Diamond ring 65





 時間の許す限り文化祭の催しに顔を出した。

そして、生徒会の放送により、スターロードが点灯されたと知る。

「行こうぜ」と一樹が手を差し出したが、は苦笑した。

「今は、一応『先生』です」

「...が教師で俺が生徒ってのなら問題かもしれないけど、俺は卒業生で大学生。は教育実習生で、俺の恋人だ。何も後ろめたいことはないだろう?」

そう言って強引にの手をとって歩き出す。

は諦めたように一樹の隣を歩き出した。


「やっぱ、毎年デザイン変えてるんだな」

「今更伝統は変えられませんよ。不都合がないんですから」

煌びやかな光を放つスターロードの飾りを見上げながら一樹がいい、も返す。

「何より、美術部の出展のひとつになってるみたいです」

「へっ?!」

いつからだ?と一樹が問うが、「去年かその前ですね」とが答える。

生徒会主催のスターロードだったのに、いつの間にか共同展示ではなく、美術部の...

「何か、ちょっと腑に落ちないな」

「お兄ちゃんも似たようなことを言ってました」

「ペテンの始まりだもんな」

笑いながら一樹が言う。

暫く無言でゆっくりと歩いた。

は現在の学園で数少ない女性で、生徒達はただそれだけで憧れを抱いており、その憧れの対象が男と手を繋いで歩けばとりあえず信じたくないと考える者もおり、たちとすれ違うと思わず振り返っていた。

心が狭いだとか言われても構わない。

一樹はそれが目的でと手を繋いで歩いているのだし、そもそも、文化祭に顔を出した大きな目的のひとつなのだ。

「なあ、

「はい?」

「俺が海外を放浪していたとき..お前もこんな気持ちだったのかなって最近やっと思うようになったんだ」

「『こんな気持ち』ですか?」

「何ていうか..落ち着かないっていうか。正直なところ、面白くないって言うか」

ちょっと自棄になって一樹が言う。

「『面白くない』ですか?」

「ああ」と憮然と頷く。

「えーと、それは。男子校然のこの学校にわたしが居るからですか?」

「絶対にちょっかい出されてるだろう」

開き直ったようだ。

「...みたいですね。水嶋先生がなんどか助け舟を出してくれています」

一樹は郁に心から感謝した。しかし、郁としても、本人に全く伝わっていないようだが妹みたいに可愛がっているにちょっかいを出されているのが面白くなくて助け舟を出しているだけで、一樹のためではない。

「でも、そうだな」

そう言っては足を止め、一樹も足を止める。

「一樹さんは色んなことを自分の目で見て、たくさんの人を助けたいっていう目的があって海外を放浪したわけですし。それは、わたしも素敵なことだと思っています。それに」

一度言葉を区切ってにこりと笑った。

「一樹さんはわたしを幸せにしてくれるって話なので」

と言って足早に歩き出す。

言ったは良いが、物凄く恥ずかしくなってしまった。

暫くスタスタ歩いていたが、一樹からの反応がなくて不思議に思い、振り返ると一樹が膝をついてうな垂れている。

「一樹さん?!」

調子でも悪いのかと慌ててが駆け寄る。

「大丈夫ですか?保健室に行きますか??」

膝をついて一樹の顔を覗きこむ

「なあ、キスしていいか?」

と一樹が問う。

「だめです」

心配した表情のまま返された。

「ったく...」

「どうしたんですか?」

ガシガシと頭を掻いて一樹は恨めしげにを見た。

「あんま外で可愛い事を言うなよ。襲いたくても襲えないじゃないか」

「え?!」

頓狂な声を上げるに苦笑して一樹は立ち上がる。

「ほら、行こうぜ」

手を差し伸べられたは、今度は迷わずその手を取った。









桜風
14.9.5


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