| バレンタインデーの夜のの携帯に電話がかかってきた。 「もしもし」と弾んだ声で応じると電話の向こうでは苦笑の声が聞こえる。 『今日、届いたぞ』 一樹と恋人同士となって2回目のバレンタインは、一樹が日本に居ないため、手作りチョコは無理だったが、別のものを贈った。 「ちゃんと今日届いてよかったです」 『ありがとな。それはそうと今日のバレンタインイベントはどうだった?』 からの贈り物がなくても気になっていたので、電話を仕様と思っていた一樹は気になることを聞いた。 はクスクスと笑う。 『なあ、』 返事を促すとは 「颯斗くんの勝ちでした」 と答える。 今年も、生徒の大半が待ちに待ったバレンタインイベントを迎えた。 やはりダミーチョコを隠す作業は手伝わせてもらえず、残念だった。 今回の本命チョコは颯斗が隠した。 主催の生徒会の責任者が隠すものだ、と以前一樹が言っていたが。このとき、普通は生徒会長が交代しているので、新生徒会長、今回で言うと翼が責任者として隠すものだろうが、なぜか前生徒会長が隠すという実績を昨年一樹が作ってしまったので今年は颯斗が隠すことになったのだ。 開会の宣言が終わり、生徒会室に向かう。 本命チョコを持ってくる生徒が現れるまでは月子の勉強を見ていた。 しかし、待てど暮らせど本命チョコが生徒会室に持ち込まれることはなかった。 終了時刻となり、全校放送でイベント終了を告げる。 「結局、何処に隠したの?」 が問うと颯斗はクスリと笑う。 「星月先生に協力してもらいました」 「はい?」 が思わず聞き返す。 「まさか、去年と同じ場所には隠さないだろうという心理を突いてみたんですよ」 「よく協力してくれたねぇ...」 「生徒会に巻き込まれるのは慣れた、と仰ってましたよ」 苦笑して颯斗が言う。 確かに、結構巻き込んできたなぁ... が生徒会執行部に所属しているのなら巻き込まれるのは仕方ないとも思っていたのだろう。 「じゃあ、今回はご褒美はなかったのか」 の話を聞いてほっとした自分に思わず苦笑した。 『安心していただけましたか?』 少しおどけたようにが言うと 「颯斗に感謝だ」 と素直に返す。 「あとちょっとだな」 ふいに一樹の口から零れた言葉。 電話の向こうのが沈むのがわかってちょっと慌ててしまう。 「あ、いや...」 『わたしは、つっこちゃんと颯斗くんがいるからそこまで寂しくないのかなって思うんですけど。一樹さん、寂しかったんですね』 「まあ、そうだな。もう1年だな...」 『あと半年以上です』 「ん?」 の言葉の意味がわからず聞き返した一樹はそのすぐ後に気が付いた。 「8月中には帰るから..ってやっぱり半年だな」 『けど、大学に入って生活に慣れているうちにあっという間かもしれません』 思わず零した本音を誤魔化すようにがそう言う。 「それはそれで寂しいなぁ」 一樹がからかうように返した。 「そういや、大学は決まったけど住むところはどうするんだ?」 『この間、お兄ちゃんと郁ちゃんと探しに行って決めました』 「晴秋さんはともかく、水嶋先輩もか?」 『お兄ちゃんは星月の家を出て生活した期間はそれなりに長いんですけど、全部寮生活なんです。一人暮らしをするための家探しはしたことがないからって』 なるほど、と納得した。 知り合いの中で声を掛けやすかったのがきっと郁だったのだろう。 「引越しは?」 『3月にならないと入れないみたいなので、それ以降になります』 「そうか...手伝ってやれなくてごめんな」 一樹が言うと 『ありがとうございます。けど、お姉ちゃんとお兄ちゃんが張り切ってますから』 とが笑いながら返した。 最強の布陣だ。 一樹も思わず苦笑を漏らした。 暫く話をしていたが、先に気が付いたのは一樹だった。 『、もう遅いから切るな?』 言われて時計を見ると日付が変わっていた。 「はい...」 沈んだの声に一樹は苦笑した。 『また電話するから、そんな寂しそうな声を出すなよ』 「はい。じゃあ、おやすみなさい」 『おやすみ。いい夢を見ろよ』 そう言って一樹が通話を切り、も電源ボタンを押した。 |
桜風
14.3.14
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