Diamond ring 39





 生徒会長選挙も恙無く終了した。

その前のセンター試験ではまあまあの成績だった月子は生徒会活動にも精を出していた。

「わたし、暇だから大丈夫だよ」

が言っていたが、

「息抜きさせてよ」

と月子が言うので強くは断れなかった。


「そういえば、颯斗くん。バレンタインイベント、どうするの?」

副会長の引継ぎは日ごろから行っているのでそこまで忙しくない。

は書記の仕事と副会長の仕事を経験しているので月子が来られないときは書記の仕事の引継ぎも行っている。

今日は、会長も副会長も書記もまだ来ていないのでと颯斗は彼らを待ちつつ仕事をしていた。

「そうですね...一樹会長がどうしてもって去年言ってましたし」

颯斗が思案する。

颯斗にとっては結構どうでもいいイベントでもある。

「まあ、最後の馬鹿騒ぎと思えば」

苦笑してが言うと「良いんですか?」と颯斗が問う。

「何が?」

「だって、場合によってはさんにご褒美くださいって話になるかもしれませんよ?」

そういわれてみればそうだ。

昨年は、ビンタを全力で拒否されたからそんなことはなかったが...

「けど、言いだしっぺは一樹さんだしね」

が笑う。

そして、ふと思いついたように「聞いてみようか」と言う。

時計を見た。

「時差は大丈夫ですか?学校とか...」

「ダメだったら別にいいし。ダメ元で掛けてみようよ」

もしかしたら電話をする口実が欲しいのかな、と颯斗は推測して「聞いてみましょうか」と賛成した。

颯斗が自分の携帯で掛けようとしたのをが制して自分の電話で掛ける。

『もしもし』

一樹が出てきた。

「今大丈夫ですか?」

『おう。珍しいな、こんな時間に。どうした?』

少し上機嫌の一樹の声だ。

「ちょっと、ご相談が...と、颯斗くん」

そう言ってが颯斗に携帯を渡した。

『颯斗?』

電話の向こうの一樹の呟きが聞こえた。

「もしもし、会長。すみません、お忙しいところに」

『いや、大丈夫だが..何かあったのか?』

「いえ。あの..やはりバレンタインイベントは残した方が良いでしょうか」

クスクスと笑いながら颯斗が言う。

『バレンタインイベント...そういや、そんな季節だな。何か不都合があるのか?』

心底不思議そうに一樹が言う。

「不都合..ですか。僕にはないのですが、一樹会長にはあるのではないでしょうか?」

既にからかい口調だ。

そして、一樹もそこでやっと気がついた。

『そうか、うーん...』

唸っている。

暫く唸っていた一樹はやがて、

『俺は颯斗を信じる』

と言った。

「はい?!」

颯斗が頓狂な声を上げる。

も首を傾げている。

「ご褒美は会長の裁量でラインが決まるからな」

一樹が考えたルールだけあって、会長が白といえば鴉も白になるルールである。

颯斗はクスリと笑い、

「わかりました。クラスメイトからもなるべく開催の方向でと言われているので、生徒の多数の意見を聞こうと思います」

と返し、「さんに代わりますね」と言って颯斗は「ありがとうございました」と彼女に携帯を返した。

「もしもし」とが応じると颯斗は彼女から距離を取る。

こういう気遣いはさりげないしさすがだと思う。

暫く話をして、そして通話を切った。

「というわけで、バレンタインイベントはありと言うことで。さんと月子さんが居るうちになくしてしまうと落胆する人が少なくないでしょうからね」

さんたちには申し訳ないのですが、と颯斗が続ける。

「いいよ。最後のお祭り騒ぎじゃない」

弾んだ声でが応じる。

「そうですね、これで最後です」

寂しそうに微笑んだ颯斗に「寂しいね」とが声を掛け、彼は苦笑して「そうですね」と頷いた。









桜風
14.3.7


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