Diamond ring 38





 新学期が始まった日の放課後、颯斗共に生徒会室に向かうと、何だか賑やかだった。

翼がはしゃいでいる。

「翼君、どうしたんでしょう」

「そうだね。雪はそんなに降ってないし...」

そんな会話をしながら生徒会室のドアを開けると、翼にじゃれられている一樹の姿があった。

「一樹会長」と颯斗が弾んだ声を出す。

「よう、颯斗。久しぶりだな」

軽く手を上げて一樹は笑い、颯斗の隣に立ってしきりに首を傾げているに苦笑した。

「今日には向こうに発つって...」

先日、の両親の墓参りに行ったときにそう言っていた。

「1日延ばした。せっかくこっちに戻ってきたのに、顔を見せずに戻ったとあっては翼がうるさいだろうしな」

そう言ってニッと笑う。

「ぬいぬいの方が寂しかったくせにー」

と翼が負けじと返す。


「月子は?」

たちは図書館に寄ってきたので少し遅めの集合だったから月子がきていないことが気になったらしい。

「つっこちゃんは補習です」

「あいつ、成績落としたのか?!」

心配そうに一樹が言い、が慌ててそれを否定した。

「違います。つっこちゃんのクラスって陽日先生が担任でしょう?他の先生も巻き込んで可愛い生徒のために補習と言うか補講の方が正しいのかな?冬に入って、受験対策の勉強会を開いているんです。勿論、希望者は他のクラスの人でも受講できるみたいですよ」

「へぇ...俺達の時にはなかったぞ?けど、行き先が決まったはともかく、颯斗は良いのか?」

「僕はちょっと皆さんと進路が違うので」

颯斗が控えめにそう言う。

「けど、そろそろ来ると思いますよ。そんな遅い時間までやってないみたいです」

が言い終わると勢いよく生徒会室のドアが開き、「遅くなっちゃった」と月子が息を切らせて入ってきた。

「大丈夫ですよ、僕達も少し寄り道してきましたし」

颯斗がそう声をかけ、

「久しぶりだな、月子」

と一樹が声を掛ける。

彼女は驚いて顔を上げて「一樹会長!」と嬉しそうな声を上げた。

「どうしたんですか?」

「クリスマス休暇でこっちに帰ってきてたからな。久しぶりにお前たちの顔を見ようと思って来たんだ」

「そうだったんですね」と月子の声が弾む。

既に生徒会室に来ていた1年の役員達には自己紹介も済んでいたようで彼らとも打ち解けているようだ。

生徒会活動をするように一樹が促し、新学期初の会議が始まった。

内容は、次期会長選挙の準備についてだった。

昨年も最初の会議はこれが議題だったな、と一樹は懐かしく思う。

さすがに、昨年の経験者が4人も居れば準備の確認も早い。

皆が翼を見て、彼は頷いた。

去年はこれで揉めたよなぁ...

懐かしさもひとしおだ。

会議は早々に終わり、各自の仕事を、という話になったが月子がポンと手を叩く。

「一樹会長、今日はいつまでいることができますか?」

「決めてないな。明日の飛行機も午後だし...」

「じゃあ、みんなで天体観測しようよ」

そう言って颯斗を見た。

「賛成だー!」

そういったのは翼で、1年たちも賛成の様子だった。

「ま、今日は新学期初日ですし。選挙の準備も人数は足りてますし、良いでしょう」

颯斗会長の許可が下りたので、皆で屋上庭園に向かう。


ふとが隣を歩く一樹を見上げた。

「どうした?」

「屋上庭園で一樹さんと天体観測って凄く久しぶりですね」

ふわりと微笑んでいうに一樹は目を細める。

「ま、卒業して以来だしな」

屋上に出ると、快晴の空には星が散りばめられている。

生徒会の他にも課題が出ているのか、空を見上げている生徒の姿がちらほらと見えた。

一等星の少ない秋の星空が静かなのに対して、冬の星座は一等星が多いから派手だ。

一等星を結ぶと六角形になり、ダイヤモンドの形になる。

あんなでっかいのは無理だけど、いつか、にプレゼントしたいと思っている。自分の大切な想いと共に。

「あ、」と隣に立っているが呟いた。

星が流れた。

「何かお願い事しましたか?」

が声を掛けてきた。

が、いつも笑っていられますように」

一樹が笑う。

一瞬驚いたような表情を見せたは幸せそうに目を細める。

は何をお願いしたんだ?」

「忘れてました」

「ったく、しょうがねぇなー」「一樹さんの隣で見れたのが嬉しくて」

一樹の言葉との声が重なる。

「ばか」

こんなみんなが居るところでキスはできない。

何だって、こういう状況のときにもはかわいいことを言うのか...

しばらく賑やかに天体観測をしていたが、届出をしていないのでたちに門限もあるし一樹も帰って出発の準備をしなくてはならないということになり、解散となった。

月子と颯斗が気を使ってくれたお陰でと一樹は2人きりになる。

と、いっても。一樹とはのんびり歩いて彼女を寮に送り届けているだけだ。

月子は、そうそうに颯斗が送り届けることとなり、彼女たちの気遣いはわかりやすかった。

「気をつけてくださいね」

が声を掛ける。

「ああ、またな」

寮の前でそんな挨拶をして一樹はに口付けた。









桜風
14.2.28


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