Diamond ring 56





 泊まりのため荷物を置き、少し休憩を入れる。元々法要をお願いしていた時間にはまだ早い。

晴秋は早々に仮眠に入った。

「春姉ちゃんとおじさんは特に久しぶりだね」

が言うと

ちゃんに会えなくて寂しかったわー」

「大きくなったね」

と琥春と幸之助がそれぞれ言った。

『大きくなった』と言われてはご満悦だったが

「以前とそんなにサイズは変わりませんよ」

と郁が言い、

ちゃん、現実はきちんと受け止めた方がいいよ」

と小鳥遊に言われた。

いじめっ子が増えた...

はしょんぼりとし、夏凛からのお仕置きは郁だけに行われた。


昼食を摂って車二台に分かれて寺に向かい、法要を行う。

住職は夏凛が彼氏を連れてきたことに腰を抜かす勢いの驚いた振りをした。

ちゃんがもう二十歳か...」

感慨深そうに彼が呟く。

「けど、こんなに小さいままなんだね」

「小さくないです!!」

ムキになって返すからみんながからかうのだが、本人はそれを気にしているので分かっていてもやっぱりムキになってしまう。

「お姉ちゃん、わたし歩いて帰りたい」

駐車場でが言った。住職だって暇じゃない。少し話をしてすぐに解散となったのだ。

「いいわよ。じゃあ、あたしもそうしようかな」

夏凛が言い、小鳥遊もそれに付き合うと言い出した。

結局、星月夫妻と琥春が車で帰って残りは徒歩を選んだ。

「郁ちゃん、大丈夫?あと、琥太にぃも」

運動不足であろう代表者2人に言うと

「ちっこいが歩いて帰るって言うんだから僕だって可能でしょう」

と郁が返し

「たまには運動した方がいいだろうからな」

と琥太郎が言う。

「一樹さん、大丈夫ですか?自転車で30分の距離だから..1時間くらい歩くかもしれませんよ?」

「構わない。というか、あっちで一緒に帰ったら気を遣って疲れそうだからな」

と一樹は苦笑した。

初夏がすぐそこまでやってきているが、今の時期はまだ汗ばむほどではない。歩くのに丁度言い気候だ。

「夕飯何かな、お手伝いしなきゃ」

が呟くとすぐ後ろを歩いていた琥太郎が苦笑した。

「今日はの誕生日会だって母さん張り切ってたぞ。台所には入れてもらえないだろうな」

「誕生日..会?」

琥太郎を振り返って首を傾げる。

「だって、今日はの誕生日でしょう?」

郁が言う。

「うん」

不思議そうにしているを一樹は不思議に思った。

「まあ、うちにいたときはそんなことしなかったからな」

「そうなんですか?」

一樹が思わず口を挟む。

琥太郎は苦笑を返しただけだった。


誕生日といえばケーキだ。だってそう思っていたから両親にねだったのだ。そして、それが原因で二度と両親と言葉を交わすことが出来なくなった。

にとって、誕生日ケーキはトラウマだ。

だから、誕生日をお祝いするということを改まってしていなかったのだ。ただ、誕生日には必ずが好きなおかずでご馳走だった。

琥雪の心遣いはに伝わっており、感謝している。

結局両親が亡くなってから、誕生日ケーキが復活するまで約10年。星月学園に入学するまで食べていなかった。

夏凛と晴秋も、が星月を出たから誕生日ケーキを持って突入するという奇行に走れた。琥雪が気遣ってくれているのを知っているから、星月家では出来なかったのだ。

そして、この夏凛と晴秋の突進や、一樹の存在などのお陰で琥雪も今回心置きなく誕生日会と銘打ってお祝いすることを決めたのだ。

は嬉しそうに頬を緩めて俯く。

「おー、郁。ここの小川覚えてるかー」

てくてく歩いているあぜ道から小川が見えた。

「ちょ!」

「ああ、あたしたちは気をつけるように言ったのに、言うこと聞かなくてザリガニに指を挟まれてピーピー泣いたアレね」

と夏凛が頷く。

「郁ちゃんが?」

が凄く楽しそうに笑った。

「ちょ!2人とも!!」

慌てる郁に琥太郎が笑う。

「琥太にぃ!!」

慌てる郁が可笑しくてが笑う。

良く分からないけど、と小鳥遊が笑い、一樹も笑いを堪えられなかった。

皆が笑い、結局郁も笑った。

凄い、とは驚く。

自分の誕生日にみんなが笑っている。

晴秋と目があった。彼は目を細めて微笑む。

「さ、走るわよ」

突然夏凛が言う。

「はあ?!」

と抗議の声を上げたのは、琥太郎と郁。

「下位2人はパシリね」

「ちょ!夏姉?!」

「はい、よーいドン」

そう言って夏凛がスタートを口にする。

朝、アレだけ体がきつそうだった晴秋は軽々と地を蹴り、ドンドン小さくなっていく。それを見た夏凛は「生意気!」と加速した。

「ま、のんびり」と言いつつ意外と速いのが小鳥遊で、は一樹にあわせている。

、まだ走れるのか?」

「はい」と頷くに一樹はちょっと驚いた。

「小さい体で...」

思わず呟いた一樹に「小さくないです!」と返してはスピードを上げる。

振り返ると、既に諦めたらしい琥太郎と郁がのんびり歩いている。

気を抜くとゴール寸前で抜かされそうなので一樹は走ることにした。

とりあえず、に追いついて、機嫌を直してもらおう。









桜風
14.7.4


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