Diamond ring 23





 「どうした、。疲れたか?」

先ほどから彼女と話をしていても何となく生返事だ。

此処にくるまでに結構時間が掛かった上に、休憩せずに構内を案内したからな、と反省した一樹は中庭のベンチにを座らせた。

「ちょっと飲み物買ってくるな」

構内にコンビニだってある。

歩き出そうとしたらシャツの裾を引っ張られていることに気付き振り返った。

「どうした、

しゃがんで彼女の顔を覗きこむ。

凄く落ち込んでいるようだ。

何だろう、何が原因だろう...

来たときもそんなに元気はなかった。

此処にくるまでに実は随分と迷子になっていたとか?

「帰りたい..です」

もう?と思ったが一樹は「わかった」と頷き、の手を引いて駐車場に向かう。


車に乗って学校を後にした。

もうちょっと案内するつもりだったから時間が空いてしまった。

そのまま帰すのは勿体無いので一樹は何処に行こうかと思案する。

「なあ、。って、おい。どうした?!」

信号で停車したところでに視線を向けると、彼女はポタポタと涙を零していた。

「ごめんなさい」

「え、どうした?」

何が『ごめんなさい』なのかさっぱりわからない一樹は詳しいことを聞こうとしたが、後ろの車のクラクションに邪魔をされた。

信号がいつの間にか青に変わっていたのだ。

?どうしたんだ?俺はお前に謝られるようなことはされてないぞ?」

車の運転をしながら彼女に理由を話すように促す。

「だって、さっき。せっかく学校を案内してくれてたのに、帰りたいって...」

「それくらい、気にしなくて良い。だから、泣くなよ」

今車線変更するのも車の流れから難しいし、何より、この近辺の路肩に停めても落ち着いて話が出来そうにない。

少し郊外に出るしかないと考えた一樹は隣でべそべそ泣いているを気にしながら少しだけ車のスピードを上げた。



やっと郊外の、停車しても他の車に迷惑が掛からない場所に出た。

たしか、此処は以前デートスポットだと聞いたことがある。夜になれば逆に車が増えそうだ。

車を停めて一樹はを見た。

もう涙は零していないが、目が真っ赤に腫れている。

?」

手を伸ばしての頬に触れると彼女はビクリと肩が震え、思わず手を引く。

「どうした、本当に」

「わたし、子供でした」

どういうことだろう、と首を傾げる。

「一樹さんと一緒に居た人とか、お友達は大人の人でした。お化粧して、綺麗で。だから、わたし恥ずかしくなって...」

そう言っては俯く。

一樹は少しだけ困った。

「お前は大人だよ」

「子供です」

まあ、ここで強情張るところは子供かもなぁ...

一樹は何となくその点については頷きたくなる。

しかし、

「お前は大人だよ。現実を受け入れられる強さがあった。俺にはなかったことだ」

と言う。

「化粧とか、派手な格好してりゃ大人だっていうんだったら世の中大変なことになるぞ。それだけが大人じゃない。大学生ってだけ大人と言うんだったら、親の脛を齧って学校に通ってるやつもそうなるだろう。俺は、そういうやつらは大人だと思わない。俺も含めてな」

ゆっくりとが一樹を見上げる。

みたいに幼い頃から現実を受け入れて、そこで頑張ろうとしてる奴の方がよっぽど大人だよ。

それに、

そう言って体を乗り出してに軽く触れるキスをした。

唇が離れ、すぐに今度は深く唇をあわせる。舌で歯列をなぞって空いた隙間に舌をねじ込み、彼女のそれを捕らえて絡める。

「ふ...ぁ...」

口の端から漏れるの息遣いに更に煽られ、一樹は貪るようにの口内を犯した。

やがて離れた2人の間には細い銀糸が伸びる。

「か..ずきさん?」

肩で息をしながらが名を呼ぶ。

「お前が子供だったら、こんなにもお前を欲しいと思っている俺は変態だぞ?」

そういった。

そう言いながらやばいな、と一樹は反省する。

これ以上は歯止めがきかなくなりそうだ。もう少しデートを楽しみたいと思っていたが、早々に送り届けた方が安全な気がしてきた。

「で、でも」

「何だ?」

「一樹さんは、いつもキスしか..しな....」

最後まではいえなかったらしい。消え入るような声でが訴える。

訴えられた一樹は溜まったものではない。

正直、したいのは山々だ。健全な青年なのだ、キス以上のことをしたいに決まっている。

したいが、それ以上に彼女の存在が大切で、だから色々と我慢しているのに...

確かに、子供かもなぁ...

さすがにこの場面でこんなことを言われたら一樹だって彼女を子供と思わずにはいられない。

「俺は、お前が大切なんだよ」

苦笑して一樹が言う。

「けどな、あんまり俺を煽るな。俺だって健全な男だから、我慢できなくなることだってあるんだ」

そういった一樹の目を見たは思わず息を飲んだ。

自分の訴えた言葉で一樹の表情が変わっていた。

「あ、あの...」

少し怯えたを見て一樹は少なからず傷ついたが、一応自分の気持ちもわかってもらえたらしい。

、次は本当の覚悟をして言ってくれ」

困った顔で一樹が言う。

こくりと頷いて「ごめんなさい」とが謝罪し、一樹は苦笑した。

「さて、どうする?このまま此処で時間を潰せば夜景が見られるらしいが...」

「あの...」

「どうした?」

「おなか空いちゃいました」

恥ずかしそうにが言う。

一樹は思わず噴出して、「じゃ、飯にしような」と言って車を走らせた。









桜風
13.11.15


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