Diamond ring 31





 クリスマスも静かに終わりを迎えた。

残すところ、あと生徒会長選挙となる。

もちろん、細々としたものは色々と残っているが、行事と呼ぶにはそれくらいのものだろう。


はこっそりと寮を抜け出して学校に戻った。

皆で作り上げたツリーを見上げる。

ゴトリとドアの方から音がして、思わず構えた。

「おー、今年のも立派じゃないか」

ドアを開けて立っていたのは一樹で、

「おお、どうした...」

は思わず駆け出してそのまま一樹の胸に飛び込んだ。

そんなの行動を予想していなかった一樹は最初驚いたが、そのままを抱きしめる。

「ただいま、

「おかえりなさい」

そう言って一層ギュッと抱きつくに苦笑を漏らし、彼女が満足するまで一樹は目の前の頭を撫で続けた。

暫くしてが頭を上げる。

「一樹さん、いつ帰って来たんですか?」

「さっきだよ。家に荷物を置いて、そのまま車で」

「琥太にぃ、何も言わなかったなぁ...」

琥太郎に許可を貰ってきているのだと思ったが呟くと

「いーや、誰にも許可を貰ってない。所謂、不法侵入だ」

と一樹が笑う。

は慌てて開けっ放しになっていたドアを閉めた。

「何やってるんですか?!」

「良いじゃないか、お陰で、こうして予定よりも早くに会えた。お前も俺に会えて嬉しかったんだろう?」

先ほどの行動があって、「別に」なんて言えるはずなく、「はい」とが俯く。

嬉しくて、嬉しくて、思わず一樹の胸に飛び込んでしまった。


「もう少しツリーの傍に行かないか?」

一樹に言われては一樹から離れる。

「おお、が離れると寒いな」

「そうですね」とも頷く。

並んでツリーを見上げていたが、一樹がその場に座り込み、「」と声をかけて自分の膝をポンポンと叩く。

「重いですよ」

「1年前に体験済みだから大丈夫だよ」

そういわれては躊躇いがちに一樹の膝にちょこんと座った。

その腰を引き寄せて一樹はをギュッと抱きしめる。

「あー、やっぱりあったかいな」

耳元で聞こえる一樹の声にドクンと心臓が跳ねた。

電話で何度も一樹の声を耳元で聞いているのに、傍で何も通さずに聞こえる一樹の声は少しだけ心臓に悪い。

は自分の腰にまわされた一樹の手に自分の手を重ねた。

「おいおい、冷たいな...」

「あ、ごめんなさい」

慌てて引こうとしたの手を一樹は掴んで指を絡めてぎゅっと握る。

「こんな冷たい手をしてたのか。気付かなくてごめんな」

と言われては泣きそうになる。

「一樹さん、ずるい」

「何がだ?」

苦笑しながら一樹が言う。

「優しいです」

「俺はいつも優しいだろう」

「だからずるいです」

そんな風に拗ねて言うに一樹はまた苦笑する。

」と一樹が呼び、が振り返るとそのままキスされた。

軽く触れるようなキスから次第に深く激しくなり、やがて一樹がに覆い被さるような体勢となったがそれでも唇を離すことがなかった。

トントンと少し苦しくてが一樹の胸を叩いて、やっと一樹が少しだけ離れた。

じっと見詰め合って、再び唇を重ね、やがてゆっくりと離れる。

浅く速い呼吸をしているを見つめて、一樹は苦笑した。

「不法侵入どころか、になることだった」

は真っ赤になって俯く。


一樹は立ち上がり、に手を差し出す。

その手をとったを立ち上がらせ、「帰るか」と言った。

「はい。一樹さんは?」

「家に帰らなきゃ、だな。は、いつ帰るんだ?」

「26日中に帰れたら帰ろうって思ってます。ここの片づけがどうなるかですね」

そう言ってまたツリーを見上げた。

「そうか...あー、受験とか大変だろうけど、少しくらい時間取れるか?」

一樹が遠慮がちにそんなことを言う。

それを聞いては「冬休み、全部遊べますよ」と笑った。

「けど、お前。国立って...」

「もう終わりました」

満面の笑みのに「は?!」と一樹は呆け、「おまえ、まさか...!」と思い至った考えに勝手に驚く。

「一般推薦で合格しました。よっぽどのことをしでかさない限り、進学できます」

の言葉に一樹は天井を見上げる。

「凄いなぁ...」

「受験する回数を増やしたくて推薦を受けたんですけどね。琥太にぃも郁ちゃんも大反対したんですけど、何とか合格です」

はにこりと笑って、少し自慢げに言う。

「じゃあ、いっぱいデートしような?」

「一樹さん、家の手伝いは?お正月は神社って忙しいんじゃないですか?」

確かにそうだ、と一樹は残念に思う。

しかし、ふとの顔をじっと見た。

、もう受験勉強しなくても良いんだよな?」

「はい」と頷くのを見て「ウチの手伝いをしないか?」と提案してきた。

「はい?」

が聞き返す。

「難しいことはない。今年の頭に、ここの近所の神社の手伝いをしたその程度の手伝いで良いし。そしたら、俺は手伝いできてと一緒にいられる」

「邪魔にならないですか?」

結局あのときも一樹がてきぱきと色々とこなしていたのだ。

「大丈夫だ」

自信に満ちた笑みで一樹が言う。

「...おばさんに聞いてみます」

の言葉に一樹はやっぱり自信ありげに頷いた。









桜風
14.1.10


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