| オープンキャンパスが夏休みに入ってすぐにあると聞いてはその日、一樹の通う大学へと向かった。 最寄り駅まで迎えに行くといわれたが、自分の足で行きたいと言うと、一樹は不思議そうに 「じゃあ、正門で待ってるな」 と言っての意思を尊重してくれた。 電車とバスを乗り継いで一樹の通う大学に着いた。 正門に向かうと、一樹の姿が見えて駆け出したはすぐに足を止める。 一樹は別の人と一緒に居た。女の人だ。 おそらく、大学の友人か何かだろう。 一樹も楽しげに言葉を交わしているようで、それを邪魔して良いものかとは躊躇った。 ふとこちらを見た一樹がに気付く。 「!」 軽く手を上げて彼女の名を呼ぶ。 少しだけ様子が変だなと思ったがもしかしたら大学と言う初めての空間に緊張しているのかもしれないと思い、深く考えなかった。 は少しだけ歩調を速めて正門に立つ一樹の傍に向かった。 一樹と話をしていた女性達は依然彼の傍に居る。 「ごめんなさい、遅くなりました」 「ほらな、公共交通機関は面倒だろう?」 苦笑して一樹が返す。 「ねえ、不知火君。妹さん?」 一樹に声をかけた彼女の声音に彼に対する好意の色が見えては俯く。 「ん?いや、彼女」 「えー、子供じゃない。犯罪よ」 からかう彼女はを見下ろし、優越の表情を浮かべている。 「ばーか、こいつは高校3年生だ。ちゃんと大人だよ」 は驚いて一樹を見上げた。 「どうかしたか?」 「あ、いえ...」 「んじゃ、俺はこいつに学校を案内するから」 そう言って一樹はの手を取り、歩き出す。 「なによ...」 振り返ったが見たものは、自分に向ける嫉妬の眼差しで、それは怨嗟に近いものにも思えた。 「?」 一樹が見下ろしてに声をかける。 「あ、いいえ」 「迷わなかったかー?帰りは車で送るからな」 そういわれては頷く。 オープンキャンパスと言っても、何だか文化祭のようだ。 一樹に話をすると 「ま、祭りみたいにはなってるよなー。ただ、オープンキャンパスは学校主体だからな。文化祭は学生主体のイベントだからその点の違 いはあるぞ」 苦笑して一樹が言う。 「一樹さんは、留学の準備は出来てるんですか?」 出発まであと3日だ。 「あー、一応な。今出来てなかったら色々とまずいだろう?何だ、寂しいのか?」 「はい」 素直に返されて一樹は一瞬言葉を失う。 「ったく...今日は素直だなぁ。あんまり可愛いと連れてっちまうぞ」 誤魔化すように一樹がちょっとおどけてそう言う。 本気でそう思った。 というか、いつも思っている。 しかし、それは無理なことだと理解はしているが、諦めきれないところがある。だからこうして、時々彼女が素直になってしまうとそれを押さえるのはかなりエネルギーを使うのだ。 「さ、。何処に行きたい?学部は..興味あるか?」 そういえば、何処の学校を目指しているのだろうか。 「お前、志望校は決まってるのか?」 「はい」と彼女は何でもないように頷く。 「どこだ?」 「県内の国立です。つっこちゃんたちと同じみたいです」 「『たち』?」 誰だ? 「弓道部の宮地くんとか、あと、天文科の東月くんも同じらしいですよ。一樹さんは2人ともご存知ですよね?わたしだけ学部は違いますけど」 なるほど、と頷く。 「そうかぁ」と少しだけ寂しげに一樹が呟く。 「は何学部を目指しているんだ?」 「教育です」 「教育学部?先生かぁ...に合いそうだな」 そう一樹が言うと「両親が先生だったんです」とが言う。 「そうなのか?」 「はい。父は大学の、母は小学校の教師でした」 初めて聞いたな、と思った。 それから話をしながら一樹が構内の案内をする。 しかし、彼の知り合いに会うたびには『妹』と言われ、そのたびに一樹は『彼女』と訂正してくれていたが、酷く落ち込んでしまった。 何でこんなに可愛いのに... 一樹にとっては不思議なことだが、こんなところで変な虫がつかないならそれはそれで良いかとも思っていた。 |
桜風
13.11.8
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