Diamond ring 34





 どうやら、自分が案内されている部屋は離れのようだ。

離れと言っても廊下で繋がっているのだが、母屋とは屋根が違う。

「ウチは、事務所と繋がってるからお客さんが来たときはこっちに滞在してもらってるんだ」

事務所の人の出入りを気にせずに滞在してもらうためだと言う。

「社務所、と繋がってるんですか?」

「まあ、繋がってるといっても、生活している場所と事務所はちゃんと分かれているけど、やっぱり声とか色々気になるかもしれないって」

そうなのか、とは納得した。

「ここな」といってドアを開けた一樹に続いて部屋に入る。

「あの、一樹さん」

「何だ?」

「広い、ですね...」

「そうだなぁ。ちょっと広いな」

ちょっとかな、とは首を傾げた。

「布団は、その押入れに入ってる。あと、寝るときには施錠を忘れるなよ」

「鍵があるんですか?」

そう言ってドアを振り返ると確かに鍵がある。

「母屋と離れてるからな。防犯上必要だろう?特に、参拝客が多いときはこっとまで気が回らないからな」

「わかりました」

荷物をその部屋に置いて一樹と共に先ほど言われたとおりに居間に向かう。


居間には、一樹の叔父と叔母が居た。

「おそくなりました」

が言うと

「よくきてくれたね」

と言われた。

「あの、お手伝いは何をすれば良いんですか?」

すぐに仕事の話をしようとするに少し驚いた様子を見せたが2人は苦笑する。

「まずは、夕飯にしよう。少し早いけどね」

「あ、ごめんなさい」

小さくなるに一樹は苦笑した。


食事を取りながら今回の手伝いの説明をしてもらえた。

はまだ高校生なので、夜中の手伝いはなしということになっているようだ。

同じく、を連れてきた一樹もフォロー諸々の点から同じ時間帯に手伝いに入ることになっているとのこと。

元々、バイトの募集は早めに行っており、他のバイトはある程度の研修を経て年末を迎えているので、その差がある分、にはフォローが必要になると考えられるらしい。

「それで、お礼なんだけど」

と言われては首を横に振った。

「ウチの学校、バイト禁止なのでいただけません」

そういった。

「そうだっけか?」

一樹が首を傾げ、

「だから、今年のお手伝いってお手伝いだったんじゃないんですか?」

がきょとんと見上げた。

あれは、知り合いと言うこともあったし、きっと楽しいだろうと思ったからで、そこまで考えていなかった。

「本当に、良いのかい?」

「はい。わたしはそのつもりで来てますから」

が頷く。

まあ、手伝いを頼んでいるのは3日までだし、4日は2人は出かけるのだろうから、小遣いを持たせて彼女にご馳走するように一樹に言い含めておこうと彼らはこの場は引き下がった。



食事を済ませ、母屋の一室に案内されてて袴に着替える。神社で働く人のユニフォームだ。

袴は、今年の正月まで着たことがなかったが、月子に習ったのでおそらく一人でも着られると思う。

実際、着物の方が手間だと思ったし。

襖を叩かれて返事をすると一樹の叔母が顔を覗かせてきた。

そして、きちんと着替えられているに感嘆の息を吐く。

「あら、一人で着替えられたのね」

「はい。友達に教えてもらっていましたので」

「お友達?」

「はい。彼女は生徒会仲間で、弓道部だったんです。なので、袴はお手の物でした」

「そう」と相槌を打ち、「じゃあ、お手伝いお願いね」と言って彼女は出て行った。

部屋を出ると一樹が待っていた。

「お、似合うな。可愛いぞ」

そう言って頭を撫でてくる。

「子供じゃないです」

抗議するを笑って受け流し、「じゃ、行くか」と事務所に向かった。









桜風
14.1.31


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