| 朝目を覚ますと隣に寝ているはずの一樹の姿がなく、は慌てて体を起こした。 「今日出勤だっけ?!」 一樹はたまに休日にも出勤する。 そういう時は、必ずカレンダーに印をつけるし、に言うので、彼女は覚えている。 朝食を作って「いってらっしゃい」と見送るのだ。 だが、休日は一樹が起きるのが遅く、それに合わせても朝はゆっくり過ごす。 それでも、一樹よりも早く起きて彼が起きたら朝食または昼食を摂れるように準備をする。 つまり、起床はいつもの方が先なのだ。 それなのに、隣で寝ているはずの一樹がいない現状、彼の出勤をすっかり忘れてしまって寝過ごしたとしか思えない。 着替えず慌ててリビングに顔を出すと「おー、おはよう」と一樹が挨拶をしてきた。 「お、はよう..ございます?」 首を傾げていうに一樹は苦笑した。 「どうした、。狐に抓まれたような貌をしてるぞ」 「一樹さん、何で寝てないんですか?」 「ん?寝てたぞ?」 「いつも、わたしよりもゆっくり寝てるのに」 「ああ、そういうことか」 納得した一樹はひとつ頷いた。 「どうも、今日は“いい夫婦の日”らしいからな。いつも家事をしていただいている奥様にゆっくりしていただこうという、そういうことでございます」 片膝をついて首を垂れる一樹にはぷっと噴出す。 彼は時々こうして芝居がかったことをする。 「ほら、。着替えてこい」 「はーい」 促され、安心したは返事をして回れ右をした。 朝の身支度を整えたは再びリビングに戻って来る。 「一樹さん、眠くないですか?」 「うん、眠い」 いつもよりも睡眠時間が短い。 大抵夜中まで仕事に関係する書籍を読んでいる一樹は、普段から睡眠時間が短く、だから休日はしっかり寝るのだと言っていた。 「じゃあ、今日はお昼寝しっかりですね」 そう言いながらは席に着く。 「んー、今日は起きておくつもりだけどな」 一樹の言葉には首を傾げた。 「大丈夫ですか?」 「大丈夫だよ」 の疑問に一樹は笑顔で応じる。 そして、朝食を摂りながら一樹は今日の計画を口にした。 久々に星空が見たいと思ったらしい。だが、この近所では中々見ることができない。 だから、仕方なく人工の星、プラネタリウムを見に行こうと思ったらしい。 その計画には大賛成だった。 「そういえば、そろそろ冬のプログラムですかね」 「そうだな。もう冬の星座のプログラムになってるかもな」 の言葉に一樹は頷く。 大抵、と出かけるとき、時間があればプラネタリウムに行くことにしている。 というか、そういう流れになる。 プラネタリウム施設はさほど多くないが、少しずつプログラムが変わっているので、同じ季節にっても前年と全く同じものとはならない。 「楽しみです」 満面の笑みを浮かべたにつられて一樹も笑顔になる。 身支度を整えて家を出る。 「夕飯も俺が作るからな」 そう言ってにっと笑った一樹には苦笑した。 「いいですよ。わたしが作ります」 「いいや。俺が作るって決めたんだ。俺が作る」 頑として譲らない一樹には困ったなと思いつつ「では、一緒に」と提案をした。 「一樹さん、疲れて明日動けないって言われる方が嫌です」 の指摘に一樹はうっと詰まる。 「ね?だから、一緒に作りましょう。いい夫婦の日なんでしょ?夫婦ってのは夫と妻の2人の事です。どちらかが頑張って疲れるんじゃダメですよ。だから、2人で夕飯作りましょう」 「はい」 一生懸命考えたプランではあるが、彼女の指摘通りだとも思った。 今日はせっかくだから、と少し足を伸ばして大きな施設のプラネタリウムに向かった。 たちの推測どおりに、冬の星座のプログラムだと書いてある。 「あ、神話がメインですねぇ。まあ、この冬は天体ショーないみたいですからね」 パンフレットを見ながらが言う。 金環日食や皆既月食などあればそれをテーマに持ってくることもあるだろうが、この冬はそんな目玉はない。 「そうなのか?じゃあ、は詰まらないかな?」 「いいえ、好きですから」 そう言って彼女は時計を見て開場時間を確認した。 少し間がある。 「どうする?下にカフェがあったぞ?」 「いいです。待ちます。一樹さんは大丈夫ですか?」 「おう、大丈夫だ」 「すまん」 パシンと手を合わせて一樹が謝った。 プラネタリウムには無事入場できた。 その後、一樹は寝てしまった。 はプログラムを楽しんだので気にしていない。 「大丈夫ですよ」 「だが、隣で寝てしまって...」 猛省している一樹に苦笑して「大丈夫です。わたしは楽しみました」とが言う。 「むしろ、一樹さんは残念でしたね」 「いやー、気持ちよく寝てしまったからなぁ」 バツが悪そうに一樹が笑う。 「また来ましょうね」 が言うと 「ああ、そうだな」 と一樹が頷く。 「ところで、何か買い物して帰りますか?」 「は何かあるのか?」 「冬物が少し欲しいなー、って」 「俺は本屋に行きたいんだ。じゃあ、まずはの買い物から行くか」 の手を取って一樹が歩き出す。 「どんな服がほしいんだー?」 「セーターです」 「そうか。えーと、小さいサイズは」 「小さくありません!」 服を買いに行くと必ずする会話をしながら2人はショッピングモールに向かって行った。 |
桜風
14.11.23
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