Diamond ring 35





 大晦日から三が日まで本当に目の回るような忙しさだった。

しかし、何となく生徒会活動のあの忙しさとさほど変わらない気がしてはそこまで息切れをしていない。

そんなにまたしても、一樹の叔父夫婦が感心していたのは、一樹しか知らないことである。

の手伝いは、初日の大晦日を除いて21時までだった。

最後の手伝いの日も21時まで手伝い、上がらせてもらう。

事務所から母屋に向かっていると「この後、ちょっと抜け出すか?」と一樹に言われた。

「少し散歩しようぜ。今年に入ってまだゆっくりと星空を見上げていないだろう?」

一樹に指摘されて、そうだったと気付いた。

と、いっても。まだ今年に入って3回目の夜なのだが...

「夜のデートですね」

が言うと一樹は苦笑して「そうだな」と返し、一旦着替えての宿泊している離れの前で集合となった。


「ここら辺はあまり雪は降らないんですか?」

手を繋ぎながらゆっくりと歩く。

「んー、降っても積もりはしないな。のところは?」

「実家は積もります。星月の家は積もりません」

あー、あの実家なら積もるかもな。

曰く、田舎レベルなら星月学園並みなのだ。

一樹の提案どおりは星空を見上げ、一樹はそんな彼女を見つめる。

あれからまだ1年か...

自分が彼女への気持ちを自覚してからそんなに時が経っていない。なにより、付き合い始めてまだ1年経っていないのだ。

『付き合い』ならもうそろそろ3年だが、やっぱりそれも『まだ』という気がする。

「一樹さん?」

物思いに耽っているとが不思議そうに見上げていた。

「あ、いや。まだ1年経ってないんだなって」

そういわれては「ホントだ」とにわかに驚いたような声を漏らす。

「そういえば」

一樹が呟き、足を止めた。

再びが見上げると一樹に唇をふさがれる。

「一樹さん!」

唇が離れた途端、が抗議の声を上げる。

「や、今年に入ってまだキスしてなかったなと思って」

「もう!」

拗ねたようにぷいとそっぽを向くだが、繋いだ手はギュッとなった。

「ホント、電話だと素直なのになー」

苦笑して一樹はそう呟き、少し強くの腕を引いて彼女を胸の中に収める。

「一樹さん?」

胸の中のが不思議そうに名を呼ぶ。

「ん?」

「凄く冷えていますよ」

「んー、そうか?」

「帰りましょう」

「...そうだな。帰って、あったかいところでイチャイチャしよう」

ニッとイタズラっぽく笑って言う一樹にはコクリと頷いた。

それを目にした一樹は脱力した。

「一樹さん?」

「さっきまで素直じゃなかったのに、いきなり素直になるんだから...」

覗うように見上げるは少しだけ不安そうで、一樹は苦笑を漏らす。

「ダメって言ってないからな。可愛いって言ってるんだからな」

そう言って彼はの額にキスをした。



家に帰り、冷えた体を温める。

叔父夫婦はまだ仕事を続けているようで、家に帰っても暗かった。

「一樹さん、お風呂お先ありがとうございます」

声をかけたに「んー」と返事をした一樹はそのまま風呂場に向かう。

が家に泊まり始めた日からの間、本当に自分は凄いなぁと感心していた。

叔父夫婦がいるから、というのが一番のブレーキ要因だろうが、それにしたってよくもまあ、抑えきれている。

風呂上りのにだってグッと来る。

勿論、風呂上りなんて初めて見たものでもないのだが、彼女自身がどんどん魅力的になってきていると言うか...

「俺、完璧欲求不満だな...」

ガクリと肩を落とす。

いやはや、健全なことである。


風呂を出ての離れに向かう。

明日の予定を決めてしまおうと思ったのだ。

あまり前もってガチガチの計画をするのは好きではないが、体調等もあるだろうから出発の時間とかそういうのくらいは決めておきたいし、が行きたいと思う場所があるかもしれない。

車の使用許可は既に貰っているので、少し足を伸ばしてもいいが、そうなると星月の家に帰る時間とかそういうのも確認しておかなくてはならない。

ー」

部屋のドアをノックしてドアを開ける。

「はい」と振り返るは無防備で、一樹は部屋に入る前に1回だけ深呼吸をした。

「明日の予定だけど」

そう言っての隣に腰を降ろす。

「はい」と目を輝かせて何かを期待しているに苦笑した。

「行きたい場所はあるか?」

「一樹さんの育った街を見たいです」

間髪入れずに返された。

一瞬躊躇った。

過去の自分の想いはともかくとして、月子に出会ったらどうしようとかそういうのを思ったのだが、の希望をかなえてやりたいという想いの方が遙かに強く、「わかった」と一樹が頷く。

何時に出るか、とかそういう話をして明日の予定を粗方決め終わり、一樹は立ち上がって部屋を後にしようとした。

しかし、クイとパジャマ代わりにしているトレーナーの裾を彼女が掴んでいる。

?」

もう一度腰をおろして彼女の顔を覗きこむ。

「どうした?」

声を掛けると彼女の眸が揺れた。

「あの...もうちょっと、一緒に居たいです」

俯いて言うこれが精一杯の言葉だ。

そっと一樹の顔を覗うと彼は驚いたように眉を上げていたが、「そうか」と返してキスをしながらゆっくりとに体重をかけていった。









桜風
14.2.7


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