| 3ヶ月ぶりに帰宅したは「あれ?」と呟く。食事は外で済ませて帰ってきた。 「ああ、時々空気の入替えには来てたんだ。まあ、琥雪さんもよく来られてたみたいだぞ」 一樹が言う。 空気がもっと埃っぽいと思っていたのに、そんなことが全くなかったのだ。 「一樹さん、来てくださってたんですか?」 「まあな。やっぱ、空気の入替えは要るかなって」 そして、この家で琥雪にばったり顔を合わせたのだが、そのときの居た堪れなさと言ったら... 「一樹さん。コーヒー、飲みます?」 ベッドに腰掛けた一樹に向かってが言う。 とりあえず、洗濯物を洗濯機に突っ込んできた。 それ以外の荷解きは、今度の休みにまとめてしよう。 「いや、いい。それより」 そう言って一樹は両手を広げた。 は一瞬躊躇ったが、それでもやっぱり嬉しくてその胸に飛び込む。 そんなに勢いよく来るとは思っていなかった一樹は、そのまま大人しくに押し倒された。 「大胆だなぁ」 苦笑しながら一樹が呟く。 それに慌てて体を起こそうとしただったが、それは一樹の腕に阻まれた。 「一樹さん、あの...」 慌てるに一樹は笑い、 「うーん、やっぱり押し倒されるよりも押し倒す方がしっくり来るな」 体を反転させた。 は突然変わった風景に少し混乱し、一樹の言葉の通り押し倒されていることを理解した。 「一樹さん!」 一樹の胸を押して抗議する。 しかし、その抗議は一樹に唇を塞がれてあっけなく失敗した。 久方ぶりに合わせて唇は暫く離れることはなく、ようやく離れたときには、互いの名残惜しさを表わすように2人の唇の間に銀糸が延びる。 一樹はそのままの首に顔を埋めて柔らかな肌を強く吸った。 「ん...ッ」 の漏らした声に、うっかり情を煽られたが何とかそれは押し留める。 さすがに明日は学校があるし、今日は実習から帰ってきたばかりだ。 に覆い被さっていた体をゴロリと転がして彼女の隣に仰向けで寝転ぶ。 「一樹さん?」 不思議そうにが声を漏らす。 「楽しみはじっくり時間を掛けて、だ」 にやっと笑った一樹には首を傾げる。 「明日は学校あるし、今日は実習から帰ってきたばかりだろう?とりあえず、体を休めないとな。そのご期待には、週末に応えさせてもらうぞ」 一樹の言葉には顔を真っ赤にした。 確かに、期待していた。 露骨に期待をしてしまった自分を恥じて一樹に背を向けた。 「おーい、。こっち向けよ」 ちょっとからかいすぎたか、と反省しながら一樹が少し情けない声を出す。 「ダメです」 「いや、ダメじゃないから。な?」 しかし、は微動だにしない。 一樹は仕方ないと溜息を吐き、 「なあ、。机の上、見てみろよ」 と言う。 「机の上?」 は体を起こして学習机を見た。 何か、封筒が置いてある。 ベッドから降りてそれを手にすると、『不知火一樹様』と書かれているもので、何故そんなものが自分の机の上にあるのだろうかと首を傾げた。 しかし、何処から差し出されたものかが分かっては振り返る。 「中、見てみろよ」 ベッドにゴロリと寝転び、頭は肘をついた右手で支えて右側部を下にした一樹は、自信たっぷりの笑みを浮かべた。 中に入っている紙を取り出す。 震える手でゆっくりと広げて、一言一句漏らさず読む。 間違いない。 「凄い、一樹さん!」 「そりゃ、最短ルート狙ってるんだ。ここで足踏みなんて出来ないだろう?」 「司法試験って、いつですか?」 「来年5月」 「あと半年じゃないですか!」 驚きの声を上げるに「そうだなー」と一樹はのんびり頷いた。 「ちなみに、その司法試験で合格した後は、司法修習生になって1年間修業を積んで、その先でやっとだ」 まだあと2年は独り立ちできない。 「長いよなー」 ごろんと仰向けになって呟いた。 まだ夏凛に胸を張って一人前だといえない。 「そういや、夏凛さんって。俺の今の歳の時には自分の力で稼いでたんだよな...」 ポツリと呟く。 ああ、もう。ホントに遠い人だ。 「一樹さん」 ベッドの傍で膝をついたが声をかける。 「んー?」 に顔を向けると唇を塞がれた。 勿論、それはすぐに離れる。 驚いた一樹が目を丸くしていると目の前のは「お、お祝いです」と真っ赤になって言う。 「...俄然やる気が出てきた」 ムクリと体を起こした一樹が力強く言う。 「一樹さん?」 「司法試験合格後もそのお祝いをくれよ。今度はもっと難しいから、もっと長いキスしてくれるよな」 「ええ??!!」 が頓狂な声を上げるが、一樹の耳には届いていない。届いていても、拾わない。 あたふたしているを横目で眺めてクスリと笑う。 絶対に最短ルートだ...! 再びそのことを心に誓った一樹だった。 |
桜風
14.10.3
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