Diamond ring 43





 夕飯は、一樹のアパートの近くのピザ屋でピザを購入して帰って部屋で食べた。

「そういや、雨上がったみたいだな。星が出てたぞ」

食事を終えたとき一樹が言い、彼の了解を取って窓をあけた。

雨上がりの夜空は星がはっきりと見える。

「本当に同じ星が見えるんですね」

窓の外に輝く星々を眺めてが呟く。春の夜空だ。

「ああ、そうだな。まあ、隣にが居るときと居ないときとじゃ星の見え方が全然違うけどな」

一樹が言うと

「ホントですね」

も頷いた。

一樹と見る星のほうが、より輝いているように見える。

一樹に言うと「お前は本当に」と呆れたように笑われた。

彼の反応の意味がわからずに首を傾げると「また食っちまうぞ」と言われて赤くなる。

「冗談だよ。ホテルの門限もあるだろうし、今回は我慢する」

半ば本気だったが、そこらへんの気配りは忘れていない。


一樹の部屋を出て、の宿泊するホテルに向かった。

「そういや、引越しは終わったのか?」

4月から大学に通うために住む部屋は、2月のうちに見つけたと聞いているが、引越しは3月にならないとだめだと言っていたと思う。

「出発前に終わりましたよ」

の言葉に「そうか」と頷く。

「夏凛さん、張り切ったんじゃないか?」

休みを取って手伝いに来ていただろうと思って言うと

「お兄ちゃんと小鳥遊さんも手伝ってくださったのであっという間に終わりました。業者さんに頼むつもりだったのに、お姉ちゃんがお兄ちゃんと小鳥遊さんに休みを取らせて...あと、郁ちゃんも手伝ってくれましたよ」

とそのときの話を始める。

大きな家具は晴秋と小鳥遊で運び、家の中に運んだら夏凛と郁が配置するという分担をしてくれたとか。

「そういや、星月先生は?」

そのメンバーなら彼が居てもおかしくない。

「理事長はお仕事忙しいって...」

逃げたな...

一樹は心の中で呟く。

おそらく、夏凛が居るので逃げたのだろう。彼女は妹以外は容赦なく使う。

「水嶋先輩、大丈夫だったか?」

「引越しが終わる頃にはヘトヘトでしたよ。お姉ちゃんが駄賃だって言って、何か高いらしい有名なお酒をあげたんですけど、『これだけ?』って言ってゲンコツ食らってました」

が苦笑する。

存分に使われたのだろう。

水嶋先輩、のためにありがとうございます。

心の中で彼に礼を言い、一樹は「そりゃ、最強の布陣だったな」と素直に感想を述べた。

「はい。家具の組み立ても小鳥遊さんがやってくださったんですよ」

戦闘機の整備をする人が家具の組み立てかぁ...

彼の職業を知っている人が見たら何となくシュールな絵面だったかもしれないなと思った。

「じゃあ、もう完了したのか」

「はい。戻ったら大学の教材とかそう言うのを買いに行かなきゃいけないんですけどね」

「それも結構重いからな。大丈夫か?」

と言っても、自分が手伝ってやることは出来ない。

「大丈夫ですよ。わたし、こう見えて力持ちです」

両拳をぐっと握ってが言う。

「まあ、月子と協力して...」

そう言うとは苦笑して

「つっこちゃんは東月くんと一緒ですから」

という。

「そうか。東月も...そういや、宮地もって言ってなかったか?」

「宮地くんも同じキャンパスに通いますよ。2人ともつっこちゃんと同じ学部だからキャンパスで会えるかどうか微妙だねって話してたんですけどね」

少し寂しそうにが言う。

「そうか」と一樹は相槌を打つ。

彼女の宿泊するホテルは比較的治安が良いといわれている地区にあるということに安堵する。

「夜中に一人で出かけるなよ」

一樹が言う。

「わかってます」

「明日の朝、迎えに来るからな。俺が電話するまで部屋から出るなよ」

「はーい」

本当、いっそのことホテルをキャンセルして部屋に泊まらないかな...

傍に居ないと心配だ。

一樹の考えていることは表情に出ていたため、にもわかった。

は苦笑し、「一樹さん、心配しすぎ」と指摘する。

自分でもそう思うので反省した一樹は「悪かった」と謝罪する。

「じゃあ、また明日な」

「はい、おやすみなさい」

軽く口付けを交わしてはホテルに向かう。

振り返ると一樹がまだこちらを見ているので手を振ると彼もまた手を振った。

の姿が見えなくなるまで見送った一樹は溜息をつき、アパートへと戻っていった。









桜風
14.4.4


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