Diamond ring 68





 3ヶ月にわたる教育実習が終わった。

担当生徒達から花束を贈られる。何だか、感無量といった感じだ。

職員室に戻ると、月子は泣いていた。

あ、あれ...?

感無量であるが、泣いてはいない。

、相変わらず」

郁が苦笑している。

は、別れに対してそれなりに耐性がある。今生の別れを経験しているので、何かのきっかけがあったら再会できそうな別れに対してはそんなにウェットになれない。

とりあえず、本日中に撤収しなくてはならないので職員室での挨拶もそこそこに寮に戻った。

荷物は元々コンパクトに済ませていたが、それなりに増えた。実習の教材にしたものとか、実習中に購入した書籍が加わったのだ。そして、今日貰った花束と色紙。

「うーん、宅配か...」

コンコンと部屋のドアがノックされた。

「はい」

開けてみると月子が立っている。

「荷物、増えたよね...」

「うん、だから錫也が迎えに来てくれたの。車で」

さすが...

はとりあえず、思った言葉は口にせず、「そっか」と相槌を打つにとどまった。

ちゃんも一緒に帰る?」

「あー、いいよ。宅配しようと思ってたし。家の方向、全然違うし」

「別に良いよ、さん」

ひょいと顔を覗かせて東月が言う。

「あ、久しぶり」

「うん、久しぶり。話は戻して、さっきの。ついでだし」

一瞬その言葉に甘えようかと思ったが、

「ダメだ」

と声が割って入る。

は目を丸くした。

ここにいる誰よりも驚いているのだ。

「え、何で...」

呆然と呟くに、今登場した一樹が苦笑している。

「一人で何とかしようと考えるだろうと思ったからだよ」

一樹の存在を目にした月子と東月は「じゃあ、また大学でね」「またね」とそれぞれに声をかけて帰り支度を進め始めた。

「荷物は..増えたなぁ」

部屋の中に入って一樹が言う。

「一樹さん、学校は?」

「その言葉は、東月にも言え」

と苦笑しながら一樹が言う。

言われてみればそうだ...

「星月先生たちにも、一応挨拶してくるか。ちょっと待ってろよ」

そう言って一樹はの部屋を出て行く。


とりあえず、荷造りのすべて終えていたは一樹の戻りを待った。

「あれ、。まだ帰ってなかったの?月子ちゃんは東月くんが迎えに来たみたいだけど。除け者?」

「あ、郁ちゃん」

ぼけーっと部屋の中で膝を抱えて座っていると郁が顔を覗かせてきた。

「送ってあげようか?学校の公用車借りて」

「ううん、大丈夫」

「俺が連れて帰りますから」

が断った言葉を引き継いで一樹が言う。

「なぁんだ...」

肩を竦めて郁が言う。

「そうだ、不知火君。がこの学校で3ヶ月も生活してて何か思うところは?」

「郁ちゃん...」

が呆れた声で窘める。

「ははっ。全く面白くなかったですよ。なので、これから当分独占させていただきます」

高らかに一樹が宣言する。

郁は一瞬面食らったのか、言葉を失ったがやがて苦笑を漏らす。

「ごちそうさま」

「いえいえ」

郁の言葉に一樹がしれっと返す。

「じゃ、。またね」

そう言って郁はその場を去っていく。

「よし、じゃあ帰るか」

の荷物全てを持って一樹が言う。

「あの、自分で持てますよ」

「良いから持たせろって。言ったろう?ちゃんとも甘やかしてやるって。勿論、帰ってからは俺は存分に甘やかせてもらう」

「そんなことを言いながら甘えないくせに」

が呟く。

「俺が甘やかすことをが甘んじて受けることが即ち、俺を甘やかせることに繋がるんだ」

と一樹が言う。

「何だか、ややこしいですね」

が零すと

「何を言ってんだよ。単純だろう?俺の、を甘やかしたいという我侭に付き合ってくれれば良いんだ」

と胸を張って一樹がいい、

「了解しました」

は諦めたように苦笑を漏らして頷いた。









桜風
14.9.26


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