| 数ヶ月前まで毎日通っていたのに、今は懐かしい。 「あ!ぬいぬいだー!」 校庭に向かうと、体育祭の準備をしている現生徒会を見つけた。 否、副会長だけが此処に居ない。きっと裏方で走り回っているのだろう。昨年の颯斗がそうだった。 「久しぶりだな、翼」 いち早く自分を見つけて声をかけてきた翼にそう言うとその傍に居た颯斗が「すみません、お忙しいのに」と謝る。 引継ぎができていなかった箇所があり、時間があれば来てほしいと颯斗から電話があったのが3日前。 それから今日までと電話をしているが、今日星月学園に来ると言う話はしていない。 驚かせたいと思ったのだ。 今は準備に手が離せないようなので、生徒会室に行くとひと声掛けて生徒会室に向かった。 「珍しいな、不知火」 不意に声をかけられて顔を向けると保健室の窓際に琥太郎が居た。 「お久しぶりです」 「どうしたんだ、こんな田舎に」 苦笑しながら琥太郎が言う。 「理事長の言葉とは思えませんね」 一樹も苦笑して返す。 「颯斗に引継ぎの関係で呼び出されたんです。けど、今はまだ忙しそうなので」 「じゃあ、コーヒーでも飲んでけ」 そう声をかけられて一樹は「ごちそうになります」と言った。 「そういや、夏姉に挑んだってな」 コーヒーを淹れながら琥太郎が言う。 驚いた一樹を見て 「アキが楽しそうに電話をしてきたぞ、態々。ホンモノのバカが居たってな」 と苦笑する。 「褒め言葉と受け取っておきます」 苦い表情を浮かべながら一樹が言うと琥太郎は喉の奥でクツクツと笑う。 「何が可笑しいんですか?」 「その反応は大正解だからだよ。あいつは褒めてたんだ、不知火を」 「ホンモノのバカ、がですか?」 「そうだ」 そう言って一樹の前にカップを置く。 「のだが、別にいいだろう?」 「が怒らなければ」 そう言って一樹はそのカップを手にして一口飲む。 「、此処にカップを置いているんですか?」 「ああ、お客様のは綺麗なままがいいからってな」 何かちょっと面白くない... 「そういえば、星月先生のご実家にも行きました」 「何だ、もう挨拶したのか?」 からかう口調の琥太郎に首を竦めた。 「冗談だ、知ってる。母親からすぐに電話があった。『一樹君はとても良い子ね』と言われて、正直不知火の下の名前なんて覚えてなかったから誰のことかと首を捻ったぞ。悪かったな。どうせ、あの人が強引に事を進めたんだろう」 否定できない。 「けど、暖かい場所でした」 「...ありがとう」 家族が、家が褒められて少し照れくさい。 「失礼します、星月先生」 保健室のドアが開き、女子生徒が入ってきた。 「先生、この書類の確認と......」 手元の書類を1枚抜き出して顔を上げた彼女は固まった。 そんな彼女、の反応を見て一樹は噴出す。 「何だ、は聞いてなかったのか?」 「え、何で?!」 目を丸くするは状況が把握できないようだ。 「颯斗には、俺からに言うって言ったからな。何だ、俺はお前たちの話題に全く上らなかったのか?」 「颯斗くん?!」 混乱したままのに、さすがに可哀想と思った一樹が事情を説明する。 「ああ、そういうことでしたか。そういえば、颯斗くんが困ってましたね」 「、ここに確認印を押せば良いのか?」 体育祭の関係書類で保健医に確認依頼する必要がある箇所があったので、それを持ってきたのだ。 「あ、はい。そこです。あと、理事長にはこれ」 そう言ってまた別の書類を出してきた。 琥太郎は眉間に皺を寄せてそれを読む。 「おい、これ...」 「一応、届出だけでもしておきたいので」 苦い表情の琥太郎に「何ですか」と一樹が問う。 面倒くさそうに琥太郎が一樹にそれを渡した。渡されたということは見ても良いのだろうと一樹も目を通し、彼は苦笑した。 「よく颯斗が許したなぁ」 「颯斗くんは許したわけではないのですが、突発でされたときに不備があったら拙いので」 「...消防には出しておく」 「お願いします」 が理事長としての星月琥太郎に渡した書類は火気類の使用に関するものだった。 今年の体育祭から後夜祭をすると決めたのだ。 そんなお祭があればかならず張り切る人物が一人。しかも、何かしらの爆発が伴う可能性が高い。 だから、それは一応阻止するけどそれが出来なかったための手を打っておくと言うのが颯斗との一致した意見だった。 「まあ、翼のことだから何かしらやらかしそうだな」 「笑いごとじゃないぞ、不知火」 半眼になって琥太郎が言う。 「相変わらずの星月学園って事ですね」 嬉しそうに言う一樹に琥太郎はこれ見よがしな溜息を吐いた。 |
桜風
13.10.18
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