| 修学旅行は懐かしい風景を目にした。 けれども、当然ながら当時自分が見た風景とは別物で、似たようなものだが同じに思えない。 そういえば、自分の修学旅行のときは颯斗と殆ど一緒に行動していたな、と思い出す。 「ちゃん」 生徒に名を呼ばれて振り返る。 今日は自由行動の日だ。 「ここいらで何か名所になっているところない?」 言われて思い出したのは、あのコスモス畑。 話すと 「ヤローだけで行って楽しいかな?」 と真顔で返された。 「そこはわたしは分かんないわよ。それだって、陽日先生のいうところの『青春』かもしれないし?」 「行ってみる?」 目の前の相談は前向きな方向に話が進み、どうせ思い出を作るなら、と行くことにしたらしい。 教師は見回りをしなくてはならない。 土産店が軒を連ねている通りでふと足を止めた。 「あ、」と背後から声がした。 振り返ると月子だ。 「やっぱり」とが苦笑する。 「懐かしくなっちゃうよね」 この店は、当時ホテルの従業員に勧められて訪ねた店だ。 「颯斗君がいたら再現だったね」 月子がそう言って店の中に足を踏み入れる。 もそれに続いた。 民芸品が売られているコーナーで足を止めた。 「可愛い...」 思わず手を伸ばしたのはトンボ玉の飾りだ。 鞄とかにつけたら良いのかな、と思いながら色んなデザイン、模様を眺める。 手作り品なので、全てが一点物だと説明された。 眺めていて、目に止まったデザインがあった。模様を見るとこれまた心惹かれる。 ふと思いついた。色違いのお揃いで2つ購入する。 食べ物のお土産は、迷うことなく選んだ。そして、その場で発送手続きを取った。 まだ売っていて良かった... 学校から家に帰ると部屋に宅配便が置いてあった。 差出人はから。 修学旅行先からの土産物だと思い至り、宅配便の袋から中身を取り出す。 「おー、懐かしいな」 包装紙を見て苦笑を漏らした一樹はそのまま包装を剥いで中身を口にする。 一瞬だけ、あの生徒会室を思い出す。 宅配便の袋をひっくり返すとコロリと何かが落ちてきた。 トンボ玉の飾りだ。 「何だ?」 こんな可愛らしいものを自分に、というのはどういうことだろう。 その日の晩、お礼も兼ねて電話をしてみた。 疲れて早寝をしているかな、と思ったがそうでもなかったようだ。 『待ってました』 と彼女が笑う。 「何だ、俺が恋しかったか」 一樹がからかうと電話の向こうのはクスクスと笑っている。 「?」 『いいえ。はい、恋しかったです』 『いいえ』なのか『はい』なのか分からない返事だ。 「菓子は、ありがたく勉強の夜食にさせてもらうつもりだけど、トンボ玉は?俺には可愛い代物だぞ?」 最も聞きたかったことを口にする。 『色違いのお揃いで買いました。わたしも同じの持ってます。って言っても、全部手作りなので全く同じものはないみたいなんですけどね』 そうなのか、と一樹は感心したが、結局何故色違いのお揃いを送られてきたのかがわからない。 『何だか、流れ星みたいな模様に見えたので』 が言う。 言われて改めて見ると、確かにその通りだ。 それを伝えるとは嬉しそうに『でしょう?』と返す。 まあ、自分には可愛らしいものだがが自分を想って送ってくれたものなのだ。大切にしよう。 『ねえ、一樹さん』 「なんだ?」 『あっという間に、実習が終わっちゃいます』 が複雑そうな声音で言う。 「どうだった?」 『楽しかったです。けど、大変でしたし』 そこで言葉を区切る。 「大変だったし?」 一樹が鸚鵡返しに問う。 『一樹さんが遠かったです』 「ばか。不意打ちだぞ、それ」 一樹が慌ててそう返すと 『たまには良いじゃないですか』 とが笑った。 「覚悟してろよ」 一樹が言うとがクスクスと笑って『はーい』と返事をした。 |
桜風
14.9.19
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