Diamond ring 60





 朝食を済ませて改めての誕生日を祝うためにケーキを食べた。

琥雪の手作りで、生クリームたっぷりに果物がふんだんに乗っている。

そして、が抱いていた疑問はこの後すぐに解消した。

夏凛が小鳥遊との結婚の話を出したのだ。

気になって一樹はを見ると、彼女はしょんぼりしていた。

何だかんだで夏凛の事が大好きなのだ。

「おめでとう」

と琥雪が言う。

「ありがとうございます」

と夏凛が少しだけ照れた様子で礼を口にした。

「次は、晴秋君かしらね」

「いや、オレは...」

琥雪の言葉に晴秋が苦笑して返す。

「ウチの2人も郁君もそんな雰囲気ないし。ちゃんはまだ学生だからね」

にこりと琥雪が笑う。

はどう返して言いか分からず半端に頷いた。

「けど、アキはねぇ...」

と夏凛が苦笑いする。

「僕、日本人でどれだけの人間が普通に生活している中でウィンクを飛ばせるんだろうって不思議に思ってるんだー」

小鳥遊が言と

「ちょ!」

と晴秋が慌てた。

「普通、ないでしょう」

と夏凛。

「...どういうこと?」

「郁のこと笑ってるアキを見てあたしは笑ってた」

「郁ちゃん...?」

が首を傾げる。

ちゃんのお兄ちゃんは、物凄くタラシだよー」

「ちょ!小鳥遊さん!!」

これ以上余計なことを言われてはならないと慌てた晴秋が絞め技を掛け始め、夏凛に蹴っ飛ばされた。

「え、えーと?」

良く分からないので一樹を見上げる。彼は何か分かったのだろうか、と。

一樹は苦笑していた。

つまり、妹を溺愛している晴秋は、職場では凄く有名なプレイボーイと言うことなのだろう。

まあ、もてるだろうな、と思っていたけど...

「小鳥遊さんってアキにぃより年上なんですか?」

「ひとつだけね」

「...よく夏姉の手綱握れますね」

酷く感心したように郁が言う。

「握った覚えはないけどね」

小鳥遊が笑ってそう返した。


「お式はどうするの?するんだったら早めに予約とかしておかなきゃいけないでしょう?」

琥雪が問う。

気が早いんじゃないか、と少し落ち着かない様子の幸之助が言うが、

「式は挙げようと思ってます。何事も経験かなって。日取りは仏滅希望なんですけどね」

と夏凛が返した。

安いから、と彼女は笑う。

大安に式を挙げたからと言って別れないとも限らないし、と何とも彼女らしいことを口にした。

まだ色々と決めなくてはならないことがあるのでそれも含めて相談させてもらいたいし、連絡もしたいと夏凛が言うと琥雪は快諾した。

幸之助の口数が少なくなったことが気になって琥太郎に「おじさん、どうしたの?」と聞いてみると琥太郎は苦笑する。

「あの人にとっては、夏姉もアキも自分の子供なんだよ。勿論、もな。寂しいんだろうな」

「そうなんだ...」

少し照れくさくては笑った。

「特にはずっとうちにいたからな。のときの方がもっと大変だ」

とこれは一樹に向かって言う。

琥太郎の表情は非常に愉快そうだ。

言われてみれば、初めて琥太郎の実家に行ったとき、幸之助に会って、かなり敵意を向けられたことを思い出す。

がらみで敵意を向けられることに慣れていた一樹は特に気にしなかったが、そういうことだったんだな、と納得した。



ドサッと鞄を床に置く。

あの後、夏凛の案内の元に、家の中を探検した。

家の中の傷は大抵夏凛がその原因を知っていた。懐かしそうにその傷を撫でる彼女の表情にはやはり少しだけ寂しげなものがあり、小鳥遊が慰めるように彼女の傍に居た。

「一樹さん、ご飯どうします?」

明日は学校なので、今日は家に帰らなくてはならない。

帰宅して食べるか、と食べるか...

「なあ、。その前にちょっと話があるんだ」

一樹が言う。

キッチンでコーヒーを淹れる準備をしていたは手を止めて一樹の前に座る。

「何ですか?」

「次の夏休みと春休み、海外に行こうと思っている」

不意に切り出されては首を傾げた。

夏休みと春休みに限定していると言うことは、留学ではない。

「旅行ですか?」

「旅行と言うか、放浪かな?バックパックで、それこそ自分の力でってやつだ。危ないし、正直金を掛けられるものじゃないからは誘えないけど、俺は休みいっぱい使って行きたいって思ってる。来年になったらもう4年で、勉強でそれどころじゃなくなるし今回しかチャンスがないんだ」

真摯な眼差しで一樹が言う。

「...ちゃんと帰ってきてくださいね」

は笑った。

一樹は頷いてそしてを抱き寄せてキスをした。

突然では目を丸くして一樹を見上げる。

「ずっと一緒に居たのに手が出せなかったからな。大人になったとの初めてのキスだ」

そんなことを言われては俯いた。

耳が赤い。

はホント、可愛いなー」

「からかわないでください!」

「からかってない、本心だ」

と真顔で一樹が言い、はぐっと言葉に詰まった。

「一樹さんの意地悪...」

「何だぁ?」

にやっと笑ってに再びキスをした。









桜風
14.8.1


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