| 翌朝は夏凛ではなく、夏凛に頼まれたと言う人が迎えに来てくれた。 「姉は...?」 「今日はちょっと忙しいですからね、さん」 そんなことを言われた。 彼女は広報の担当らしい。 一樹も回収して彼女の案内に従った。 「今日は珍しい演習なのよ」 と言われて興味を持つ。 ふと、小鳥遊が見えた。 この2日間見てきた表情とは全然違う。 そして彼と話をしている人物は姉だった。 「お姉ちゃん...」 これまた表情が違う。 よく考えてみるとは姉や兄が仕事をしている姿を見たことがない。 「姉はいつもあんな貌をしているんですか?」 「お仕事のときはね。それ以外は色々よ。大抵、こう..斜め上からの視線が多いわね」 真顔で彼女が言い、一樹が噴出す。 「一樹さん!」 とがたしなめる。 初めて目にした夏凛の仕事には声が出なかった。 夏凛は幼い頃からずっと音楽の道に進んでいたと聞いている。自分の微かな記憶でもそうだった。 突然の出来事で、自分の目指すものを諦めて一から始めたことで此処まで上がってきた。 「お姉ちゃん、凄い」 呟くの声が耳に届いたのか隣に立つ広報の女性が 「そうですね」 と頷く。 「さんには、『あたしの才能なんて普通だから、あとは負けん気の強さが人よりもあったのよね。って、広報しといて』って前に言われたことがあるんですよね。 最後の一言は照れ隠しだというのは丸分かりなんですけどね。さん、いつも努力していたからその結果だと思いますよ」 変なところでかっこつけたがるんですよね、と彼女は付け加える。 演習を終えた夏凛が厳しい表情だった。先ほど、ドッグから乾いた音が聞こえた。 おそらく、誰かが平手打ちされたような... の前に差し掛かったとき、チラと夏凛が見下ろしてきた。 「悪いけど、空港まで送ってやって。ブリーフィング入れるから」 の隣の彼女に言い、改めてを見る。 「ごめんね、迎えも見送りも出来なくて」 と言われた。 「あ、ううん。お姉ちゃんお仕事だし」 慌ててが返し、 「一樹も」 と夏凛に声をかけられて 「いいえ、俺のわがままに付き合ってもらって感謝しています」 と返した。 一瞬目を眇めた夏凛はそのまま庁舎に入っていった。 「飛行機の時間は?さんがアレだと、此処に居ても面白くないだろうから、美味しいものをおなかに入れて帰っちゃおう」 彼女に言われてが時間を言う。 「同じだな」 と一樹。 「一樹さんもですか?」 「ああ、帰りは夏凛さんがチケットとってくれるって言うから甘えたんだ」 「じゃあ、きっと隣同士ね」 そういわれてそうかも、とと一樹は納得した。 昨日と打って変わってメジャーな観光地を2つ回って、名産品をおなかに納めて空港まで送ってもらった。 「じゃあ、妹さん。また遊びにいらっしゃい。別の意味の勇者君もね」 にこりと微笑んで彼女が言い、と一樹はそれぞれ礼の言葉を述べた。 予想通り飛行機の席は隣同士だった。 「夏凛さんって、何かわかりにくいようなそうじゃないような...」 一樹が呟く。 「お姉ちゃん、天邪鬼だから」 「みたいだな」 の言葉に同意した一樹は苦笑した。 滞在期間中、夏凛とそんなに接点を持っていたとは思っていないが、それでも彼女の事が少しだけわかった気がする。 「敵わないな...」 ポツリと一樹が呟く。 夏凛の存在は、まだまだ大きな壁として自分の前に立ちはだかりそうで、いつかそれを超えることが出来たらきっと自信がつくのだろうと何となく確信した。 |
桜風
13.10.11
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