| 待ち合わせ場所に向かいながら一樹は「うーん」と唸っていた。 こそ、最短コースを歩いている。 今日は、の就職祝いを兼ねて、外でご飯を食べようと言う話になった。 勿論、夏凛と晴秋も来るらしい。 彼女は夏頃に受けた中学校の国語科教員採用試験に合格したのだ。晴れて地方公務員。 星月学園への就職を目指しているのかと思っていた一樹は、最初話を聞いたときには驚いた。 ちなみに、公立を目指したのは転勤があるからだとか。 転勤がない方が楽だろうと思ったが、色んな環境のいろんな人と出会ってみたいと彼女は話し、それを聞くとなるほどなと納得した。 それにしても、これまた狭き門を潜ったなと感心するやら、焦るやらである。 一方、一樹も司法試験に合格し、この冬から司法修習生として最後の難関に立ち向かう予定だ。 まあ、最後の、と言いつつもそこからがスタートなのだが... 「便秘か?」 突然背後からからかうような声をかけられて一樹は慌てて振り返った。 にやりと笑う晴秋が立っている。 「驚かさないでください」 「お前が勝手に驚いたんだろう?」 ははは、と笑って晴秋が言う。 「何か、その理屈って夏凛さんが言いそうです」 「よく言われてるから、移ったか?」 おどけて彼が言った。 「で?悩める青年。面白そうだから話してみろ」 「『面白そうだから』って何ですか」 むくれる一樹に晴秋は笑う。 「で?」 「いや、は本当に最短ルートだなって。俺はまだ、もう少し掛かるのに」 「なるほど、最短ルートな。良いじゃないか、バランスも取れて。第一、歩もうとしている道が違うのに、全く同じ長さになるはずないだろう」 「他人事ですね」 「バカだなー。のことを『他人事』ってオレが思うと思うか?」 「今は、少し」 「当たりだ」 思ったことを口にして、それを肯定された。 一樹は驚き、思わず足を止める。 「兄バカが徐々に妹離れを試みてるんだ。ソンケーしろ」 困ったように笑いながらいう晴秋に、一樹は反応に困った。 「ま、夏姉は全くそれを試みるつもりがないらしいからな。ガンバレ」 適当な励ましに「ありがとうございます」と返した一樹は、やっぱり最大の敵は最大の敵のままだと諦めた。 待ち合わせ場所に着くと、やはり少し時間が早かったのかまだ他の待ち人がいなかった。 「というか、今日は誰が来る予定なんですか?」 「夏姉夫婦だろ?琥太と、春姉。琥雪さんは今ちょっと幸之助さんの仕事の手伝いで一緒に海外に行ってるから来れないって話だな。あと、『気が向いたらねー』って言ってた郁の気が向くはずだから、オレら含めての8人か」 「一昨年のの誕生日のメンバーみたいなものですね」 「ま、身内って言ったらそうなるから仕方ないな」 そう言って晴秋が笑う。 「そういや、春の..日蝕見れたのか?」 「あ、はい。金環日蝕でした。晴秋さんは、見てないんですか?」 「ちょっと外にいたからなー。姉ちゃんも金環見れたって自慢してくるし」 悔しそうに言う晴秋に一樹は小さく笑った。 「晴秋さんも、何だかんだで天文バカなんですね」 「バカとは失礼だな。まあ、否定できないけどなー。あの学校に3年間通えば、立派な天文バカが出来上がるに決まってるだろう?」 肩を竦めて彼が言う。 確かに、と一樹は笑った。 「一樹」と隣に立つ晴秋が真剣な声を出す。 「はい」 何だろうと構えて返事をすると 「オレは逃げる。後は任せた」 そう言って晴秋は言葉の通りすたこらとその場を去っていった。 残された一樹は、彼が何から逃げたのかそのすぐ後に知ることになる。 は走っていた。 うっかり掃除を始めてしまい、夢中になって片づけをしていたら家を出る時刻が遅くなった。 待ち合わせの時には早く着いて探してもらうのが常だった。 基本、自分が待ち合わせる相手は背が高めなので見つけてもらうほうが効率が良い。 今日の待ち合わせも、背高ノッポだらけだから時間ギリギリでも見つけてもらえるとは思うが、早く行って待っていなくて自分が気持ち悪い。 「!」 腕をつかまれた。 待ち合わせ場所まであと100mと言ったところの雑踏だった。 「お姉ちゃん」 「久しぶりー。相変わらず可愛いねー」 「サイズ的にね」 夏凛がをギュッと抱きしめて言うとその隣にいる小鳥遊が茶々を入れる。 「普通サイズです」 「それは知らなかった。で、身長はいくつ?」 そう問われてはグッと詰まる。 「ところで、お姉ちゃん。何でここにいるの?待ち合わせ場所ってもうちょっと先じゃなかった?」 「面白そうだから」 にんまりと笑う。 彼女の視線を辿った先の光景に、の胸はギュッとなる。 見る見るうちに不機嫌な表情に変わるの顔を見て夏凛は寂しそうに笑った。 「ちょっと行ってくる!」 「殴り飛ばしちゃダメだよー。ちゃんは空手の黒帯なんだってねー」 ズンズンと一樹に向かって行くの背に向かって小鳥遊が声をかけた。 「ねえ、夏凛ちゃん」 「なによ!」 「ちゃんの反応が分かってるんだから、こうなる前に夏凛ちゃんが助けてあげても良かったんじゃないのかな、一樹君」 一樹は今ナンパされていた。 凄く面倒くさそうにしている彼は適当なことを言ってはぐらかしているのだとは思う。 だが、待ち合わせ場所がそこである以上、離れられないので相手をするしかない。 がここに来る2〜3分前にやってきていた夏凛は目聡く一樹を見つけたのだ。 「こうでも、しなきゃ妹離れできそうにないんだもん」 ポツリと呟く夏凛に小鳥遊は苦笑する。 「夏凛ちゃんは不器用で、可愛いね」 「うるさい!」 よしよしとかなり不器用な妻の頭を撫でながら小鳥遊は苦笑を漏らした。 本当に可愛いなぁ... |
桜風
14.10.31
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