌朝、時間になっても一樹がやってこないのでと夏凛は彼の滞在している部屋を訪ねると、一樹が潰れていた。 「何してんの...」 呆れたように夏凛が言う。 「一樹さん、大丈夫ですか?」 心配そうに顔を覗きこむに苦笑して見せて「ごめんなー」と一樹が謝罪する。 頭痛がするらしい。少し吐き気も。 要は、二日酔い。 「小鳥遊に付き合ったの?」 夏凛に確認されて頷くと「あいつ、あたしと同レベルのザルよ?」と呆れたように返された。 「何飲んだの..って、そこに転がってるの全部?!」 「殆どは小鳥遊さんですけど...」 酒瓶が何本かある。まだ中身が残っているものも少なくないが、夏凛は天井を見上げた。 「ちょっと、小鳥遊探してくる」 「あ、いいです」 一樹が止める。 夏凛が不思議そうに見ると 「だけでも、観光案内してやってください」 と言うのだ。 腹立つー!と思いつつも「?」との意向を確認する。 「一樹さん...」 しょんぼりとしているの頭に手を伸ばした一樹は優しくなでながら 「せっかくの姉妹水入らずだし、夏凛さんに案内してもらえよ」 と説得する。 「、一樹にはお土産買って来よう。あと、二日酔いに効くもの」 夏凛に促され、少し後ろ髪が引かれるようであったが、「すぐに帰ってきますね」と言ってドアに向かう。 「何食べたい?」 「今は特に...」 そりゃそうか、と夏凛は肩を竦めてを促し、部屋を出た。 昨晩、小鳥遊と飲むことになった。 何となく気になったのが、小鳥遊のに対する敵意のようなもの。 先ほどの食堂の言葉が特に気になった。 「ところで、不知火君。何で飲む気になったの?初心者でしょう?」 「誘ったのはそっちじゃないですか」 一樹の言葉に肩を竦めて「そうだね」と小鳥遊が言う。 「小鳥遊さんは、夏凛さんの彼氏ですよね」 「うん、同レベルって認めてもらえたみたいだね」 何の同レベルだろう、と思ったが詳しくは聞かないことにした。 「のことは、良く思ってませんよね」 「そうだね。無条件に愛されているのが見ていてイライラする」 否定せずまっすぐに全肯定された。 これには一樹もちょっと驚いた。多少なりとも取り繕うかと思ったのだ。 「この性格も夏凛ちゃんに認められたものの一つなんだよ。夏凛ちゃんちの親戚って腹に一物抱えている人たちなんだってね。『が心配だー』ってよく言ってる」 「けど、も無条件で愛されているわけじゃありませんよ」 沢山のつらい思いをした。それを乗り越えてここまで来ているのだ。のほほんと守られているわけじゃない。 「そうかもしれない。けど、それ以上に夏凛ちゃんは苦労しているでしょう?背負わなくても良い、妹の人生とか」 「それを決めたのは夏凛さんでが押し付けたものじゃない」 「押し付けたよ。弱い自分を見せて」 「小学1年のに何が出来たと思っているんですか」 「ほら、無条件だ」 カッとなった。 が沢山沢山抱えてきた心の傷を無視してそんな事を言う。 負けていられない、と思った。 そう、ここでムキになってしまったから今日こうして潰れているのだ。 ノックの音が聞こえて「はい」と返事をすると小鳥遊だった。 警戒すると彼は笑う。 「いやぁ、夏凛ちゃんのゲンコって結構痛いんだねぇ」 そう言って頭を擦る。 「昨日はからかってごめんねー」 「...は?」 「いやいや。あまりに君がまっすぐだったからからかいたくなって。僕は別にちゃんは嫌いじゃないよ。寧ろ、彼女のあの弱さがなければ僕は夏凛ちゃんに会えなかったしね」 さらっとそんなことを言った。 を『弱い』と言われたことにちょっとカチンと来たが、ここでムキになっては昨晩の二の舞だと心を落ち着ける。 そこでふと小鳥遊が持っているコップに気がついた。 「はい、これ。二日酔いに効くよ。二度と無理な飲み方はしたくないって思うくらいに」 そう言って渡されたコップを覗き込み、匂いを嗅いでうっかり気が遠くなりそうになった。 「これ、本当に人が飲んでも害はないんですか?」 「失敬だな。僕の田舎では二日酔いといえばこれなんだから」 そう返されて一樹は意を決して一気飲みをした。 「凄いねー、一気だ。昼前には気分爽快になってると思うから」 そう言って小鳥遊は部屋を出て行った。 結局、自分は小鳥遊に遊ばれていることなのかもしれない。 そんなことを思いながらうとうと再びとまどろんだ。 |
桜風
13.9.27
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